2話 ナナナの死
「あーー、完全にしくったわー。」
ナナナは頭の中で考える。
「予定だったらとっく魔王を倒して今頃ブルジョワな生活を送っているはずだったのになー。」
「運命の寿命ってなんだよ。そんなの聞いてねーわ。何をしても治らねーしよー。勇者扱いされてるのに病魔で死にそうってなんだよ、笑えねーわ。てか身体のどこも動かせないから現に笑えねーか……ははっ……」
声にも表情にも表せないが心の中で乾いた笑いをこぼす
ナナナは現世でアイドルとして活動する傍ら、パチンコ屋でバイトをしていたのだが、タバコの臭いを嫌って呼吸を止めていたところ、そのまま死んでしまった。
そして気がつくと真っ黒な空間におり、目の前にゲームの様なウインドが現れ、転生するかどうかの選択が書かれていた。
異世界小説が好きだったナナナは、どうせこれは死ぬ前にみる幻かなにかだと思ったので、はいを選択し続いて表示されたステータスの割り振り画面も強さ系のステータスに全振りしたのだった。
そして次の瞬間、本当に異世界に転生していたのである。
それからの彼女はというと、何の苦労もしなくても魔法や武力が爆発的に向上しはじめ、周囲からは神童と呼ばれもてはやされ、努力無しで気づいた時にはエレベーター式に世界一の勇者になっていたのだった。
名誉、財力は勝手に積み重なり、イケメンもわんさか寄ってきた。
人生ラクゲー過ぎるわー。
と思いながら本当の意味で何不自由ない生活を送っていたある日。
終わりの始まりは突然やってきた。
身体が一切動かなくなったのである。
だが、既に魔法の無詠唱も習得していたナナナは何も心配していなかった。
神話で登場する神々に等しい力の治癒魔法や復活魔法が使えるのだ、心配しろという方がおかしな話である。
全ての治癒魔法をひとしきり使い終わったあと、ナナナは初めて恐怖を感じ始めた。
もちろん周りの王達も持てる力全てを使って救おうとはしてくれたが、所詮人のすること。
神話レベルが治せなかったものを治せるはずもなく、絶望の色が濃くなった。
そして、ある国の王が持ってきた神々の時代の文献に書かれた答えを聞いた時、ナナナの絶望の色が真っ黒に染まった。
文献によると、人々にはステータスというものがあり、それの振り方で寿命が決まる。数値の総量は人それぞれなのだが、ランダムで決まるその数値によって定められた運命の寿命は絶対に変えられないとのことだ。
ナナナは転生者という特殊な性質上、ステータスの割り振りを自分でしたのだが、戦闘系に全振りしたので他の項目は一切見ていなかった。
ステータスの初期値は全て1だったので、寿命系の初期値が来てしまったのだ。
それを知ってからというものナナナはほぼ無気力に死を待つだけだった。
そしてどうやら今ちょうど死が迎えにきたらしい。
目の前が真っ暗になり、2度目の人生の幕が閉じた。
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と思ったのも束の間、ナナナは見覚えのある場所にいた。
そして目の前にはウィンドがあり、こう書かれているーー
『転生しますか?』
とーーーー