少し、昔。
大人気の、アニメがあった。
途中で其の熱狂を失墜させる事無く、アニメは物語を閉じた。
異種族と人。
傍観――――――俯瞰していた、上位種。
主人公達は己の国を見事に取り戻した。
だが、其れは異種族の最高峰である闇姫を、他の上位種諸共に駆逐した訳では無く……闇姫が、異種族の絶対君主たる彼の存在が己の領分を人に向けて解放しただけに過ぎなかった。
世界は、闇姫の庭だ――――――――――――箱庭だ。
彼の繊手が丁寧に丁寧に手間暇かけてきた結果が世界だった。
そうね
彼女は、思う。
人に、任せてもいいかもしれないわね
此れは、彼女の独白。
此の策を以て異種族から反感が出るのであれば、彼女は其れを否と云う気はまるでなかった。
むしろ。
むしろ、である。
彼女は、其の反感こそを望んでいた。
彼女が慈しみ育てた箱庭は、余りにも主体性に薄い……端的に云えば、甘ったれ共の巣窟となっていたので。
彼女の策は功を奏し、異種族が主であった彼女に対して不平を叫び始めた。
良い傾向だ、と微笑むと共に、運営を放棄したが故の余暇の中、彼女はふと……ふと、思った。
人の性とは、どの様なものかしら?
彼女は、疑問を放置したままにしない。
行動あるのみ、な性分は、嫋やかな外見に隠れて中々認知されないが、彼女の重大な構成要素ではあった。所謂、好奇心旺盛・知的欲求過多……と思われる性分が無ければ、己を害そうと徒党を組む者の前に素顔なぞ晒すまい。
そして、彼女は界を超えて探し探し……丁度良い世界を見つけた。
彼女が生息する世界と微妙な関係で繋がる其の世界。
争いも殺し合いもあるけれど、其れ等が希薄な地域を選べる世界。
彼女は定め、其の世界に降り立った。
実体は、あってないようなもの。
彼女は其の世界で馴染める様な己の設定を定めていく。
住宅街に一軒家。
通う高校は面倒な事が起きない様に同性の集う場所へ。
周囲の生き物の記憶に手を加え、彼女は典型的な中流家庭を手に入れた……尤も、其処に彼女以外の生命体は存在しないのだが。居もしない両親が、周囲のご近所さんと交流している事実を構築した。
そして。
彼女は己の私室として作った部屋に入り、寝台に横たわると目を瞑る。
まるで眠る様な姿だが、彼女は睡眠など入用な存在ではない。
では
なにを
刹那、横たわる彼女の真上に紋が浮く。
花王紋――――――彼女の力を示す其れ。
其の紋様がゆるりと舞降り、姿を消せば……
「あ、予習しなくちゃ」
彼女其の儘の美貌でありながら、明らかに女子高校生と云われる生命体が其処に顕現したのだ……。
追ったのは――――――否、追えたのは、一握りの上位種だった……。




