時間軸が把握できない罠☆
発端は、よくあるネットでのやり取り。
此のアニメのコス人口流石の多さだけど異種族コスは少ないよね~
時々見るけど勘違い系か単なる合わせ目的だもんね
つかさあ 合わせ目的でもいいけど主人公サイドにやられてるって絵を撮りたいだけの為に異種族コスしてる奴ら○ね!
あー……愛は欲しいよね……
異種族は名前が出ないからね~……単なるやられ役扱いされがちだよね……
ムカつく!!! つか異種族好きは結構いるのに!!!
表で騒ぐのが主人公側ファンばっかりだからね~ ドージンもコスも
コスか……正直あんまり凄いなって思う人居ない
え? 有名レイヤーさん結構此のジャンルで活躍してるじゃない?
レイヤーさんが綺麗なだけで中の人的な再現率低い
あー……解かる気がする~ レイヤーさんが其のキャラの服着てるって感じだよね
時々本人降臨!? って思う人も見るけどなあ
まあそれでも主人公サイドは良いけど……異種族コスでレベル高い人って居る?
異種族単体レイヤーさん自体がな~ 少ないから……特に上位種は
待った!!! 上位種なら話は別!!!!!! 神レイヤーさん見た事ある! つか其の場で忠誠誓った!!!
誓うなよw でもそんなに似てたの?
マジ神だったよあの楽師様……!!! 人の忠誠はいらないって典雅に却下されたけどw
断られたのかwww
ちょっとまったあああ!!! 私も伯爵様みたお!!! 神レベルの伯爵様だお!!!
一回だけ見た事ある貴公子様マジ二次元!!!
知り合いじゃないけど、前見た女公爵様テラ女公爵様。
とおっきどき撮影会で見るメイド様、マジメイド様だってばよ!
知り合いの友達の従姉のツテで一回だけ撮影会に来て貰った剣士様の素晴らしさを語れと!!!
一度しか見た事無いけど暗殺者様のお姿が忘れられない!!! 何処にも画像うpされてないんだけど!!!
ずらずらと並んだ神レイヤー目撃談に、異種族ファンではないらしいアニメファンの一人がツチノコの発見報告かと書きこんだ瞬間、其の勢いは嵐の様に増した。
黙れ人間!!! えー! 神コスみたいお!
って此の目撃談纏めたら上位種網羅してるじゃまいか!!!
上位種神コス勢揃い……!!! 何其の二次元?!
まあ夢だよな……だって、其の神コス、皆一度しか見た事無いとかなんだろ?
知 り 合 い で す ら ね え よ w w w ……ちくしょう……ちくしょう……!!!
泣くなよ……
涙ふけよ……
あれだよな~ なんか特別な事でもない限り集まりそうにも無いしな~
あー イベント的な?
そうそう 此れは出なくちゃ的な
それなら
誰かが云った。
異種族限定で集まろうよ
其の書き込みに賛同の声が連なる。
イイネ!!!
撮影会って事?
やった! カメコで行きますw
でもさ? 神上位種コス様達は写真とか嫌かもよ? だって撮影会とか来てない訳でしょ
あー……顔出しNGって奴?
ありえるね……じゃなかったら、あんなにコストかかりそうな衣装作っといて一度しか参加しないとか有り得ないし
ネットで検索しても引っかからなかったお……神上位種様
コス抜けてるw それじゃあ二次元になっちゃうからwww
写真撮影OKな交流会ってのは? ほら、明治時代コスの人がドレスとか軍服着用者のみ参加OKな食事会するじゃない?
それだ!
それな!!!
それ! いいじゃん! 交流会にもなるし!
人集まる~?
参加したい!
会場は如何するの? 上位種の異種族コス考えたら変な会場じゃ合わないよ?
直ぐに出た疑問に、誰かが云った。
英国貴族の館をコンセプトにしたレストランあるけど
マジか?!
マジだ しかも格安で丸ごと借りれる事が確定
嘘つけよ
其処迄云うと嘘くさい
詐欺?
マジかー!?
でもほんとなららっきーか?
詐欺じゃないよ だって趣味で経営してるだけだし 俺がw
書き込みを見た瞬間、其の場の異種族信奉者達誰もが食いついた。いやまさかと訝る者も、其の後上げられたレストラン画像に目を剥き、住所を書き込まれる段に至っては最早不審などある訳が無く。
会費は
日時は
連絡先は
上限人数は
会費は当日?
先払いが良いな
当日お金の遣り取りって面倒じゃない?
じゃあ振り込みで良い?
其れが良いな
人数完全把握の飛び込みなし
何其の安心感
それなら神上位種レイヤーさんも来てくれるかも?!
雪崩込む様に決まっていく詳細。
じゃあ此の内容で告知サイト開いてコスサイトにも書き込むから
何時の間にか主催も決まり。
え! こんな素敵会場なら主人公チームコスだけど参加したい
一着は異種族コス持って行くんで別コス参加ダメですか?
カメコなんだけど写真撮りに行きたい
そんな問い合わせも殺到したが、主催はさらりと否を返す。
「|闇姫様の御心を煩わす輩は御引き取り下さい」
そんなメールの一文。其の向こうに――――――――――――きっと殺意溢れる素敵笑顔が在る。
会場のレストランはコンセプトに凝りまくった趣味の一品と云って良い様なモノだった。
ビルの中……最上階含む三階分を全て改造し、英国貴族の城館にある大広間や階段、広間に応接間を再現していた。内装に凝っただけ……と云う事は無く、働く人間も完全なる召使スタイルで従事しており礼儀作法も完璧。広い空間をゆったり使う経営方針の此のレストランは、ある程度の資産を持つ人間が洒落と云うかお遊びと云うか、そんな雰囲気で訪れるタイプの店であり、世間にはあまり知られていない。
故に。
此の撮影会で此のレストランの存在が明るみに出た時の衝撃はかなりのものだった。又、一度撮影会をやったのだから……とコスプレ関係やテレビ関係のオファーも降る様にあったが、レストラン側はけんもほろろに切り捨てた。即断でバッサリと断られ、ネットで悪評を喚きたてる輩も出たが、レストラン側は完全無視を決め込み、又、一般人が普通に客として店に行くには懐が心許ない事もあり…………撮影会開催迄には、此の撮影会だけが特別なのだと周知され、盛り上がりも収まった。
が、しかし。
非常識極まる輩が屯する趣味、であるとの認識が店側に出来上がってしまったのか、店側から急遽撮影会当日の入店方法は所謂業者口からとの通達があったと主催者を通じて参加者に緊急通知が送られて来た。当初の予定では解かり易い表通りを其の儘行けばよかったのに、裏口として指定された其処は些か解かり辛い道を通らねばならなくなり、待ち合わせの場所なども大幅に変更しなくてはいけない参加者も多かったが、嫌気を起こして交流会自体が潰れるのではと戦々恐々としていた参加者からすれば迷惑をかけた輩を蔑みこそすれ、店の対応に否やがある訳が無い。無事に開催に漕ぎつく事が出来た事に安堵し、参加者達は意気揚々と業務用エレベーターから会場であるレストランの入り口へ向かった。何処までも真っ白で滑らかな……だが、些か寂しい廊下を歩き、参加者は突き当りに現れたやや大きめに作られて入るものの簡素な硝子扉を押し開ける。――――――と、其処には。
「ようこそいらっしゃいました」
黒のお仕着せに身を包んだ完全なる召使スタイルの男女が並んで立っていた。
店のスタッフが其の儘交流会の運営スタッフも兼任すると知ってはいたものの、其の余りにも完璧な英国召使の様相は予想以上の衝撃を参加者達に与えていた。
「参加者の皆様に上位種様方よりの御言葉をお伝え致します」
驚く参加者に男女はさらさらと口上を述べる。
着替えの場所。
食事のスタイル。
出入りの方法。
写真撮影に関しての禁止条項。
「此れ等の事が守られない場合、即時対応させて戴きますのでご了承ください」
笑顔など浮かばない、其の完璧な召使の姿に、参加者はやや萎縮しつつも頷くのであった。
そして。
彼女達も又、団体に幾分か遅れて其の硝子扉を押し開ける事となる。
「ようこそ御出でくださいました」
出迎えの声掛けはさらりと流し、彼女は改めて隣の級友を見遣った。
「……持ちましょうか」
其の声に、だが少女は笑顔で大丈夫と告げる。
「大丈夫って……着替えの場所って、あそこでしょう? そんな荷物を持って居ては扉を潜れないと思うんだけれど」
彼女の視線の先には、やや大きくはあるが普通の扉があった。僅かではあるが漏れ聞こえる声からして、其処が更衣室に違いないだろうと目算をした彼女が級友を見れば、少女はさらっと笑って首を振る。
「あ~、あそこじゃないから大丈夫だよ~」
「え?」
戸惑う彼女に笑いかけ、少女は女召使に視線を投げた。
「何処ですか~?」
「此方になります」
一礼し、歩き始める女召使の後ろについて行く少女の姿に、彼女も慌てて……だが外見上は落ち着いた様子でついて行く。
部屋から漏れ出る喧騒が消える程の距離。
一度角を曲がり、現れた扉を示すと、女召使は一礼して其の場を辞す。
其の背を視線で見送る彼女へ、少女が宇賀神さんと声をかけた。
「こっちこっち~」
うふふと楽しそうに嬉しそうに笑いながら示した室内を見て、彼女は驚いた様に瞠目する。
広い部屋の中に在ったのは、仕切りにより作られた個室の羅列。デパートの試着室やコパートメントより広い其処は、入り口の厚手のカーテンを閉めれば完全なる個室となる造りだ。中に入れば、鏡台も化粧台も揃っており、かなりの重量が在る物を下げても大丈夫そうな真鍮のフックも存在していた。
まさかの個室対応……!!!
半数以上はもうカーテンが閉められており、人の気配がする。彼女は些か呆然と傍らの級友に目を向けた。
「此れが、普通なのかしら……?」
「そうでもないよ~? 普通は会議室とか広い部屋を更衣室にするかな~」
其の言葉に彼女は納得する様に軽く頷いた。が、其の流れの儘、彼女は僅かに首を傾げる。
「じゃあ、此処は別料金で?」
「あ、其れも違う~」
ぱたぱたと手を振り、少女は幼い顔立ちに似合いの笑みを浮かべて言葉を続けた。
「ほら~、神って呼ばれちゃうくらい有名な人が居るって云ったでしょ~? そう云う人達用なの~」
「神」
呟く声音にそうと頷き、少女はうふふと笑い声を上げる。
「きちんとね~盛装してから現れた方が良いんじゃないかって主催さんがね~。そっちの方が衝撃が在るだろうって~。其れに、着替えの最中で見世物になるのも嫌でしょお?」
見世物。
そう云われ、彼女は思考する。
先刻の、エレベーターホールでの他参加者達の盛り上がり方……あれを、着替えの最中も?
「確かに、嫌ね」
「でしょ~お?」
だから、と少女は手を叩いた。
「個室対応は有難いよね~!」
晴れやかに云い切られ、彼女は思わずそうねと頷く。……僅かに感じていた疑問も、押し流して。
誘導された個室に入れば、少女は手慣れた様子で荷解きを始める。先ずはドレスをフックに吊るし、皴のチェック。小道具も出し、テーブルに広げていく。メイク用品は化粧台に。てきぱきてきぱきと動く傍らで彼女に香茶のペットボトルを渡す事も忘れない。
「……手伝いましょうか?」
「だーいじょーおぶ~」
語尾にハートが見える様な口調で生き生きと返し、少女は楽しげに嬉しげに笑った。
「先に着替えちゃっていいかなあ?」
問われ、彼女は是と頷く。見るともなしに室内を見回し……ふと級友に視線を戻せば、もうドレスを身に纏っている。
「……着替えが速くはない?」
そんなにたっぷりと布を使った服なのに、と呟けば、ドレスの裾を払いながら少女は事も無げに笑った。
「此の服に慣れてるから~」
何でもない事の様に云う少女にそう云うものかと納得し、彼女は化粧台に向かう少女を見るともなしに見ている。――――――と、鏡越しに見える少女に、彼女は僅かな違和感を感じた。
極普通の、日本人女子な級友の筈だ。
極一般的な容姿の、少女だ。
だけど。
彼女は訝しむ。
何だか、印象が違う……?
よくよく見れば、少女が手にしているコットンに含まれているのはクレンジング剤らしい。彼女の眉根が小さく寄った。
「クレンジングを最初にするの?」
「うん~。余分なモノをね~落としてからメイクするんだ~」
笑顔で、少女は片目を閉じ――――――コットンで、瞼ごと睫毛を拭いた。
……え?
彼女は、目を瞠った。
少女の睫毛が、伸びたのだ。
鏡越しに見る少女の目元が、コットンで拭われる度に変化していく。
睫毛が、明らかに伸びた。そして、濃くなった。
目じりが、目元が変わった。明らかに目が大きく見える。
口元が、唇が、艶やかに色付いている。
鼻筋が、通った。
「………………え?」
コットンが幾度か変えられ、そして、捨てられて。
少女が手を止めれば、其処に居るのは如何見ても――――――昔、彼女に甲斐甲斐しく尽した、かの上位種の容貌で。
「あ~吃驚した~? 元々顔立ちが濃くてね~。中学校では派手な子達に目をつけられかけて大変だったからいつもは地味顔メイクしてるんだよ~」
楽しげに、楽しげに。
其れはもう楽しげにそう云って、少女は彼女の前で今度は化粧を始める。其の手際も驚く程良く、幾分もかからず少女は髪型も整え、身支度を終えた。
唖然とする彼女へ振り返り、少女は艶やかに笑う。
「さあ~宇賀神さん」
たっぷりとギャザーを寄せられ、花の様に広がる袖から伸びる滑らかな腕が彼女へ伸びた。
「お着替え、致しましょ~ぅ?」
其の声音は、懐かしささえ感じるもので。
彼女は些か困惑しながらもそうねと頷いて立ちあがった。
促される儘に衣類を脱いで闇色のドレスに袖を通す。懐かしさ溢れるデザインの其れは、彼女の為に誂えられた一品らしく、素晴らしく着心地が良い。級友の腕に内心感心していると、隣からほうと溜息を漏らす音がした。
「此の時点でもう、至高……!!!」
悶える様に呟く級友の少女に苦笑を浮かべ、彼女は次に着せられたボレロに腕を通す。細々とした小物を全てつけ終わると、少女は彼女を化粧台へと誘った。
「ああ~! でもほんと~に化粧の必要がないんだよね~!!! でもお化粧したい~!」
声音だけでじたばたしつつ、少女は簡単に要所にラインを刷き、筆を置いた。
「出来上がり~……!」
少女の声に、彼女は全身を見れる鏡の前に立つ。
其処に居たのは――――――――――――――――――完全無欠の、闇姫たる自分だった。
……此処迄昔そっくりって……生まれ変わった意味が無いよね……
なんだかもう、己の姿に心底呆れを感じ、彼女が乾いた笑みを口の端に浮かべた刹那。
「麗しき闇の御光臨――――――――――――!!!! 此の身朽ち果ててもお仕え致しますぅぅうううううううううう!!!!!!!!!」
突然の大絶叫。
虚しさも呆れも全て驚きで吹っ飛ばしてしまった彼女が驚きの儘に視線を向ければ、潤んだ眼に明らかな熱情を滾らせ、頬を紅潮させた級友の姿が在った。
「あ……」
明らかに昔よく見ていた其の様子に、彼女が嫌な予感で頬を引きつらせれば。
「貴ッ様ァア! 巫山戯るなァア!!!」
「退きや! 此の戯けが!!!」
「下品な……」
「汚らわしい雑音で麗しき闇に触れるなど万死に値しますよ」
「斬る」
「死ね」
雪崩れる様にカーテンの向こう側から現れた見目麗しい人人人。
余りにも既視感溢れる其の存在達。
「麗しき闇」
異口同音に呼び掛けられる声に含まれた甘い甘い蜜の様な響き。
ひくり、と彼女の口元が引きつる。
彼女を見る目は一人も違える事無く熱に潤んでいた。
此れって……?!
驚く彼女の前に、濃紺がふわりと舞い降りる。
「いや~、変態だよ~ぅ!」
きゃらりと笑って、彼女と一団の間に立つのは、級友の少女。
「何が変態だ!!!」
「勝手に押し入って来た莫迦男に発言権はありませ~ん」
其の遣り取りすら、彼女にとっては既視感に溢れていて。
……え? 此れは、如何云う事???
驚きすぎていっそ冷静になってしまった彼女の前で、煌びやかな一団は幸せそうに其の姿に見入るのだった。




