事実との関係
道中の話題をかよちゃんが独占していた。例えば、ずっと入院していれば健康診断はパスできるのかできないのかなど。何だか不謹慎。でも、入院を続ければ振込みができない。あ、ネットバンキング?とかをやっていれば大丈夫か。退院してくるかよちゃんはどんなかよちゃんなのだろうか。各々が思うかよちゃんの今後を勝手に語りながら時間をつぶした。
行きつけのカラオケ店についた頃にはあたりはすっかりうす暗くなっていた。時間も時間なので一時間だけ歌を歌った。私は私でかよちゃんからの電話に出ないといけないのでその後みんなとはご飯に行かずに一人家路についた。
家についた頃には既に八時前になっていた。雅也はママと一緒に既に晩御飯を食べていたみたいだったので私は一人ラップされていたお皿達をレンジへと運んだ。温めている間かよちゃんにメールすることにした。
「今からご飯食べるから、終わった後電話してもいい?」
そもそも病院の中で電話ってできるのだろうか。確か電波が医療機器に影響あるからなんとかってどこかで聞いたような。そうこう考えているうちにメールが返ってきた。
「病室では電話できないから、電話してもよくなったらメールをください。場所移動してから電話します」
なんだか改まった文章。気にせず私は食事と向き合うことにした。もう我慢なんかしなくていいんだから、今日はお腹いっぱい食べよう。手を合わせ心の中でいただきますとつぶやいて私は食事に手を付けた。
ブーンブーン。
先ほど送ったメールの返事はなしにかよちゃんから電話が来た。既に部屋着に着替えていた私はベッドの上で何故か正座をして電話を待っていた。
「もしもし、かよちゃん?遅くなってごめんね」
時刻は既に九時を回っていた。食べ過ぎてしまった私はリビングでテレビを見ている雅也の隣で休憩がてらにがっつりテレビを見ていてしまったので。しばらく沈黙があったのでかよちゃんが怒ってしまったのかと心配していたら思いがけない返答があった。
「かよの母です。夕方、病院であいましたよね」
ええええええ!お母さん!どうして!動揺を隠せないでいた。電話越しに伝わるかはわからないけど。
「かよは先ほど亡くなったの」
「そう……なのですか……」
高校生で死んでしまうなんて。まだまだこの先楽しい事もいっぱいあったのに。じんわりと目頭が熱くなるのを感じた。しかし、私に感傷に浸る隙をかよちゃんのお母さんは与えてくれなかった。
「かよね、最初は胃潰瘍って診断されていたの。でも、その治療をしても血圧は安定しないし、常時輸血もしていたの。何かがおかしいということでもう一度きちんと調べて貰ったら、身体中から血がでていたの。内臓という内臓が出血よ。
そんな時にあなた達がお見舞いに来てくれて、そしてあなたがメールを送ってくれた。私はこれだ!と確信したわ。ねぇ、教えて、メールにあった"体重を預ける"って何のこと?お願い、教えて!」
クラスメイトを失った私より何倍も何十倍も、きっと私の想像できる以上の苦しみを抱えているのだろう。下手な嘘をつき通せる自信がなく、私は知っていること全てを話した。かよちゃんのお母さんがちゃんと理解していたかはわからない。時々鼻を啜る音は聞こえていたので話は聞いていたと思う。
しかし、体重を預けて体中から出血?私は今のところ異変が無いけど、預けている体重が少ないから?もし私が大量に体重を預けたら、同じようになってしまうのだろうか。
考えすぎですよ、と最後には言ったものの疑っている私もいた。
胃潰瘍、友達が昔貫通ものの奴で病院担がれましたがほんと痛いらしいです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。