夕陽を愛でる人
1ブロック足りない
街の中
家が消える
土色がアスファルトに区切られ
そこだけ喰われたみたいだ
話し声は消えて
幻影だけが
知っている人だけに残っている
それでも続く家族団らんは
両隣の家で
灯りと同じ形に
響いていた
一つの変化に
悲しみを落とすのは
スピード社会の中
不必要なことになる
次から次へ
それを成長だと思うのか
流れるだけのことだと思うのか
消えた物は
二度と戻らない
全く同じ形では
二度と戻らない
あの形を
自らが作れていると
感じることは無い
どこか違う
子供の頃に
欲しかった物だろうか
何か違う
あの時に
与えて貰った物だろうか
違うことが
良いと言い切れる人は居ない
悪いとも言える人は居ない
でも、何かが違っていて
大切な物を忘れて行く気がする
古い井戸を見ながら
形の無い気持ち悪さが
冷風と抜けて行く
古い鏡台は
祖母さんの形見で
それには
ゆっくりと出来るような
ただ優しいだけの思い出がある
これも、いつかは壊れるし
何の形も無い人には
粗大ゴミだと言われるだろう
シールを貼られて
ゴミ捨て場か
車で運んで
重量差でお金を払い
バキバキの屑にされる
毎日のように
繰り返されているから
分からない形なのだろう
ゴミはゴミ箱へ
言い付けを守って
僕等は過ごしている
ゴミだと判断したのは
一体、誰なんだろうか
多様化したなら
ミニマムとはならない
価値観が増えるのなら
ゴミだけが少なくなる筈だ
ゴミだと言わない人が
出てくるのだから
人と人の繋がりだけが
繋がりでは無い
人と物の繋がりは
時間を超えて
繋がりを生み出す
忘れたのか
思い出す気が無いのか
夕陽を愛でる人は