03話 試験
ーー試験当日。
「昨日は、ご苦労様でした。では試験を始めます」
グリム=アルフォーナは、そういうと、なにやら、人型の模型を出してきた。
「これに向かってスキルを放ってください。
合格値は100です。頑張ってください」
100か…!どれ程かわからないが、俺のスキルであれば行けそうな気がする。
「では、まずケンタ様。
前へ」
「おう!腕がなるぜ!」
ケンタはそういうと、スキルを発動する。
「パーフェクトヒール!!!」
人型の人形をケンタの呪文が包み込む。
魔力値はどうだ?
パーフェクトヒール 魔力値235
おおおお!やったな!
「素晴らしい…たった1日でここまで仕上げるとは…貴方は勇者です。おめでとうございます」
グリム=アルフォーナも喜んでいる。
「では、ユウヘイ様、前へ」
「ああ!」
俺も続くぞ!!!
俺は、昨日と同じ要領で脳内にイメージを込めてスキルを発動させる。
「ライジングスピア!!!!」
しかし、何故かスキルは発動しない。
おかしいな…もう一度やってみるか。
「ライジングスピア!」
でない。おかしい。昨日は普通にできていたはずだ。別に体の不調があるわけでもない。
何故だ。何かがおかしい。至る所から汗が出始める。
「ライジングスピア!」
しかし、何度打っても
俺のスキルが発動することはなかった。
「グリム=アルフォーナ様、何やら時間がかかるようなので、私が先にやってもよろしいですか?」
そういうのは、シュウだ。
「ええ、ユウヘイ様がいいと言うのなら構いませんが」
「変わるよ」
俺は一度、シュウに順番を譲ることにした。
たまたまできなかっただけかも知れない。
そうだ。一旦冷静になろう。
そう思っていた俺の耳に、聞き覚えのある呪文名が聞こえた。
「ライジングスピア」
は…?それは俺のスキル名じゃないか。
すぐさま、後ろを振り返ると、なぜかシュウが俺の呪文を唱えている。
「な…なんで…」
シュウは俺の方を向くと、勝ち誇ったような顔をしていた。
ライジングスピア 魔力値1649
「この魔力値は…!!お見事です。シュウ様。貴方は立派な勇者です」
おかしい…。
あいつのスキルはシーフのはずだ!
盗賊…?まさか!!
俺は急いで自分のステータスを確認する。
勇者ユウヘイ
レベル2
体力 150
攻撃力120
防御力120
素早さ 50
スキル なし。
スキルが…ない。
昨日まであった俺のスキルがない。
…あの時か!
ーー俺は昨日の夜を思い出す。
昨晩物音がし、1度目が覚めていたことを。
あの時、一瞬だが、部屋から出て行く人の姿が見えていた。あの時は、誰かが部屋でも間違ったのかと思っていたが…
今ならわかる。あれは間違いなくシュウだ。
「ま、待ってください!!」
俺は、グリム=アルフォーナに懇願する。
「なんでしょうか、ユウヘイ様」
何かあったのかと首を傾げている。
「シュウは…シュウは俺のスキルを盗んだんです!」
「シュウ様、それは本当ですか?」
俺とグリム=アルフォーナがシュウの方を見る。
すると、シュウはとんでもない事を言い放つ。
「いいえ…、きっと自分のスキルが弱かったから嘘をついているのでしょう」
…は?何を言っているんだシュウ。
シュウは続ける。
「グリム=アルフォーナ王女。調べたのですが、この国で王女に対する嘘は、反逆罪に値するのでは?」
「ええ、それが本当ならですが…
ユウヘイ様、本当ですか?」
「違う!!!それは俺のスキルだ!」
そ、そうだ。タケルなら!
俺のスキルを見ていたはずだ!!!!
「タケル!お前なら俺のスキルを
知っているだろう!?」
すると、タケルは衝撃の言葉を言い放った。
「いえ、スキル ライジンは
シュウのものです」
何をいって…まさか…
ーー私は洗脳のスキルが少し使えるようです。
シュウが言っていた言葉を思い出す。
まさか…あの時言っていた
洗脳スキルを使って…
じゃあ最初からこいつは
俺のスキルを奪うつもりで…
「見苦しいですよ。ユウヘイさん。
そこまで言うんだったら貴方のスキル
とやらを見せてください」
クソ野郎が!!
俺はもう一度スキルを唱えるがでない。
こいつは俺のスキルが出ない事を
知っていていっているのだ。
「ほら、グリム=アルフォーナ王女。
こいつは嘘つきです」
するとグリム=アルフォーナは、一息つくと
何かを決心したのか、こう叫んだ。
「勇者が嘘をつくとは思えません…。
兵よ!この反逆者ユウヘイを捕らえよ!
牢屋に打ち込むのだ!!」
「違うそれは俺のスキルだ!!!」
すると、何処から現れたのかわからないが
20人ほどの兵が現れ、
俺は殴る蹴るの暴行を受けた。
「大人しくしろ!!」
ガハッ…
兵士の蹴りがさらに入る。
呼吸ができない。肋骨を折られたのか。
「連れて行け!!!」
ドアが閉まっていく。
俺の意識が遠ざかっていく。
違う…そいつは…俺のスキルだ…。