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End of the Sin  作者: 桐谷 迅
鬼の罪
4/6

参、罰の始まり

 「…もう日が落ちてきてるけど、どこまで歩くんだ?」

「黙って歩けぬのか?あと少しの辛抱じゃ」

もう、一体何時間歩いたのか分からない。

昼食後すぐに出ても日が落ちる時間帯って遠すぎるにも程がありすぎだ。

「ほれ、着いたぞ」

「ここ…が?」

 見る限り、ごくごく何処にでもありそうな十階建てマンションだった。

だが、人が住んでいるようには思えない。

 入り口から入り、エレベーターに乗ると「何があっても喋るな」と言われた。

二階、四階、六階、八階、十階とエレベーターを動かし、やっと奇数階である五階に着いた。

そこである女性が乗ると「あなたですね」と言い、あるはずもなかった地下へと降りるボタンを押す。

すると、エレベーターは降下を始める(感覚は落下しているような感じだったが…)。

もう、いきなり過ぎる展開に混乱を隠せなくなってきた。


「やあ、ミナ君。元気だったかい?お、その子は契約者だね。さぁ、お話をしようか」

 エレベーターを降りても喋らない事を約束されたため、言いたいことが何も言えない。

目の前にいるチャラい服の男性の正体も、ましてやここは何処かですら尋ねられない。

周りを見渡すと、誰もいないのにヘンに視線を感じる。

さらに注目して見渡すと倉庫のような造りをしていることに気付く。

誰かが隠れていてもおかしくない環境だった。

 そんな僕を置いて、マシンガントークが開始されていた。

「そうじゃ。だがまだ契約を結んでおらぬ。言い換えると、今は違う、じゃ」

「ふーん、んじゃ、どんな御依頼?」

「この者は鬼憑きになっておる。記憶操作も入っている状態じゃ。

補足するのであれば…この鬼を退治の後、我と契約を結ぶこととなっている」

「事情は了解した。だが、一週間待ってくれないか?他の依頼が来ているんでね」

「どんな依頼じゃ?」

「君と同じ《鬼》関連だよ」

「承知した。ならば我らも助太刀しよう」

「その必要はないさ。それに十万円も貰ったんでね、俺達が解決しないと満足してくれなさそうだしな」

「ふむ、分かった。今日は引くとするかのぅ」

 圧倒的なスピードの会話についていけなくなり、口があんぐりとしてしまう。

ここまでくると、アナウンサーも言えないんじゃないかと思う程の阿吽の呼吸におもえた。

それに、ミナ曰く、古くからの付き合いだそうだ。

ま、そしたらこの人も何かかかっているのではないかと疑いを掛けざるを得ないがな。

取りあえず、ミナ達の話を要約すると、一週間後に僕に憑いた鬼を退治をしてくれるらしい。

「ではのぅ、烏の小僧」

 引きずられ、エレベーターに乗せられる。

何も分からないまま連れてこられて、何も分からないまま帰る。

だが、エレベーターのドアが閉まる時に見えたその男性がした不気味な笑みだけは覚えている。


「もう喋って良いぞ。異論反論抗議質問口答えを認める」

 マンションを出ると辺りは真っ暗になっていた。

エレベーターに乗っていた女性に一万円を渡された為、それを使い、タクシーを使って帰る。

 ていうか、こいつ、どっかの中二病教師かよ…。

「まずあの人は誰?」

「烏丸というもので、元陰陽師じゃ。八咫烏に憑かれた者じゃよ」

「《八咫烏》って、あの何とか天皇を導いた妖怪だよな?」

「うむ、そうじゃ。じゃが…何でもない」

「何なんだよ」

「関係ないことじゃ。さて、もうすぐ家に着くぞ…

待て、うぬ、こいつから我らを降ろした後、すぐにここから立ち去るのじゃ」

 ミナがここまで言うとなると不思議と嫌な予感しかしない。

 運転手はすぐにその要求を飲み、清算の後、僕らを降ろして逃げるように去った。

「ミナ、どうしたんだよ」

「しっ…聞こえるか?」

 何を言っているかと思ったが、よく耳を澄ませば鳥の囀りが聞こえた。

「これは…」

「…《送り雀》じゃ。《送り雀》は囀りで敵の居場所を知らせ、狼に殺させる。

つまり、こういうことじゃ」

 目の前には黒いコートに体を隠した軍団だった。裾から見えたのは肌ではなく、獣のような腕だった。

「《送り狼》…我らを食しにやって来たらしいのぅ」

「おいおい、《送り狼》って普通の狼じゃないのか?」

「あぁ、本来は、の。じゃが、《送り雀》自体が人間に憑りついているのであれば、狼は人狼と考えてよかろう」

 僕が今まで否定してきたことが目の前で起こると、意外にあっさりと認めてしまう。

 って、今は考えている暇もない。どうすれば…

「お主は待っておけ。我が何とかしよう」

「何をするつもりだ…」

言い終わる前には群れに中に飛び込んで、一蹴し、半分以下にまで倒す。その後も圧倒的な力で敵を薙ぎ払っていった。

しかし、囀りは止まらず、敵は次から次へと現れた。どこだ、どこに雀がいる…、周りを見渡していると、屋根から一切動いていない黒ずくめを見つけた。

「ミナ、あの屋根の上に雀がいる!」

 その言葉を聞くやいなや周りの狼たちを蹴り飛ばし、

背中から現れた羽で飛び、ほとばしい閃光とともに、動いていない黒ずくめの首元に噛み付いた。

 黒ずくめの男が倒れると、うろついていた狼達は消えた。


「ミナ、この男は死んだのか?」

「《ドレインショック》…我らは体内でエネルギーを生み出す。

そのエネルギーが一定量を下回ると瀕死状態になる。

我は鬼であれば何でも変われるからのぅ、吸血鬼となり、吸ってきたんじゃ」

 殺してしまっては何の意味もないとビビッていたが一安心する。

「遅くなってしまったが…帰ろうぞ、お主よ」

 そんな形でトラブルばかりの一週間が始まる。

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