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7 後半

※本日2回目の更新です


団長視点です。

中庭に着くとアリスが男に抱きしめられていた。

無性に腹が立って、アリスとそいつを引き剥がした。見ればその男は以前、アリスに告白をしていた男だった。それがきっかけで俺は皆のいる食堂でアリスにキスをしてしまったのだが…。


またコイツかと思った。

たしかウェルとかいう名前の騎士見習いだ。おまけにアリスがウェルと付き合っているとかふざけたことを言い始める。そんな嘘すぐに分かった。お前は俺を騙せると思っているのか。


ウェルを問い詰めると『【まだ】付き合っていない』という返事が戻ってきて、さらに腹がたった。【まだ】とは何だ。【まだ】ということはこれから付き合う予定があるということか。んなもんねぇよ。お前とアリスが付き合うわけねぇだろ。アリスをお前になんて渡さねぇよ。アリスは俺のだ…………って、俺は何を考えているんだ。


ふと、テオの言葉が頭を過った。そして認めざるをえなくなった。俺はアリスが好きかもしれない。それも、かなり。


思えば最初に見たときから【クソ可愛い女】だとは思っていた。俺のもっとも苦手とするタイプの女だ。だから距離を置いて過ごしていた。

しかし、だんだんとアリスの仕事の出来なさにイライラしてきた。覚えは悪い、ミスは多い、行動がのろい、料理がまずい。どんくさい女だと呆れ果て、気が付けばとうとう自分から声をかけてアリスの行動を指摘していた。厳しく怒るようになっていた。そんな日々が続き、気が付けば俺のアリスへの苦手意識がなくなっていた。あいつとは普通に話をすることができる。二人で同じ空間にいても苦痛じゃない。アリスを女として見なくなったのか?いや、違う。俺がアリスを受け入れたからだ。アリスは他のどの女とも違う。アリスだから俺は普通でいられる。

そういえば、そういうのを運命の相手だと、テオが前に言っていた。


俺はアリスが好きだ。


ふと、近くに咲いている花に目がいった。俺の机の上にあったのと同じ赤色の花が風に吹かれて揺れている。チューリップという名前らしい。さっきルル嬢がこの花には【愛の告白】という意味があると言っていた。

俺の机の上にこの花を置いたのはアリスだ。アリスは知っていたのか?この花にそんな意味があることを。知っていて、俺の机に置いたのか?いや、あいつがそんな大胆な行動をとるわけがない。それ以前に、あいつが俺に愛の告白なんてするわけがない。


どちらかといえばきっと俺はアリスに嫌われている。当たり前だ。あんなにいつも厳しく怒鳴ってばかりいるのだから。おまけに2回も不意打ちでキスをしてしまっている。加えて今回のルル嬢とのキスだ。アリスにとって俺は最低な男だ。


アリスを好きだと自覚しても、アリスが俺を受け入れてくれないだろう。


今まで女から告白をされた経験ばかりで自分から想いを告げたことなどなかった。それ以前に自分から惚れた女がいなかった。そんな俺がアリスのことを好きだと自覚しても、自分からどう想いを告げたらいい?

自覚したからといってこのまま言わなくてもいいのかもしれない。言わなくても、アリスはここのお手伝いとして俺のそばにいるのだから。お手伝いのあいつを俺は今までと変わらずに厳しく怒り続けていればいい。


だがしかし、と思い直す。今さっきのようにアリスが他の男から告白をされて抱きしめられている姿は見たくない。アリスは見た目はまぁ可愛い方だと思うし、団員たちからも好かれている。ここはアリス以外はみんな男だ。いつ誰かに取られてもおかしくはない。取られたとしても俺には何も言う権利がない。アリスを繋ぎとめる術が今の俺にはない……。


気が付くと、ウェルが俺に頭を下げてこの場を離れていった。俺はアリスの手を掴むと足早に歩き出していた。




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