零、誓いの日
やっぱり、あの夏の日に見た夜空ほど綺麗な空は見たことがない。
「また…会える…よね?」
「…うん、絶対だ。大きくなっても…好きだったらいいな」
「…そうだね。あ、そろそろ始まるよ?お星様にお願いしようか」
溢れる涙を拭い、悲しみを堪える。
それでも溢れてくる涙と悲しみを見せないようにと空を見上げ、紛らわす。
周りに強い光を出す建物が無ければ、高層ビルなんてものはありゃしない。
ましてや、ここは屋敷から近い高原。無数の星々と月は綺麗に輝いている。
これから始まるものを見るために、今よりも少し高いところに移動する。
夢のような風景にいつまでも溺れているように思えた。
ゆっくりと座り、五秒という長い沈黙の時間を経て、二人は誓いを立てる。
――また会ったときも、仲良しでいようね
無邪気な子供たちの誓いはいつまで経っても残る。
言い伝えによれば、星降る夜に立てた誓いは、どんな形であれ、必ず果たされるそうだ。
込み上げてくる感情を抑えきれずに、涙が零れて、消えていった。
離れ離れになる哀しさのほかにも、ずっと一緒にいたいとか、忘れたくないとかいう感情も生まれてくる。
そして、首にかけていた私物のペンダントを外し、二つに割った。
太陽の絵が描かれたほうのペンダントはあげて、月の絵が描かれたほうは自分が持った。
「これは僕の父親から貰ったんだ。
このペンダントは二人で使うものらしくて、不思議な力があるんだって。
約束が叶うようなおまじないがかかっているんだ」
「また、会ったときにはこの二つを重ねて、ってことね。
うん、ありがとう。大きくなったらこのペンダントを返しに行くよ。約束だからね?」
「楽しみにしているよ」
いつの間にか涙は消えて、笑顔だけが残った。
「今までの夏のことは忘れない」
「うん、私も」
――星降る夜に、またこうしてお話しようね。