19話 ラルク王国
♢
ズズズッ…。
「あー久しぶりに飲んだわね、この飲み物…やっぱり
美味しいわ」
「…」
「あれ飲まないの?」
エルザは、ティーカップに入った
何らかの温かそうな飲み物を飲みながら、
俺に問いかけてくる。
「毒をもっているかもしれん、俺は飲まん」
「いや何回疑うのよ!!そんなことしないわよ!!」
エルザが立ち上がって叫び出す。
毒系のものなら、俺が飲んでもこの蛇のスキルで
問題ないだろうが……。
だが、眠り系のものは……仕方あるまい。
「エルザ、こっちを向け」
「な、なによ、そんな改まって……。
貴方、もしかして……!!」
エルザは、頬を赤らめ、口先を尖らせている。
そして、そんなエルザに向かって俺は
手のひらから生み出した蛇を顔面に投げつけた。
「ぎゃー!!!!!!」
その隙に、別の蛇を生み出し、謎の飲み物を
飲ませ、毒味をさせる。
うむ…。即効性があるものではないようだが。
「念の為に、あと2時間は待つとしよう」
「いや冷めるわ!!」
2時間後。
蛇に異常がなさそうなので、俺も口に
することにした。
「美味い…これは何という飲み物だ」
エルザは呆れた顔でこちらを見ている。
「貴方って本当に……。それは、グルマンっていう薬草を材料にしたものよ。でも、温かい方が美味しいんだからね!!」
「うむ、では次は温かい時にいただくとしよう」
「はぁ…。まぁこの用心深さがあったからこそ、これまで助けられているのよね……」
「なんだ、何か言ったか?」
「何も言ってないわよ!!はぁ…なんだか疲れたわ、
それにしても貴方ここからどうするの?」
エルザの言う通りだった。指名手配されたことにより、身動きが全く取れない状態だ。このエルザの王国に入れば、しばらくは安心だろうが、いつ、この場所がバレるかはわからない。そして、俺が、生き残る術は。この世界から脱出する方法を見つけるか、シュウを探し出し、誤解を解く必要がある。
だが、俺を貶めた奴だ。
話が通じ合う相手ではないことなど百も承知だ。
力づくでも見つけ出し、偽りだったと
吐かせるつもりだ。
だが、現状、なんの手掛かりもない。
だったら、まずは、情報収集だ。
この世界のこと、そして、今の俺が置かれている現状を詳しく知る必要がある。
「エルザ、この王国に、この世界について載っている書物はあるか?」
「ふふふっ……」
「……何がおかしい」
「ユウヘイ、貴方はこのエルザ王女の
国を舐めているのかしら?」
エルザはなにやら勝ち誇った顔をしている。
そして、エルザは続ける。
「この国、ラルク王国は、貴方が収容されていた最も東にあるグリム王国の次に大きいと言われていると呼ばれる王国よ。そして、そんな国が誇るこの私の宮殿に、書物がないわけないじゃない。そして私の王国は代々…え?なにこれ?ムググググッ!!」
さらに続けようとする、エルザの口元に
蛇が巻きつく。
「あるのがわかれば十分だ、俺はその書物とやらを探しにいく」
「ムググ…プハッ!!なにすんのよ!!
場所わかんないでしょ!?」
「場所なら、とっくに調べている。ここに連れてこられた際に、あらかた確認しておいた。いつでも脱出できるようにな、ではさらばだ」
「ちょ、この蛇取っていきなさいよ!!ユウヘイ!?
えっ、ちょ、ほんとに行っちゃうの!?
ユウヘイってばあああああ!!」