第7話 特務中佐
物事は一度決定するとあとは早いものだと
つくづく感じる。
俺はプルチョフ大臣のご厚意によって
戦艦スヴェントヴィトへの乗艦を
許された。
プルチョフ大臣は海軍大臣。
海軍の予算や人事を司る役職だから、
根回しもお手のものだったのだろう。
こうして俺は1939年10月18日。
誰も知らない異世界でバギーニャ王国の
国防海軍特務中佐に任命され、
艦隊司令部付となった。
19日。スヴェントヴィト艦上で俺の
任命式及び着任式が行われた。
俺が最上甲板第一主砲塔前に
用意された壇上に上がると、
一斉にどよめきが起こった。
今まで男子のいない海軍だったのだから
無理はない。
俺は風花によって襟に勲章を
付けられ、晴れて艦隊司令部の一員となった。
しかし、俺の艦隊生活は最初から
つまずくことになる‥。
任命式の後、スヴェントヴィトの
作戦会議室に司令部幕僚が集められ、
俺の歓迎会が開かれた。
司令部幕僚をぐるっと見渡す。
伝令員や、記録員、世話係を除けば、
サイドテールの高校生くらいの日本人と、
ストレートの金髪が美しい20代後半のロシア人、
そしてそこに風花を加えたわずか3人が
艦隊司令部の幕僚だった。
まず、主役の俺が挨拶する。
大丈夫だ。挨拶の仕方くらいわかる。
「このたび特務中佐に任命されました。
新浪改と申します。ご存知かと思われますが、
70年後の未来から来ました。
少しでもお役にたてるよう、努力する所存で
ございます。よろしくお願いいたします。」
俺は深々と頭を下げたが、
拍手してくれたのは風花だけだった。
やっぱり、最初は受け入れられないか‥
次に挨拶したのは、サイドテールの
日本人だった。
「艦隊主任参謀、足立亜紀子です。
階級は少佐。年齢は16です。
これだけは言っておきます。私は貴方を
認めません。以上」
いきなり宣戦布告かよ‥
まあ宣戦布告なしに攻撃されるよりは
マシだけどさ‥
彼女はそれだけ言って礼もせずに座ってしまった。
俺そんなに嫌われてるのか?
なんか変なことしたか?存在自体ダメとか
ないよな?一応階級は俺のほうが上なんだけど‥
その次は金髪のロシア人。
スゲー綺麗な髪だと思う。
「ラズリシーチェブリスターヴィッツア!(はじめまして!)
艦隊参謀長、◯&%¥$@#、ユリアよ!皆からはユリアって
呼ばれてるわ。階級は大佐。よろしくね!」
最初のロシア語はなんとか聞き取れた。
しかし、その後の名字?にあたる部分は
まったく聞き取れなかった。
まあユリアでいいみたいだし、それでいこう。
日本語もペラペラで安心した。
そして最後は風花。
「国防海軍連合艦隊司令長官、暁風花です。
19歳で階級は中将。親はどちらも日本人です。
新しい仲間が増えてとても嬉しく思います。
わからないことがあったらなんでも聞いてくださいね。」
さすがは司令長官。
人の上に立つ立場なだけあってしっかりしている。
19歳で中将か。どんだけ優秀なんだろう‥
こうして幕を開けた俺の艦隊生活。
しかしそれは想像を絶するほど過酷なものだった!




