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第4話 初めてのダンジョン


 あれから一ヶ月の月日が経った。

 

 ナルドレア大陸に上陸した僕たち第七分隊は一度ベースキャンプに赴いた後、ダンジョンの 『導き』 によって順調にダンジョン攻略を進めた。

 

 ダンジョンは 『適応者』 というシステムが存在し、それぞれの人間で入れるダンジョンが異なる。

 ではどのようにして自分に適応するダンジョンをこの広大なナルドレアから探すかというと、それはダンジョンがその者を導いてくれる。

 というのも、ナルドレアに足を踏み入れるとそれぞれの人間や魔人には自分に適応するダンジョンまでの道のりが光って目に見ることができる。それを辿っていけば見事ダンジョンに辿り着くことができるというわけだ。


 ただそれぞれ分隊員のダンジョンに辿り着くのにも、もちろん一筋縄ではいかなかった。

 道中には稀に 『除け石』 を上回るモンスターとの遭遇を余儀なくされ、僕たちはその度に連携をとってはそのモンスターたちからどうにか逃げ出していた。

 なぜそのモンスターと戦わないのか? それは正直なところ愚問であろう。

 僕たちに支給される 『除け石』 は市販されている物とは異なり品質がかなり良く、その大体はパンギュラ隊の大佐クラスの人たちが討伐・採取してきてくれる代物である。

 もう言わずとも分かるとは思うが、その『除け石』を上回るようなモンスターと僕たち下級兵が戦っても、まず勝機はないと言っていいだろう。


 しかしそんなこんなでなんとか危機を切り抜けてきた僕たち第七分隊は攻略の難しいダンジョン内でさえも死人を出さず、とうとう最後のダンジョン攻略に差し掛かっていた。


 「よしここが最後だな……!! イルク、一番最後の攻略で体力に疲弊はあるとは思うが気を抜かずに頑張ってこい!」

 「はい! アルベック隊長!!」

 「他のみんなも最後まで気を抜かずにここを死守するぞ。まだ運よく魔国軍とのエンカウントはないが、これからの可能性だって無きにしも非ず、だ。モンスターにだって一瞬の油断もするな。正念場だ、気合い入れていくぞっ!!!」

 「「「「「了解!!!」」」」」


 僕はこのアルベック隊長のどんな時でも明るい性格に遠征期間ずっと励まされてきた。

 それに応えたい。また、ダンジョンという子供の頃からの憧れをただ単純に楽しみたい。

 そして、復讐の第一歩を成功させたい、という気持ちがいつの間にか僕を攻略に対する恐怖から遠ざけていた。


 「ふぅ……行ってきます!!!」


 リーザスを初め、みんなの応援を背に、僕は覚悟の第一歩を踏み出した。


><><


 「おおぉ……!」


 黄土色の巨塔の内部に侵入するとそこには建造物の中とは思えない程の絶景が広がっていた。

 辺りより高地になっているダンジョンの入り口はその内装を見渡すことができ、内部の中央には上部に続く高い螺旋階段が望める。

 壁面は蔦や葉などの植物に覆われていて表面が見えない。螺旋階段までの道のりは迷路かつ迷宮になっておりやはり木々の植物が周囲を包んでいたが、下部の方は霧が立ち込めていてはっきり目視することができなかった。それに目では未だ見えないもののモンスターの気配も多く感じる。


 「よし、行くか。」


 ワクワクする気持ちを抑え、急な崖を下って樹林の迷宮の入り口から攻略を始める。


 僕が今攻略しているこのダンジョンは大都市であるパンギュラの図書館にさえその詳細が記されていないダンジョンで、ほとんどの情報がない。

 普通、ダンジョンの詳細というのは、攻略者がいれば大金と引き換えにその情報が公開され、それ以降に攻略を試みる冒険者に安定した攻略情報を提供することができる。

 しかし今回はその例に漏れているため、実質未踏のダンジョンと解釈してもいいだろう。

 よって、どんなダンジョンモンスターやギミックが隠されているかわからないこの状況、気を抜いたらそこには当然、死待つのみであった。



 


 『除け石』 の効果が効かないダンジョンモンスターを相手にしながらかなりの時間 (おそらく一日くらい) 迷宮をさまよっていると、大きな広間に出た。

 そこは天井にポッカリ空いた穴以外には光を遮断したルームになっており、まるで天井を支える柱のように太い木々がところどころ点在していた。

 ギリギリ向かい側に目視することのできるルームの出口がきっと先に続いているのだろうことは、天井に空いた穴からはっきり見える螺旋階段を見れば容易に判断することができた。


 「よし、順調だ。」


 僕はそのまま向かい側の通路の方へ足を進めると、ふと違和感に気付く。


 このルーム、今までのところと違って全くモンスターの気配が感じられない……?


 暗闇のルームを見渡しても不気味なほどに静けさを保っている。

 そして、唯一光の差すルームの中央に到達したところで、ピョコンと、一匹の子犬のようなモンスターがその赤い目を暗闇に光らせて姿を現した。先までの探索で何度も交戦したモンスターで、正直強くはないもののすばしっこいので最初は狩るのに少し時間を要した。しかし今こうして見ているのとは裏腹に、戦闘時に見せる醜悪な形相は何度見ても少し怖い。

 いきなり出現したことに少し動揺してしまったが、気を取り直して、背負っていた盾と剣を抜いて前進した。

 しかし、


 ーーーーウォォォォォォォォォンンンン。


 まるで狼のような遠吠えをすると、木の裏にその姿を暗ます。

 咄嗟に危険を感じ取りその場から一歩引くとモンスターの気配が身の周りに急増するのが分かる。

 「嘘、だよね……」


 気がつくと周りにはモンスターの群れが僕を囲って不気味な笑みを浮かべていた。ダンジョンモンスターが知能を持つというのは昔聞いたことがあったが、まさかここまでとは…………


 「クソッ、罠か……!!」


 はめられた。

 戦慄し、焦燥が募る一方で、周囲のモンスターはじりじりと僕との距離を縮めてくる。


 どうする、どうする、どうするどうするどうするどうするッ!!!!!!!!!!!


 するとそこで一匹のモンスターを皮切りに周囲の数体が僕目掛けて駆ける。一体一体のチカラはそれほど強くないものの、100を越える集団で囲まれると僕に勝ち目はなかった。


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