13話 名前
「俺が搭載しておいたのは、偵察のためのスキル
アイズだけではない、ボマーというスキルも付け、
俺が自由に蛇を自爆させられるようにしていた」
「…」
なにやら女が沈黙している。
「貴方何者なの?…もしかして勇者様?」
勇者様だ?俺にとって勇者という言葉はシュウを思い浮かべてしまう。
だから、気持ちの悪い言葉でしかない。
それに様を付けるなんてもってのほかだ。
なんだこいつらといい、おっちゃんといい、
この世界は勇者を崇拝しているのか?
「俺はただの人間だ」
「そう…単体スキルを使うなら誰にでもできるけど、
それを組み合わすことができる知性を持ってるなんててっきり、勇者様かと思ったのだけれど」
「俺は人間にも魔物にも常に警戒を置いているだけだ。次の一手を予測し、必ず準備している。
それに…」
「それに?」
「俺はまだお前を疑っている」
「はぁ!?呆れたわ…」
女は、真顔でこちらを見ている。
俺がなにをしたというのか。
「まぁ今日はこれだけ倒せば十分だろう」
「私何もしてないんですけど…」
♢
「ヒッヒッヒ、また大量の素材を…。
血の匂いに加え、火薬の匂いがしますねぇ…」
「何この人やばいわよ」
女はヒソヒソと、俺に耳打ちしてくる。
それには俺も同感だ。
やはり誰が見てもこいつは怪しい。
「幾らになる」
「占めてゴールド2枚です、ヒッヒッヒ」
俺はゴールド1枚を受け取ると、
もう一枚を女に渡す。
「え、私何もしてないわ」
「臨時とはいえ、パーティを組んでいる以上
分け前は半分だ」
「貴方って変わってるわね」
その後も、何やらぶつくさ言っていたが、
何とか嗜め、ゴールドを渡した。
♢
何か他に使えそうなスキルはないか、
調べていると女が話しかけてくる。
「貴方名前は何なの?」
名前。教えるべきか迷う。
脱獄犯としての俺がこいつ、又は村の連中に知られているかもしれないからだ。だが、仮に俺が
指名手配されることになれば恐らく顔写真と名前の両方が載る。なら名前を教えようがどっちでも良いか。
「ユウヘイだ」
「ユウヘイね…私はエルザよ」
別に聞いてはいなかったことはさておき、
エルザ…。この名前は一度どこかで聞いたことがある。ガルム王国にいた際、何やらエルザがどうとか話をしていた兵士がいた気がする。
「やっぱり怪しい…」
「何がよ!」