第5話 ペトロパブロフスク上陸
ペトロパブロフスクに上陸した
俺は、黒塗りの車に乗り、
海軍省へと連れていかれた。
ただの遭難者なら警察に引き渡せば
済む話だと思うのだが、
やはり艦内を見てしまったのがいけなかったのか。
それともなにか他の理由があるのか…
車にゆられること30分。
バギーニャ王国の海軍省は、大日本帝国の
海軍省とほとんど同じつくりだった。
大日本帝国の海軍省もイギリスを参考にして
つくられたと聞く。
この赤レンガづくりの建造物は、
非人工的な現象を恐れる
欧米人の気質にぴったりなんだろう。
風花に案内され、2階の海軍大臣室へと向かう。
このあたりも帝国海軍そっくり。
おそらく3階には軍令部(もしくはそれに準ずるもの)が
存在しているはず。
大臣室の前に立つと、自然と背筋が伸び、
緊張からか、足が少し震えた。
風花がドアをノックし、
続いて俺が入室する。
大臣席に腰かけていたのは、
60歳ぐらいの初老の男性。
白人であることは間違いない。
白髪で、丸縁メガネをかけ、
体は痩せていて、お洒落なネクタイを
締めていた。
富豪の家の使用人というイメージが
一番よくあてはまるだろう。
「プルチョフ大臣、お連れいたしました。」
プルチョフと呼ばれたその男性は立ち上がり、
こちらに歩いてくると、
俺に右手を差し出した。
「Разрешите представиться.
Меня зовут〜」
おいおい、ちょっと待て!
俺はロシア語わかんねぇんだよ!
誰か通訳しろよ!
「『初めまして。私の名前はプルチョフです。
ようこそ、バギーニャ王国へ!』」
その俺の心の叫びを聞き付けたのか、
風花がすべて彼のロシア語を訳してくれた。
「大臣、日本語でお願いします。
彼はロシア語はわかりません。」
「おお、そうかそうか。これは失礼した。」
風花の忠告を受け、大臣が流暢な日本語を
話はじめた。
て、日本語話せるなら最初からやれよ!
心の中でツッコミを入れつつも、
俺は大臣と握手を交わした。
ここも日本の文化が浸透しているんだな。
「は、初めまして。
新浪改と申します。」
握り返された手の握力はその細い体からは
想像もつかないほど強かった。
人はみかけによらないというが、この国の
人たちは特にそうらしい。
「立ち話もなんだから、そちらにどうぞ。」
俺はソファーを勧められ、言われるがままに
座った。風花も俺の横に座る。
「さて、新浪君、このたびは大変だったね。」
「は、はあ。」
俺はこの次の質問を予想して空返事しかできなかった。
なぜなら、次の質問は十中八九
「遭難の経緯」についてだからだ。
これについては本当にどうすればいいか
わからなかった。
真実を話すべきか、ごまかすべきか…
すると、次の瞬間、大臣から信じられない
発言が飛び出した。
「君は未来から来たのか?」




