第三話「BEAR攻略戦ー1」
ソフトは近くの武器屋で軽く装備を整えると、あの二人との合流地点に向かった。
町の人の話だと付近で爆発事故が起きたらしい。スナイパーの賞金稼ぎがバイク乗りの殺し屋を倒そうとしてお互いに相討ちしたそうだ。
ただ、現場に落ちていたのは普通の拳銃の弾とマグナム用の大粒の弾。
被害者たちの武器と一致しないという謎がある。
「どうせクレイス達の仕業だろうな…」
ソフトは呟いた。
約束の場所には、30分前にも関わらず二人が待っていてくれていた。
「あぁ、受けてくれたんだ。ありが…」
ソフトはそこで硬直した。
二人はこともなげに銃の手入れをしているが、その足元は血の海になっていて、顔の原型をとどめていない死体が三体、そこに落ちていたからである。
「あ、ソフト!」
レイノアがこちらに気づく。
「れ、レイノアちゃん…これなに?」恐る恐る死体に指を向けてソフトは言う。
「あぁ、ちょっとうるさかったから…」
「うるさいだけで殺されるなら、俺って結構やばくね?」ソフトは苦笑する。
「レイノア、ちゃんと説明してやれ」ドラム缶の上に腰かけたクレイスが言った。
「わかった。実はね…」
★
いつの間にか居眠りしてたようだ。
私はクレイスに言われて合流地点に向かっていて、着いたからドラム缶の上に座って待ってたら、なんだか日も沈んで…
「やぁ、お目覚めかな?お嬢さん?」
目の前に酒臭い変なお兄さんがいた。
「…なに?」私は怪訝そうな目を向ける
「ここさ、俺らの縄張りなんだけどさ…」「待て待て、ガキにゃ分からねえよ」
見たところ数は三人。
クレイスじゃないから、相手が取り出すまで武器の種類がわからない。
…まずは様子を見て…
「なぁなぁ!お兄さん達良い場所知ってるの!一緒に行こうぜ!」
突然二人目が私の手を掴む。
「離して!」私は手を振り払った。
二人目の男は目を丸くする。
「こいつ…意外に力あるぜ…?」
「あぁ?面倒くせぇなぁ…」
恐らくリーダー格の男だろう、始めに声をかけてきた男が懐から刃渡り30cm位のナイフを取り出した。
「脚の裏斬っとこうぜ、良い子になる。へへへへ…」
男がナイフを振り上げた。
はい、正当防衛成立!
ダダダダダ…!
レイノアはアサルトを取り出すと、盛大に十秒程乱射した。
新しい弾帯をすぐに武器ケースから取りだし、アサルトにセットする。
手慣れた手つきでそれを終わらせると、
レイノアは三人に顔を向けた。
「くっさ…」
辺りに血と火薬の臭いが立ち込める。
三人は既に事切れていた。
「…何をしている」
少し離れた路地からクレイスがこちらを怪訝そうに見つめていた。
「うるさかったから」
私は普通に答える。
「そうか…」クレイスは軽く溜め息をつくと、「心配した俺が馬鹿だった…」
と呟いた。
「あれ、…どうしたのクレイス!?」
見るとクレイスの黒いコートのあちこちにまだ乾いていない血の跡がある。
「俺の血じゃない…安心しろ。手配書が回っていてな…多分この町の賞金稼ぎを皆倒してきた…」
「え…じゃあ武器は…?弾が無かったら今夜の仕事が出来ないよ…?」
レイノアは頬をひくつかせながら言う。
「そのうちの一人が武器屋でな…どうせ主人もいないから皆拝借してきた」
「クレイス!ナイス!」
「うぁ…」レイノアの足元から声がした
…あら、しぶとい…
「レイノア、撃ち漏らしは良くないぞ」
「ごめんなさい、でも、何で…」
「見ろ、防刃ベストだ。」
「あぁ、なるほど…」
位置からして、この生きている三人目はちょうど一人目の後ろにいた。つまり、
跳弾が当たっただけなのだ。生身では跳弾でも貫通するアサルトの弾が、防御力のあるベストで食い込んだだけだという…
「運が良すぎだよ…」
「いや、放置しても出血多量で死ぬから、苦しむ分運が悪いだろう。」クレイスはリボルバーでそいつの頭を撃ち抜いた。
辺りに軽い水音が響く。
返り血がレイノアの顔に付いた。
「…返り血もしたたる良い女?」
レイノアはいたずらっぽく笑った。
「俺には狂気にまみれた悪魔に見える」
クレイスは右の銃に弾を込めた。
「それは殺し屋としては合格?」
「降格」「落とされたっ!?」
「本当に殺し屋なら、返り血を避けるぐらいじゃないと駄目だ。」
「わかった」レイノアは突然死体に更に銃弾を浴びせた。
「うぉっ!」当然返り血がコートにつく「お前…これでどうだ!」
銃声。
「まだまだ!」銃声…
★
「話だけ聞いていれば後半はビーチで遊ぶカップルだが…死体で遊ぶなぁ!」
ソフトはそう叫ぶと、汚い物を見る目で3つの肉塊をちらりと見る。
「とはいえてめぇら…幼女に手を出すとは…しかもレイノアちゃんみたいな超キュートでぬいぐるみチックなおにゃのこに」
「…レイノア、離れてろ」「うん」
ソフトはショットガンを取り出すと、死体に向けて三発ぶち込んだ。
「楽しかったか?楽しかったかえぇ!?てめぇらいい気なもんだなぁ!甘い汁吸いやがってよぉ!なめんなよクソガキが!」
「ソフト、ショットガンは流石に…」
銃声が大きなタイプだからあまりやるのは良くないことだ。
「うっせぇ!◆ウーマン・J・インパクト!」…そこで奥義を使うな。
ソフトの撃ち出したショットガンの散弾が、きれいに全弾死体の頭部にそれぞれ命中した。
ソフトはショットガンの散弾の着弾位置を長い経験から掴んでいるため、奥義として昇華させることが出来た。
「ふぅースッキリ。さて、詳しい作戦は現地に向かいながら話そうぜ」
ソフトは歩きながらリロードを済ませ、
クレイス達を先導して歩き始めた。
「作戦はシンプルだ。俺が25階の金庫室で資金確保、そのまま最上階の50階でヘリコプターを確保しとく」
「…一人で大丈夫か?」
「流石に一人で行かせる程クレイス達は酷くはないだろ?お前らは俺が資金確保してる間に雑魚を始末、そのまま最上階を目指して社長を殺っちまえ。バカは高いところが好きだからなぁ」
「…了解。ちなみに社長室が一階、もしくは検討違いの場所にあったらどうするんだ?…それと訂正、お前よりは馬鹿ではないと思うぞ」
「うぐぉ…そんときのために1階の中央と35階の柱に爆弾を置いといたぜ!…あの位置ならビルは完全に倒壊するな。…なんなら今押してやろうか?」
ソフトはクレイスの目の前でリモコンをちらつかせた。
「レイノア…」
「うわぁタンマタンマ!わかった!もうふざけないから許して!?」
ソフトが頭のバンダナにリモコンを差し入れると、リモコンは吸い込まれるように消えた。
ソフトは得意げにバンダナを指差して
「無限バ…」と何かを言いかけて、
「そうだ、屋上にヘリが無かったら?」
とクレイスに止められた。
「いや、あるはずだが、もしなかったら飛び降りるぜ?耐火シートを使いつつ下に爆発でも起こせば転落死はしないさ」
「無茶苦茶なことを…」
「ほら、二人とも…着いちゃったよ?」
レイノアが指を差した先には、見上げるほどの大きさのビルがあった。
小さなオレリーの街に似つかわしくない、一際高いビル。
確かにこの街に来る途中空でも肉に刺さったフォークのようによく見えた。
「時間だ…行けるか?」クレイスはソフトとレイノアを交互に見つめる。
「いいよ!」「暴れるぜえ!」
「わかった。またいつも通り、な。」
いつもの俺達の最初の作戦はただ一つ。
…正面突破だ…
★
《ゲーム要素が入ります…》
「クレイス!戦闘方法は覚えてる!?」
「いきなり何だ!」
「念のため!」レイノアはそう叫ぶと銃撃戦の段幕が比較的薄い場所に向かった。
「クレイスの武器、双短銃は同時に複数ターゲット射撃が可能な分、装弾数とダメージにややデメリットがあるの」
「あぁ、お前のアサルトは逆で、自分で銃口を動かさなければいけないから大変だろうな。その分威力と弾数は高いが」
「うん、双短銃の装弾数はどうにもならないけど、敵の弱点に命中させると大ダメージを狙える武器なんだよ!」
「人なら頭だな」「そうそう!」
その時目の前に二人の小銃を持った警備員が現れた。
「敵の攻撃はきちんと避けないと…」
「俺だけは能力[アテンション・ブースト]を使えるから楽だな。」
《システムメッセージ→以降sm》
ークレイスは弾やこちらを攻撃対象にしている物に自動で照準を合わせる能力があります。敵の弾も弾けますが、小銃の弾は多くリボルバーでは捌ききれないので、近くの遮蔽物に隠れることを推奨しますー
「その能力で私も守ってね」
《sm》ー仲間に回避の指示を出すのも、リーダーの務めですー
「あぁ、まずはあいつらを片付けよう」
レイノアは遮蔽物から飛び出て警備員に向けてアサルトを構えた。
それに気を取られている間にクレイスが一人ずつ頭を撃ち抜いていく。
「おういお前ら!頼むからこっちも手伝ってくれよ!」
ソフトは一度に5人に囲まれていた。
「クレイス!…ソフトが!」
「安心しろ、あいつは昔俺と組んでいたんだ。そんなに弱いやつじゃないさ。」
ソフトはクレイスが来ないのを見て少し顔をしかめたが、すぐに「あぁ、あれを見たいのか」と呟いた。
「今だ!撃て撃てぇ!」
「危ねっ!…見てなレイノアちゃん!◆マダム・S・アンブレラ!」
ソフトは宙に飛び上がると姿勢を反転させ、地面にショットガンを撃つ。
次の瞬間囲んでいた5人は瞬時に頭を撃ち抜かれその場に倒れた。
「ソフトはショットガンの着弾位置の予測に関しては天才だからな」
「やーやーそれほどでもー」
ソフトはかなり調子に乗っている…。
「一階フロアはこれで全滅?」
レイノアが話題を変えた。
「多分な。でもいつ警報がなるか…」
ブーッ!ブーッ!
「…鳴ったな」「うん」
「やッべぇ!暴れすぎたぁ!」
ソフトが頭を抱える。
「皆殺ればいいんじゃないのか?」
クレイスがソフトに提案する。
「いや、早めに上に上がろうぜ。これを使えりゃ時間稼ぎにはなるだろ」
ソフトはあちこちに金属片を投げた。
「今のうちにエレベーターへ行くぜ!」
「ソフト、あれは?」クレイスが訊く。
「あれは銃声を録音した小型スピーカーとスモークグレネードで、要は銃撃戦をまだしてますって敵を騙す作戦だな!」
「さすがソフト!逃げることならもうクレイスより知識あるね!」
「素直に喜べないなぁ…」
そうしているうちにエレベーターに三人は到着したのだが…乗り込めはしたが動かない。扉が閉まらないのだ。
「どした?クレイス。動かねぇのか」
「あぁ、ソフト、ちょっと配電盤を見に行ってくれないか?」
「あぁ、いいぜ」そしてソフトが降りた瞬間…扉が閉まった。「…あれ?」
エレベーターは上に上がっていく…。
「ちょっとクレイス…洒落になってねぇんだけど…?」
ドタドタと背後で大量の足音、そして…
「いたぞ!エレベーター前だ!」
「の…のわぁぁぁぁぁぁあ!!」
ソフトは半ばやけくそに敵の来た非常階段へ突撃していった…。
「クレイスのばっかやろおぉぉ!」
【続く】
あとがき
実際、ゲームの実況だとおもって読んでくれた方が良いと思います。
それほどまでに今回はやらかしてしまいました。クレイスの能力を説明するのにシステムメッセージを使うとか、そこまでは良かったんですが…
これもう小説じゃないよね!?
次回からは真面目に書いていきたい。
こうしたら良いなどの感想、ご意見ありましたらどうぞ活動報告や感想コメントにて受け付けております。
ではまた次回まで
さよーならー