平凡な彼女は3分先と未来の可能性を夢見る
私は平凡だ。
魔力値も平民の中で、中の中、容姿は特徴的だけど中と言われ、成績も真ん中。家柄も普通に父親は高級宿屋の従業員で家にほぼいない、母親は何処かに行ってしまっていない。
「捨て子ー」
「あ”?」
時々そういうからかいが来る、いつも通りなので父に習った護身術、軽くアッパーをかけ足払いをしたらそのまま締め上げる。
「ぐ、ぐるじぃい」
「何かいう事ない?」
「ご、ごめんなさい。メスゴリラ」
「・・・」
締め上げたまま、がら空きの脇をくすぐる。
「ひゃはははははははh!!しぬしぬ!!!!!降参!!!!降参!!!」
いつものように、からかわれたら、やり返せる相手のみやり返す。そんな風に過ごしてたら、金持ち貴族のボンボンに絡まれた。最初の原因は忘れた。ただ、そのからかいはこの場所にいた友達全員に対して見下された事だった。
「バカな平民どもが、睨んでも怖くないね。はっ魔力もこんな底辺だなんて信じられないなー。あーこんなレベルの低い教室にいたらバカが移ってしまうよ。」
その時の言葉に皆んな一致団結した。
あの鼻持ちならないボンボンを負かしてやろうと、ただ、普通に喧嘩をふっかけたら平民であるこっちが悪者になる。どうしたら鼻を開かせるか、見返せるか議論を交わした結果。ふと、私の中で閃いたのが、試験だ。
「え・・・」
「頭悪いってバカにされたんだよ?!見返してやろうよ!!試験なら不正なんて平民である私たちは出来ない、金持ちみたいに賄賂なんて渡せないからね!!皆んなで勉強しあって今回の試験であいつよりいい成績を叩き出してやろう!!」
私がそういうと、頭のいい男子が立ち上がった。
「確かに、その方がいちゃもんつけられても、言い返せるな。喧嘩なんてふっかけてもこっちに部が悪い。最悪僕たちが捕まっちゃう。だけど、成績ならこっちの進路評価もあがるし、一石二鳥だ!」
「げーーー俺、勉強苦手なんだぞ!!」
「あいつの前回の試験の順位を調べよう。次に勉強だ。まずは得意科目と不得意科目を各自出して、そして、得意な子が不得意な子に教える。次に、勉強する時間、早朝と学校の終わりに分けるんだ。僕たちは家の手伝いがあるから、朝早く来れる子と学校の後に残れる子で分けて勉強しよう。試験まで2ヶ月あるし!」
「それで行こう!」
「「おーーー!!」」
そうして、私たち平民が集まるクラスで勉強強化月間が始まった。ムカついたから頑張ってテストを受けただけ、貴族のボンクラ坊ちゃんの挑発に乗って、平民である友達たちと一緒に勉強して打ち負かして、こっちから笑ってやろうとしただけ。
それなのに。
だいたい皆んなで頑張った結果。90か95点が限界だった。必ず2問くらい平民では習わない問題が入ってくるからだ。それなのに何故か私だけオール満点。ありえなかった。
返却されたテストの答案も、わからなくってかかなかった空欄が埋まっていた。
「え?」
掲示板に張り出された順位は自分が一番だった。クラスのみんなは大喜び、ボンクラが掲示板の前に現れたときには、僕たちが本気になればこうなんだよ〜せっかく譲ってあげてたのにねーとか要らん事を言った男子のおかげでボンクラと大騒ぎだ。
不正だって喚き、殴りあいになりかけたが、そこに先生が現れた。
「何をしている。減点を受けたいのか!」
「俺は・・・・ちっ」
ボンクラが先生の顔をみて舌打ちをした。そりゃそうだろう、その先生は貴族出身の先生、自分たちのクラスには絶対にこない先生、しかも噂だと貴族の先生達は王立学園からの派遣で来てる非常勤講師だっていう話だ。
何故わざわざ平民がほぼ通ってる学校に来るかというと、優秀な子を王立学園に通わせるため、もしくは何か王立学園で悪さした子は、ランクの低い学校に落として、監視するためらしい。
「アリスくんはいるかな?」
「・・・」
なんと、自分も喚きたい気分だ。まさかとは思ったけど、そのまさかっぽい。あの噂は本当だったんだ。この学校で一番を取るってことは、平民で取るってことは、王立学園への切符をもらう事になるって。
「アリス?」
「アリスがなんで?あ、一位だから?」
「もしかしてあの噂本当だったの?!」
そう皆んながざわめいて私に視線が集中した。
「アリスくん」
先生の視線もこっちに来てしまった。
「はい」
「私について来なさい」
「はい・・・」
そして連れてこられた校長室には、ほかの貴族の先生達もいた。試験の結果がおかしいと思いますって言おうとするたびに言葉は遮られるし、全て聞くまで黙ってなさいって笑顔で言われるし。君の実力だって褒められるし。おかしい、本当におかしい。
先生たちの顔を見ると、もしもいま無理やり言葉を遮って、解答欄がおかしいって言っても、不正解答の場合は学校を退学だ、でもこれは君の実力だ、不正はあり得ないって笑顔で先生達がいうのが見えた。これは先生たちは知ってるみたい。とっても怖い空間なんですけど。そしてやっぱり王立学園への編入のお話でした。しかも、学費は免除、制服も支給、下町の端っこから通うのは大変だから寮住まい、しかも卒業後は成績によっては王宮、もしくは役所への就職が確定。
「よろしいですね」
「・・・はい」
将来の就職先に目がくらみました。だって、生活費だけは定期的に入れてくれる父親とはここ半年会っていない、学校を卒業後の就職は親とか知り合いの推薦状が必須だ。そのことについて父親に聞きたいのに、会えない。ここでこの話を蹴ったら、自分の将来が真っ暗すぎて不安でしょうがないのだ。
平民にとって、”勉強はハードモード、ただし人生安泰”って言われてる王立学園。・・・卒業できればね
この学校みたいにゆるくない。友達と遊んで帰るとか出来ない。まぁ、寮生活になるから家事の心配はないか。教室に戻れば友達に囲まれて、王立学園に行くことが確定した事を伝えれば喜んでくれた。うん。あの不正回答は忘れよう。みんな気づいてないみたいだし。
学園への準備は先生達が全て行ってくれた。父親への通達もだ。父親からは頑張れ、誇りに思うとしか返ってこなかった。もうちょっとあっても良いと思うんですよ。
そして王立学園はすごかった。今まで通ってた学校は元は豪商の家を買い取って学校として使用してて、結構大きい家だと思ってたけど、こっちは城だ。聞いたら、やっぱり昔貴族が住んでいた屋敷を利用してるって返って来た。わーすごい。寮も元々は上級使用人が寝泊まりしていた建物とか、庭も見渡す限り学園の敷地らしいですよ。
平民の編入生はやっぱり目立つらしく、そこそこ注目を浴びたけど、貴族の人たちからはがっつり距離を置かれてます。少ないながらも平民は何人かいて、ひと学年2、3人はいるみたいだった。同じクラスにはいなかったけど、別のクラスに二人平民の女子がいてほっとした。他の学年だと男子もいるらしい。
「はぁ」
そうそう、私にはほんの少しの未来がみえるみたいですよ。過去もちょっとだけ。
それに気づいたのは、つい最近。それまでは、普通だった。なんだろう、想像すればわかるじゃん?的な感じだったんだよ。ほら、久しぶりに会った友達の雰囲気が変わって、あ、彼氏できたな的な程度の内容だったから。
そわそわしてたら、隠し事だなとか、あれ?この二人つながってるとかさ。先生のやりとりでこう言ってもこう言い返されるなーとかさ。試験の山あてとかさ。
でも、はっきり見えたのは、この学園に来てから。鮮明な映像で見えてしまった。それはまるで白昼夢みたいに見えた。
かっこいい男子と女子がぶつかるのを。
そしたら、目の前で可愛い女の子と王子様が本当にぶつかった。
この学園に通う、王太子殿下と。
「小説か!!」
って思わず叫んだのはしょうがない。城下町で流行ってる王道物語にある鉄板ネタなんだもん。
私と住む世界が違う場所はやっぱり凄い。
この学園では、王侯貴族の人たち、金持ちで頭の良い商人と平民って感じ。本当自分が混じって良いものなのか、なによりも勉強が辛い。進むの早い。空いてる時間は予襲復讐に当てないと、本当ついていけない。遊びたい。
そして、貴族の人たちはやっぱり美人が多い。何より王子の取り巻きは全て綺麗どころしかいない。公爵令嬢も子爵令嬢も、騎士も商人の息子もカッコいい人ばかり。
「目の保養」
「だよねー」
仲良くなった同じ平民の子達と、王子様たちを眺めてキャーキャー言うのが唯一の楽しみだ。勉強は辛いけど。
「つらい。宿題の量が辛い。どうして私はここにいるのか」
「明日の授業の予習がまにあわなーい。はうー!前の学校だったら授業余裕だったのにー!!」
「エミーが羨ましい、私はみんなの支えがあっての成績だったのにー・・・おかしい。おかしいよぉー」
「選ばれたんだから、頑張れ。二人とも。アリス、また間違えてる。」
「うげ、どこが違うの?!メリッサ」
「私明日当てられそう」
「いや、寧ろ私が当てられる」
そう、今見えちゃったし。当てられるわ。歴史なんて嫌いだー。どうして回答は見えないのか!!
*
そんな風に半年ほど過ごしていたら、とうとう魔法実技の演習に出れるようになった。これって先生から出された小試験を受けて認めた生徒しか出来ないけど、一年以内に1回以上参加しないと落第なんですよ、だったら普通に受けさせてよ、小試験突破って!本当ありえない。魔力値低い平民舐めんな、討伐実習なんてできるわけないだろう!!生活魔法くらいしか使わんわ!普通!!でも、なんとか攻撃魔法、数種類扱えるように、というか術式を書いて、魔力を支給品の貯蔵用のクリスタルに日々溜め込み出れることになったのですよ。
ですよ。
そして、まさかの迷子。
ありえない。
しかも、平民組分裂だし、誰だよ!勝手な行動とったの!!気づいたら後ろにいたエミーとメリッサがいない!何があった?!森の中一人って結構怖いんだぞ!
「どうしよう!」
戻るべきか、進むべきか。持っていた地図を見れば目的地近くだ。とりあえず目的地に行けば合流できるかもと先に進んでみると、見えてきたのは王子様たち一行、貴族組!!
「あれ?君一人?他の人は?」
すぐに気づいたのは商人の男子だった。
「えっと・・・」
「迷子か」
スバリいって来たのは騎士さまのドルークさまですね。そんなズバリと言わなくても良いと思うんです。
「足手まといだ。」
しかも切り捨てたな!ひどい!騎士なら女性に優しくしろよ!ここは、そうか付いて来いくらい言おうか!?っと思ってたら王子様にため息をつかれてしまった。
「ここに残す方が危ない。一緒に行動した方がいい。君もいいね」
「はい」
「レオがそういうなら。」
「王子に従いますよ」
王子の判断で一緒に行動することになったけど気まずい。だって今の返答、確実に不満はあるけどしょうがないって感じでしたよね。ですよね。しかも名乗りをしてもらえないので、名前呼びは平民である私は厳禁です。これは学園に入った時に厳しく言われた、なんでも貴族のマナーなんだとか、面倒ですね。
まー貴族の人たちの方が魔力は持ってるから、ついていけるのは幸運ですよ。平民で優秀なのって魔力タンク持ちか、勉強が得意かってことだし、私は何故選ばれたのか分からないしね!!
すぐに目的地について、友達に会って実技も終えて帰れると思ったのに。
なのに、この人達といると、見えちゃうんだけど。しかも最悪なやつですね
「あ!!」
「なんだ?」
ギロッと先頭を歩くドルークさまに睨まれてしまった。騎士なら睨むなよ!優しい言葉をかけようか?!
「その・・・何かいる」
うん、その岩場の陰に小鬼がいて飛び出してくるのが見えちゃいました。しかも不意打ちのせいで先頭を歩いてるドルークさまが腕切られちゃうんだよね。めっちゃドルークに睨まれちゃった。だってこのまま進んだら危ないじゃん。先頭担当の人が腕怪我するとか、この後に響くでしょう?!死にたくないし!
「何が」
ドルークさまがこっちに苛立たしげにこっちへ進みかけた時、前を注意深く見はじめていた公爵令息のロマーニさまが叫んだ。
「うわぁ!小鬼だ!!」
そう叫びながらも直ぐに魔術が展開されて退治してくれた。流石貴族様!
「・・・君さ」
王子がこっちを見てるだけじゃなく近づいてくるし。周りを見渡すと、突き刺す視線に変わってる、公爵令嬢なんて怖い顔してません?
「・・・・私ですか?」
「うん。ちょっとおいで」
「え”」
「とって食わないから」
ニコニコ笑顔で手招きされて手を握られた。
「ふむふむ。魔力は普通の平民程度か。・・・何か気づいたら言ってくれるかな。君、勘が良いみたいだし。こういうのは大切だよ」
「え」
「君さ、占術の力あるでしょ」
そう言って歩き出してしまった。しかも王子に手を握られてから見える見える。ちょっと頭が痛くなってくるんですけど! 凶暴な動物が現れたり、変な植物があったり、これから起きるっぽいですけど!
「え?!どう言うことですの、レオ」
「彼女が声をあげたとき、一瞬彼女の魔力がゆらめいたんだ。王宮にいる専属の戦術しと同じ揺らめきだったんだ」
「え」
「でも、この娘、平民ですし専攻は一般教養の術式だけですよ」
「ですです」
公爵令嬢に賛同ですよ。刻々頷いても、王子様の視線が変わらない。。
「魔力が弱いみたいだからね。たぶん魔力不足で見えてないだけだ。それでも自身に降りかかる危険にはある程度見えるだろうね」
「え」
「気づいてなかったんだね。その程度の魔力だと確かに、運がよかったレベルだろうね」
そう言いながら笑顔で笑われてしまった。そして、そう話してる間にも、近づいてくるのが見えてます。もう言うしかないですね、言わないと危険です。
「・・・後ろから牛みたいな、でかいのがくるのが見えてます」
「わお、それは逃げなきゃ」
王子が走り出すと、周りの貴族様たちも駆け出した。私も引っ張られてますけどね。後ろからドシンドシンって音が聞こえ始めて、半信半疑で走ってた周りも結構本気で走り始めました。みんなで駆けていく最中にも見えたものを伝えていくと、やっと外に出れたよ。
そして王子の言葉によって私は再度魔力検査に回されちゃいましたよ。
ちょっとした予知夢的なものは占術っていうらしいですよ。へー知らなかった。王子の言葉通り自分の魔力が弱すぎて使えないだけで、魔力があればかなりの制度をほこってるとか。わーい!それって宝の持ち腐れ!!意味なーい!!泣いて良いですか?
「へー」
王子によって無理やり参加させられている、お高いテーブルとお貴族様とのお茶会で聞かされるって何?。テンション駄々下がりですよ。
「あれ?嬉しくないの?」
「いえ、自分の魔力が少ないですからね。持ってても宝の持ち腐れですよね。」
「確かに、でもこうやって魔力持ちの人と一緒であれば使えるでしょ」
そう言って王子が手を握ってきた。やめて、横にいる公爵令嬢と伯爵令嬢の視線が痛いのですよ。
「・・・私はこの後ご令嬢型に囲われて罵倒されるのが見えました。ありがとうございます」
「あー」
王子様は頬をかいて手をはなしてくれました。えぇ、だってここ、貴族様用のカフェスペースのサロンですよ。いっぱいい人がいるんですよ。平民は近づかないエリアですよ。
「未来を変えるってことはできるのかな?」
「変える・・・ですか?んー・・・まぁ、あの森の中の出来事は変わりましたけど」
「へー実際にはどうだったのかな?」
そう聞かれて、見えてた未来の話をしたら、ドルークさまに舌打ちされました。怖いよー。
「ドルークやめなさい。」
「じゃーその令嬢への嫌がらせも避けられるんじゃない?」
「どうやってですか?」
「場所はわかるんでしょ?」
「罵倒されるのがわかってるだけで、どう行った過程でっていうのは見えてないので」
「そうか、もう一度繋ごうか」
断る前にまた王子に手を繋がれました。最悪です。
「あー・・・あー・・・不可避ですね」
見えた未来は、どうあがいても不可能でした。ありがとうございます!
「そうか。ちなみに他人のは見えるのかな?」
「他人ですか?」
「そう、ドロシー見てもらいなよ。手を繋いで」
王子に言われて仕方なくって感じに伯爵令嬢のドロシーさまが移動してきて手を繋いでくださいましたよ。ちょっと握力強めですね
「・・・」
「どうかな?」
「いえ、やり方もわか・・・・あ・・・えーーー・・・」
わかりもしないのにって思ったのに、なぜかドロシー様の目を見た瞬間見えちゃいました。
「え?何よ!何か見えたの?」
ドロシーさまが前のめりで聞いて来ました。今までと見えかたが違います。二通り出て来ました。でもこれって、人前で言っちゃダメなやつですね。なので、ちょっと王子様と距離をおいてから、耳元でこっそり囁く事にしました。
「このあと、ドロシー様と公爵様と一緒に私を寮まで送ってくださりますと、その後、公爵様がドロシー様を馬車で送ってくださいますね」
「・・・・」
ドロシーさまが固まりました。
「ちなみに」
「え?」
また耳元で、私を送ってくれなかった場合、公爵様だけ私を送ってくれて、その後可愛い女の子が公爵様の前に現れ、怪我をしてその子を送り届ける未来を告げると、肩を掴まれました。
「わかりました。」
「あ、はい」
目が真剣でした。
「僕たちには内緒かな?」
「はい、デリケートなお話だったので秘密ですわ。」
ドロシー様がさらりというと、時を知らせる鐘がなりました。
「そろそろ、帰らないとね。んー君は誰に送ってもらおうか、ロマーニ。」
「はいはい」
「私も同行しますわ。男性だけでは変な噂がたってしまいますし」
ツーンとしながらドロシー様がいうと、王子様もそうだねって返して終わりました。そして予知夢通り二人に送り届けてもらい、翌日。
「アリス」
「はい!」
ドロシー様がわざわざ私のクラスまで足を運んできました。
「ドロシーと呼んでもよろしくってよ。」
そう言って手を握り締められました。
「は、はい。ありがとうございます。ドロシー様」
「じゃ、午後の授業が終わったら。迎えにくるわ。 あなたの力は特殊だから、周りには言わないようにね」
後半は小声で言われました。
「わ、わかりました」
どうやら予知夢通りに事が運んだらしいですね。ドロシーさまはロマーニさまが好きだったんですか、王子狙いだと思ってたのに。
教室中の視線を浴びながら、私はお昼には友達に質問ぜめに会いました。ちなみにあの森で迷子になったのは、後ろから来た別の平民組の男子に気づいておしゃべりしてたそうですよ。あの二人。酷い!でそのまま先生に見つかり、不合格らしくまた実技参加しないといけないらしいです。私は王子様様、合格がもらえました!
「で!どういうことなの?!」
「まーあれですよ。実技試験の森で一緒になって会話したら、あまりの平民っぷりが珍しいらしくて、お話ししたいそうですよ」
「えーそうなの?平民なら商家のヘンリー様がいるじゃない」
「いや、あれは貴族向けの商品を卸してるところだから、純粋な平民とは言えないでしょ」
「確かにそうねー」
「へー」
そうだったんですね。知らなかったです。二人は物知りですね。まぁ、このあと見えた未来は最悪ですけど。
「はぁ」
「「お疲れ」」
「・・・ありがとう」
私は苦い顔をして返してしまった。変えられそうにない未来は最悪ですね。
午後の授業も終わり、ドロシー様が迎えに来てくださってそのまま特別教室です。どこまでの魔力でどこまで見えるのかチェックだそうです。
やっぱり魔力量がものを言うようです。見たい未来や他人の未来を見るためにはそれ相応の魔力が必要で、自分の危機管理的なものは本能で発動するっぽいです。えぇ、まさかの先生から攻撃を受けそうになるとは思いませんでした。治療ができるからって、骨を軽く折るつもりだったとか笑顔で言うのやめてほしいです。
がしゃんという音と一緒に、足元には花瓶の破片が広がってました。今のは見えなかったぞ、当たらない事がわかってる場合は予知夢できないのかな。
「んぅ〜?」
首を傾げて足元を見てると、ドカドカと走って来たドロシー様からアタックを受けました。
「ふげっ」
「貴方!!何ぼーっと見てますの!!!今の明らかに故意でしたわよ!!!」
「ドロシー様、いやー今の予知夢出来なかったなーってあとドロシー様のアタックも」
「貴方ね!!」
ちょっとツバが飛びそうですよドロシー様って思ってたら。
「まぁまぁ、落ち着きなさいドロシー。淑女が走るものではなくってよ」
そう言って優雅に来たのは公爵令嬢のベル様だ。
「ベル、でも!」
「それよりも移動しましょう。ここは人が多いわ」
「あ、はい」
「わかったわ」
王子様の取り巻きでもあるお二人に連れられて、個室の談話室に連れてこられてしまいました。いやん。
「アリス、あなた犯人は見えなかったの?」
そう言ってドロシー様が手を握って来ました。あ、魔力使って良いから見ろって事ですね。まぁ、なんとなくわかってるんですけどね。
「んー・・・・あー・・・あまり良いものではないですね」
今度ははっきりと見えてしまった、予知夢って良いのか悪いのか。平民組の友人である二人が貴族令嬢に何か囁いてる場面だ。まーなんとなく危険そうだなって思ってましたけどね。
「知り合いでも見えて?」
ベル様ってズバッと聞いて来ますね。
「まぁ、そんな感じですね。」
「私達が出た方が良いかしら?」
「いいえ、余計こじれるかと。・・・はぁ、まぁ原因は私なんで」
「「・・・」」
二人は顔を見合わせて不思議そうな顔をしてます。
いや、だってあの二人は努力して入りたくて王立学園に入った二人なんですよね。話を聞いてるうちにわかったんですけど、それに比べて私はマグレに近い感じで、しかも途中編入の後から入ったのに、まさかの王侯貴族と親しくしちゃったらねー。
ぽっと出の奴がって思いますよね。困った。
本当に困った。
寮で顔合わせた時も何も言われない、今までと普通通り。でも小さいことが起き始めた。筆記用具の一部が足りなかったり、少し席を外しただけで教科書が消えたり。まぁ、すぐに見つけなきゃいけないものは近くにいた貴族の女性を掴み、どこにいったか知りませんか?!って聞きつつ魔力をちょっと拝借して占術で調べるとか言う芸当ができるようになったけど。
「ぼろぼろ」
見つけた防御用のローブ(学園支給)は無残にもボロボロになっていた。流石によろしくない傾向ですね。でも、彼女たちを止める手立てが思いつかない。王子たちに合わせれば止まるんだろうか?私の友達ですって、彼女たちが図に乗るだけな様子が一緒ん見えた。それに王子たちに失礼な気がするし。王子たちも、なるべく目立つところで私を呼びとめる事はない。
相談でもしてみるか、彼女たちに。どんな反応するのかな、怒ってくれるのかアドバイスのように本音をぶつけてくれるのか。そう思って顔をあげたら、顔に水がかかった。そして見えてしまった。
「困ったな」
「困ったものだね」
その声に振り返れば、そこには王子がいた。
「あ、王子様」
「黙って見てるつもりだったけど、目の前でおきてしまったらね。手を出さないわけにはいかないんだ。ごめんね」
ニッコリと微笑む姿は、全然悪びれた様子もなく、むしろ清々しいほどの笑顔。
「わお」
思わず呟けば、王子が手を一振り振った瞬間、突風が吹き、頭上の3階の窓がガタガタなるなか、悲鳴が聞こえた。次の瞬間には彼女たちが飛び出して来た。
「やぁ、特待生への嫌がらせ行為や器物破損行為を働いたお嬢さん、こんにちは」
キラキラ笑顔なのに、思わず、魔王降臨と思ってしまった。彼女たちは王子が操る風の中で浮かんでると言うかグルグル回されてる。
「「?!!」」
「特待生への嫌がらせ行為は厳罰に処すっていう学園のルールをお忘れのようだね。それじゃ行こうか」
そう言うと一振りすると彼女たちは王子とともに何処かへ行ってしまった。
あの渦の中に、二人も入っていた。
「困った」
寮内は平民が基本住んでる。あのあとあの二人は退学になってしまった。一緒にいた貴族令嬢は謹慎処分なのに。この寮内では、二人に対して同情的だ。それに比べて、私は悪女的な立ち位置らしい。
「困った」
「何がだい?」
声に振り向けば、そこには商人の息子で王子の取り巻きの一人、ケールさまがいた。
「いえ、何も」
「ふーん」
ケールさまは普通に私の隣に座ってきた。
「ケールさま?」
「君は不器用だね」
「そ、そうですかね。・・・そうですね」
ちらりと見えた未来に、小さく溜息が出ました。
「王子を頼ると良いよ。」
「余計悪化しますよ」
「どうだろう?」
ケールさまの雰囲気に首を傾げました。どう言う意味でしょう?
「頼らないほうが危険だ。まぁ、うるさいのはベル嬢あたりだろう」
「何を」
疑問に思う前にケールさまが手を握ってきました。そして流し込まれる魔力で違う未来が見えました。
「え」
「じゃー期待してるよ」
今まで見たことのない未来です。そんなことあり得ないはずです。綺麗なドレスを着た自分の前に王子が立っているだなんて。そもそも、そんな豪華なドレス買えないし着る機会もあるはずがないんです。
「これはどういうこと?」
その先は行動しない限り見えない未来。