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動き出す衝動

「で、昨日のメールの話、詳しく聞かせて」


 昨夜香織から貰ったメールの話がしたくて私たちは再び昼休みに保健室に足を運んだ。


「百聞は一見にしかず、これよ」


 そう言い香織はスマートフォンの画面を私に見せた。モモンガストアのダイエットジャンルで一位を取ってるアプリがあの体重預かりサービスのアプリだったのだ。


「知ってるのは私と穂乃香だけだと思ってたんだけどね」


 残念そうな顔を浮かべ香織は言った。昨夜私が帰った後に穂乃香は匿名掲示板のまとめサイトを読んでいた時にこのアプリについての記載を見つけたらしい。お金を払えば体重が減らせるという神アプリがあると。探してみるとなんとランキング一位。全国規模で女子の力強い味方になっていた。

 私も早速アプリをダウンロードしてみた。既にウェブサイトで登録していたので簡単な認証を行うだけでアプリは起動した。


「サイトと違ってここは今まで預けた合計とかいつ預けたかとか延滞しているかとか色々わかりやすくて便利よ」


 昨日の今日で既にアプリを使いこなしている香織を少し尊敬した。私はどうもこういうのに慣れるのが遅い。それよりも驚くべきことは、このアプリは発売二日でこの順位まで上り詰めたということだ。いったいどれだけ既存ユーザーがいるのだ。ユーザー数が表示されるのか気になりスマートフォンのウェブブラウザを開きサイトにアクセスしたところ、思いっきりアプリの宣伝がされていた。


「つまりはアプリのダウンロード数がユーザーの数とほぼ一緒ということになるね」


 香織は私のスマートフォンの画面を見ながら言った。私が言うのもなんだが、どうして女子はこんなに努力をせずに痩せたいのだろうか。男子のように走ったり何かしら運動をすればすぐ痩せれるものの、ほとんど使わない"楽して痩せる"ダイエットグッズや"飲むだけで痩せる"ダイエットサプリを何故か買ってしまう。

 そんなことを考えているうちに香織は保健室奥にある長椅子で持参した弁当を広げ始めていた。


「早く食べないと昼休み終わっちゃうよ!」


 それもそうだ。聞かれたらまずいかなと思いかけていた鍵をあけに扉まで行くと外が騒がしいことに気が付いた。少し扉を開け廊下を見渡すと明らかに具合の悪そうな女生徒が一人騒ぎの中心になっていた。なんだ、病人か。静かだった保健室が騒がしくなることを懸念しつつ中に戻ろうとしたその瞬間、私は見てしまった、その女生徒が大量に血を吐きだして倒れこむところを。廊下には悲鳴が響き渡った。


「保健室の先生今いないよ!だれか職員室に!」


 私はそう言いながら小走りで倒れた女子の方へ向かった。


「俺職員室行ってくる!」


「誰か救急車電話しろ!」


 廊下内は騒然としていた。よく見ると、倒れこんでいる女生徒は同じクラスのかよちゃんだった。いや、かよちゃんにとても似ている人。かよちゃんは男女共に友達が多くとてもノリのいいクラスのムードメーカーのような人だ。今目の前に倒れているかよちゃんのような人は本当にかよちゃんなのか。笑顔しか見たことないので今の苦痛に満ちた表情がまるで別人のように見えているだけなのか。そうこう考えているうちに男性教師が三人廊下を走ってきた。「おまえら教室にもどれ!」と叫びながらかよちゃんを担ぎ上げ保健室へと運んで行った。勿論香織は追い出さた。


「なになに?なんかあったの?かよちゃん血まみれだよ?」


 やっぱりかよちゃんだったのか。見物していた生徒たちが教室に戻る中、廊下の隅にスマートフォンが落ちていることに気が付いた。おそらくかよちゃんが倒れた時に落としたものだろう。両親に連絡とるためにも必要になると思うし、届けようと思い近くに行った私は見覚えのある悪趣味な黒い画面に白い文字が目に入り思わず息をのんでしまった。


「ご利用ありがとうございました」

吐血で出る血ってどこかを切って出る血よりも黒っぽいらしいですね。見たことないですけど。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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