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第二十四話「副都突破作戦ー肆」

「エネミー…なるほど、人為的に作り出された化け物というわけか。理解した」アレクトは頭を振りながら、だがさっぱり分からんといった顔でイーリスを見た。「で、君が悪魔…ふむふむ…」

「それで、この上にゃ俺様の仲間と少しの敵以外誰もいないが、どうするんだ?」

ロバートはアレクトに訊いてみた。

「ううむ…状況を確認してから、一度本国に帰って増援を改めて申請するか…君達はこれからどうするのかね?」

「動けるようにはなったし、イーリスと上に戻って仲間と合流しに行く」

ロバートはそう言うと近くに置いてあった盾に手をかけた。実はこれがロバートの武器ケースでもある。

盾の持ち手の奥の暗闇から、すらりと剣を引き出す。それを腰にさすと、イーリスに細長い物を投げて寄越した。

「薙刀があったぜ?使うかい?」

「すまんの」イーリスは薙刀を受けとると、両手で持って構えた。

「良かったら、我輩も同行しても良いだろうか。状況が分からない以上、あまり一人では動くのは危険かもしれん」

「分かった。じゃあよろしくな、アレクトさん」ロバートはアレクトと握手した。

「よろしく頼む。安心したまえ、我輩が同行する以上、君達の身は我輩が護ってみせる!それが騎士というものさ」

「ほほう、頼もしいのう」イーリスはアレクトが自分の武器を取り出すのを見て、ぎょっとした「な…なんじゃそれは…」

重厚な彼女の鎧など比ではなかった。

乗り物かと見間違うほどに巨大な多砲身型機関銃…ガトリング砲である。

砲身がガトリング砲の部分だけでなんと12本…こんな兵器は見たことがない。

しかも側面には巨大な赤い金属の盾が溶接されている。その盾からは太く大きな鉄板のような刀身が伸びていた。その刀身は先が斧のように変形している。

他にも下方に手榴弾のチェーンがついていたり、グレネードランチャーと思われるリボルバー砲身がついていたりと、まるで戦車のような姿である。

更にアレクトは棺のような大きさの弾倉を(これにもミサイル機能が着いているようだ…)背中に二つ背負った。

…よく見るとその手持ち戦車は二台置いてあった。片手で扱えるものか…?

「さぁ行こう!何が現れようと我輩とその仲間には指一本触れさせん!」

イーリスは改めて積み上げられたワニの死骸の方を見た。

…一騎当千とはまさにこのことじゃな…

「あいつの言ってたボートってこれのことかな」レイノアは港に停泊してあったボートの一台を銃身で叩きながら言った。

「鍵は…確かロバートさんが…」

フィアが辺りを見回しながら言った。

「お話によれば、合流ポイントはこちらで間違いないはずです。付近に生体反応はなし。…休憩を提案しますが?」

「はふぅー…」

フィアがすぐさま膝をついた。彼女は特に体力が無いのだ。

「ん…アーちゃんがそう言うなら、ここで少しおやつにしよっか。もうすぐでお昼時だし」レイノアもこれに賛成した。

「即席で申し訳なく思いますが、よろしければ紅茶でも如何ですか?」

「さすがその服は伊達じゃないねアーちゃん!私はケーキを持ってきたよ!」

「どこに入れてたんですかそれ…じゃあ私はクッキーを…へぅあ!?」

フィアが小さな紙皿に何かの粉をさらさらとあけた。…哀れな彼女の為に、あえて何かは言わないでおこう。

「だ、大丈夫だよフィアちゃん!このケーキにふりかければ…」

「なるほど!その発想は無かったです!それでは…」フィアはワクワクしながら紙皿の粉を…

その時一陣の風が吹き、フィアの粉を容赦なく吹き飛ばしていった…。「〜〜〜〜〜〜〜!?〜〜〜〜〜〜〜〜!!」あまりに高い音の、常人には聞こえないようなピッチでフィアが断末魔の悲鳴をあげた。

「ああっ!?」レイノアも開いた口が塞がらなくなる。

「…お悔やみ申し上げます」

アーフィーはフィアに一礼した。

「おしいひとを…なくしマシタ…」

フィアは放心状態だ。

あとで聞いた話、フィアは前日から仕込みをして一生懸命あのクッキーを皆には内緒で作っていたらしい…。

「グー!」リーノが叫んだ先には、瓦礫に埋もれて尻尾だが出ている黒い狼の姿があった。「早く…助けないと!」

「いや…待て」

クレイスはグーの尻尾を引っ張ろうとするリーノを手で制した。

「何で…!?何で止めるの!?」

引っ張るにしても尻尾は無いだろうと思いながらクレイスは彼女に言う。

「おそらく白い虎の方もここにいる。瓦礫が崩れるのを身を挺して止めているんだろう。だからすぐに来れなかったんだな」

「ど…どうすればいい?」

「上に乗っている瓦礫を撤去する必要があるが…くっ…人力では無理か」クレイスは黒い狼…グーの上に乗っている積み上げられたコンクリートを撤去しようとしたが、クレイスの力では持ち上がらない。

「テコを作ろう」リーノが提案した。「この剣を支点にする。クレイス、角材か鉄骨を探してきて!」

「分かった」クレイスは短くそう言うと、少し辺りを散策する。

…このパイプでは無理だな…この鉄骨は建物の下だ…

意外にクレイスの取れそうな位置に落ちている鉄骨はあまり無かった。

角材はあったが、爆撃で生じた火災により、ほぼ炭化していて使い物にならない。

クレイスはそんな中、とある考えを思い付いた。あまり戦闘以外では用いないため、その存在を忘れかかっていたのだ。

「…無かった…の?」

表情の暗いリーノが声をかけてきた。

「いや、瓦礫を撤去するなら…」クレイスは懐から紫色の光剣を取り出す。「これで瓦礫を小さく切り刻んでいけば…」

「光剣…!」リーノが目を丸くする「それ…一体どこで手に入れたの…?」

まるで初めて見るような声だ。

「前に帝国の貨物列車に乗り合わせた事があってな、その時に拝借した」

…だがリーノは確かスタン出力の光剣の一撃を受けたはず…いや、あれはただのスタンガンと勘違いしていたのか。

「悪い人…」

「ふん、俺に分かりやすい位置に置いておくからだ」

そう言いながらクレイスは光剣を使って瓦礫を撤去していった。

リーノが見守るなか、グーがまず瓦礫から這い出てきて、その少し下で生き埋めにされていたチャーを救助する。

「良かった…」二匹の頭を撫でながらリーノは安堵のため息をついた。

二匹はあちこちに怪我をしていたものの、着ていた鎧によって致命傷には至らなかったようだ。

リーノは二匹の手当てをすると、光剣をしまったクレイスに向き直った。

「ありがとう…貴方の言う通り、ボクは帝国に裏切られたのかもしれない。だから…もし良ければ、ひとつお願いがある」

「…」クレイスは頷いた。

「ボクはキミを追うためだけにここに来た訳じゃないんだ。…私には…妹がいる」

それは初耳だった。

「妹、か…」

「うん、リスティーノアって言う名前のシスターで…帝国に私が従い続けたのはあの子のため…でも、少し前あの子が帝国から逃亡したって知らせが入ったの…」

なるほど。妹の命を握ってリーノを動かしていた、か。

もしかしたら、妹が逃亡したのをきっかけにリーノが寝返ることを恐れ、暗殺しようとしていたのかも知れない。

「足取りは掴めているのか?」

クレイスはリーノに問いかける。

リーノは首を横に振った。

「妹は船に乗って隣国に行こうとしているって…船に乗る前に見つけたかったけど、一体どこにいるのか…」

「…分かった。俺の方でも探すのを手伝おう。まぁ当然一緒に来てもらうが…」

リーノはクレイスを見つめた。

「…引き受けてくれる…の?」

「ああ。女の子が泣いて頼んでいるんだ。断る理由は無いだろう。」

そう言われ慌ててリーノは頬の涙を腕で拭った。クレイスは照れ隠しにグーに手を伸ばし…腕を噛まれていた。

「ぐうお!?」

「グー!駄目だよ…その人は仲間!」

グーはクレイスから口を離すと、後ろを向いてビシビシと尻尾でクレイスをはたき始めた。クレイスは腕をさすりながら、リーノに向き直る。

「さて…まずは仲間と合流しなければな」クレイスは目を閉じた。「…まだお前を狙った部隊の残党がいるな…港は…ふむ、既に誰かがいるな」

「出発前にアイネス将軍からモーターボートの鍵を頂いた…貴方に預ける」

「お前もか…」クレイスはリーノから鍵を受け取った。

アイネスは一体何者なのだろうか。

リーノや俺達の国外逃亡を手伝ったりすることで、彼女に何のメリットがあると言うのだろう。

どうやらアイネスはただの狂人ではないようだ。今後どこかで会ったなら、少し話を聞いておいた方が良いかもしれない。

「ははは!一週間ぶりの外だ!」アレクトはそう叫ぶとマンホールから外に出た。そしてきょとんとして辺りを見回す。

アレクトが出た場所では、数人の黒づくめ男たちが話をしている最中らしかった。

「ま、マンホールから美女が出たぞ…」

「班長、どうする?見られたからには始末するか?」

「ちっ…ふっ…ん!?」

部隊の隊長らしき男が突然アレクトの首もとを掴んで引きずり出そうとしたが、何故か固定されているかのようにアレクトの体は動かない。

「こらこら待ちたまえ。手を貸して頂けるのはありがたいが、我輩を引っ張りあげるには少なくとも強化繊維のワイヤーと軍用ジープが必要だぞ?」そう言いながらアレクトは穴から這い出し、穴の中に声をかけた「おうい、私のスウィープデストロイヤーを引き上げてくれないかね?」

少しして、アレクトは穴から凶悪な兵器を二丁取り出した。

「こ、こいつ化け物かっ…!?」

確かに全身を赤い鎧で包みこんな兵器を構えたらそう見えるかもしれない…。

「化け物!?レディに向かってなんという事をいうのだね君はっ!?」

「容赦するな!なんかこいつヤバい!」

隊長の声にその場にいた数人がアレクトに襲いかかった。

「君たち!剣より論…そう小さい頃に習わなかったのかい?なんて野蛮な連中だ」

「うるせーゴリラ!さっさとくたばっちまえ!おりゃあ!」

パキン!

アレクトの鎧の胸板が、相手の刃物を真っ二つにした。

それに他のメンバーが足を止める。

皆無言だが、彼らの表情はただひとつの事を語っていた…。

…喧嘩を売る相手を間違えた…。と。

「…ゴリラ?」アレクトは二丁の兵器を左右に構えた。「ははぁ、確かに剣より論だな。これは言われると剣より痛い…分かった…君たちは死を選ぶと言うのだね。よかろう…悲しみよりも深いアケロンの底へとこの我輩が送り届けてくれよう」

瞬間、爆音と銃声と何人かの悲鳴が付近にこだました。

イーリスたちがはしごを登り終えると、アレクトが死体の山を築き上げていた所だった。…帝国のあの部隊の残党である。

「はっはっは!安心したまえ、峰打ちで打ち殺してやったわ」

アレクトは鬼神のごとき形相で死体のひとつを蹴飛ばした。

「何をしておるのじゃ…」

イーリスは帝国兵に手を合わせた。

「ま、まさかこやつらが合流対象だったというオチでは無いだろうな?」

「いや、そいつらは皆敵だ。さて、よく考えればボートの鍵って俺様が持ってたんだっけな…早く港に行かないと」ロバートはそう言うと剣を抜いて辺りを見回す。「…なあ、イーリス…港ってどっちだ」

「むう、確かに方角が分からんのう…とりあえず生体反応がある場所へ行くのが良いじゃろう。」

「我輩はこの近辺の地理には疎い…道案内はよろしく頼むよ」

アレクトはロバートに向かって言った。

【続く】


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