第2話 バギーニャ王国!?
重たいまぶたをゆっくりと開いた。
視界に光が射し込んでくる。
あれ?海に沈んだんじゃなかったのか?
底から突き上げるように
響く、エンジンと思わしき振動。
微かだが、忘れもしない波を掻き分ける音。
間違いない。ここは船の中だ。
俺は海上保安庁に救助されたのだ。
まだ頭が痛い。
海水を大量に飲んでしまったからかもしれない。
頭を起こし、冷静になってきた俺は
じっと周囲を観察した。
部屋には木製の椅子と机。
机の上には書物が多数。
『孫子』クラウゼヴィッツの『戦争論』
どれも海保には似合わないものばかりだ。
もしかして海保ではなく、海上自衛隊だったり
するのか?
上を見上げると、蛍光灯はなく、
古くさい電球がひとつだけ。
なんともレトロな船だ。
そんなことを考えていると、
部屋に丸い小さな窓がふたつ付いていることに
気がついた。
外の様子を観察しようと窓を覗いた。
そして俺の視界にとんでもないものが
飛び込んできた。
「はぁぁぁ!?白露型駆逐艦だと!?」
窓の外で白波を蹴って進んでいたのは
旧日本海軍の駆逐艦白露型。
先の大戦で10隻すべて戦没している。
こんなところにいるのはありえない。
さらにその後ろには利根型巡洋艦の姿まである。
もうなにがなんだかわからない。
なんで大戦中の日本海軍の船が
ここにいるんだ??
幻覚を見ているのではないかと
何度も目をこすった。
しかし、状況はまったく変わらない。
俺が途方に暮れていた時、
コンコン
「失礼します。あら、お目覚めでしたか。」
入室してきたのは俺とほぼ同い年の少女だった。
女子高生か女子大生、年は18〜20くらい。
眉毛の上で綺麗に切り揃えられた前髪に
肩に少しかかるくらいのショートカットの黒髪。
目は大きく、整った顔立ち。
間違いなく美少女だ。
肌は白いが白人ほどではない。
黄色人種、日本人だろう。
服装は白地に紺のラインが入った
セーラー服。
ただ、肩に豪華な装飾がされていた。
「はじめまして。私はバギーニャ王国国防海軍
連合艦隊司令長官、暁風花と申します。
殿方のお名前をお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「えっと…新浪改です。」
俺としたことが、少し見とれてしまった。
無理もない。こんな美少女が目の前に
現れたら誰だって見とれるさ。
男子諸君ならわかるだろう?
って、海軍!!?海軍って言った!?
しかもバギーニャ!?そんな王国
存在したか?
俺の頭は大混乱。
だからこんな間抜けな質問をするしかなかった。
「あの、ここはどちらですか?」
すると、返ってきた答えがまたとんでもないものだった。
「バギーニャ王国海軍戦艦スヴェントヴィトですよ。」
戦艦スヴェントヴィト??
なんだその舌を噛みそうな戦艦は!?
俺の記憶にそんな戦艦が存在した歴史はない。
「今は西暦何年の何月何日何曜日何時何分何秒?地球が何回まわった時?スヴェントヴィトって何?
バギーニャ王国ってどこ??」
めちゃくちゃ早口で矢継ぎ早に質問してしまった…(泣)
絶対キモいやつって思われただろうな…
すると彼女は俺の予想とは裏腹に
口元を押さえて笑った。
その笑顔がまた可愛かった。
「ごめんなさい、あまりに早口だったから…。
混乱されてますよね。
軍機にあたらない範囲ならなんでもお答えしますよ。」
彼女の話によると、
バギーニャ王国とはカムチャッカ半島に
領土を持つ新興国家で、人口はおよそ1200万人。
ロシア革命時に弾圧された白系ロシア人たちに
よって建国された。
その後、多くの日本人が仕事を求めて移住し、
今は日本人が国民の半分を締めるらしい。
主な産業は漁業と牧畜、そして鉱産資源の輸出。
カムチャッカ半島には天然ガスと石油が
無尽蔵にとれる油田があり、
その輸出が国家財源の7割を締めているそうだ。
そしてこの国は枢軸国4番目の大国であり、
海軍国でもあった。
ちょっとまてよ?
枢軸国で石油が無尽蔵??
それって日本最強じゃん。
そもそもアメリカと戦争する必要ないやん。
なんだこの世界は…
つまりだ。俺はあのフェリー火災の時、
このパラレルワールドとも言うべき世界に
転移したわけだ。
まあ、二次創作や架空戦記、アニメにありがちな
展開だな。
そして俺が王国の危機を救って
ヒロインと結婚グヘヘヘ…
おっと失礼、よからぬ妄想が入ってしまい、申し訳ない。
そんなわけで異世界転生してしまった俺。
これからどんな生活が待ち受けているのだろうか…




