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18話 お礼

 

  剣神アトランタは、ピクリとも動かない。


「剣神アトランタを倒すなんて…。ユウヘイあり…

 ヘブッ!!!」


  俺は、エルザに片手でチョップをする。


「痛…」

「お前はもっと反省しろ」


 エルザは頭を抱えて、申し訳なさそうな顔をしている。

 この女といると、毎回トラブルに巻き込まれそうだ。いい加減にして欲しい。


「それに、お前は俺に隠していたことがあるだろう」

「隠してたこと…?」

「お前が女王だということを兵士から聞いた」

「なんですって!?」


 エルザは少し驚いた表情をしていたがしばらく経つと、何かを決めたようだ。


「勇者探しは諦めて、一度、王国に戻るしかないわね…」

「さっさと戻れ、お前の国の兵士は俺の首筋に槍を向けてきて俺が誘拐犯だと騒ぎ立てていた」

「そうだったのね、それは謝罪するわ…。

 何かお礼をさせてもらえないかしら?」

「いらん」


 言葉でひと蹴りしたが、エルザは続ける。


「ユウヘイは住む場所に困ってるんでしょ?あんな宿に泊まっていたし…。それにユウヘイ」

「なんだ?」


 エルザは、ごそごそと懐から一枚の紙を取り出し、俺の目の前に突き出した。


「今朝、諜報部隊から届いたの」

「!?」


 ーー罪人 神崎悠平

 ガルム王国の牢獄から逃げ出した罪で指名手配とする。

 

 以下のものを捕まえたものには…


 そこには、俺の顔と名前そして、

捕まえた時の報酬等が書かれていた。


 いつかはバレると思っていたが…

 俺はエルザに身構え、スキルを唱えようとする。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!

「俺を捕まえるつもりだろう?」

「違うわよ!もし捕まえるんだったら、この紙が交付されている事なんて、今言わないわ。それに命の恩人にそんな事しないって…」

「…俺は罪人だぞ?」

「何か事情があるんでしょう?私は女王よ。これまで数々の人間と会ってきた。人の見極め

くらいできるわ」

「…」


 俺が本当に罪人だったらどうするつもりだ。

 こんなんが王女の国で、本当に大丈夫なのだろうか。


「そこで提案なのだけれど、私の国に来ないかしら。

 私の国。ラルク王国は、情報に長けているわ。貴方、何か目的があるみたいだし。そこで今回のお礼として貴方を匿ってあげる」

「なんだと…?」


 俺がシュウを探しているとは、わかってなさそうだが、何かを探していることに気づいている?

 意外と鋭いのかこいつは。いや、だが、罪人を匿うとは、やはりバカなのか。

 ただ、情報に長けているところというのはこちらには都合が良い。もしかしたら、シュウのことについて何かわかるかもしれない。

 それに、正直、次に泊る宿のアテはなかった。

 野宿するつもりだったが、リスクが高い。

 あのエルザの所持している紙はおそらく他にも広まっているだろう。幾らフードで顔を隠しても、これからバレる危険性は高まる。

 だったらこいつの提案はありがたいが…。


「罠じゃないのか」

「はぁ…本当に用心深いわね。罠じゃないわ…といっても貴方は信じなそうだけど」

「当たり前だ。口頭なんか俺は信じない」

「だったら証明してあげるわ」


 エルザは、剣を取り出し、自分の手のひらに切り傷をつけた。

 何をしているんだ?

 エルザはさらに、呪文を唱える。

 すると、エルザを取り囲むかのように円陣が出現し、エルザに何やら紫色の紋章が身体中に

浮かび上がる。


「これは…」


 俺はこの呪文を知っている。牢屋に囚われていた際、罪人であろう男が、尋問を受けている際に使われていたものだ。どうやら嘘をつくと死亡するという呪いをかけるものだったはずだ。実際に罪人は、嘘をついたのであろう、死に絶えていた。

 まさかこいつは、それで証明を…。


「私は、貴方を騙すつもりはないし、危害を加えるつもりもないわ」


 シーン。

 何も起きない。


「ね、本当でしょ?」


 エルザは、何やら誇らしげに俺にそう言う。


「お前が嘘をついていない事はわかったが…」

「ユウヘイにとってもこの提案は悪いものじゃない

 はずよ」


 確かに…。だが…


「な、何よその顔は!まだ問題があるの?」


 うーむ。


「お前に、主導権を握られているようで腹がたつ」

「はぁ!?」

「まぁ、わかったお前の国にお邪魔させてもらう」


 エルザはそれを聞くと、ホッと胸を撫で下ろした。


「じゃあ行くわよ!私の王国へ!」


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