~荒野~其の三
「・・・使え・・・」
「?」
「死にたくなければ、私を使え。」
サファイアヘアーの女性から銃撃を受けて以来、無意識のうちに持ち続けていた一振りの日本刀から言葉が聞こえた時、彼女の銃から放たれた弾丸は、仁のこめかみに到達しようとしていた。
「冗談じゃない!」
刀から声が聞こえるという超常現象など意に介さず、仁は刀の柄に手をかけた。
その刹那、まだ刀身が抜かれていないにも関わらず、鞘から眩く蒼白い光がほとばしり、瞬く間に仁の周囲に満ち溢れた。
光に包まれた空間の時は凍てつき、仁の命を奪おうとする鉛の塊は、まさに、着弾しようとする直前で停止した。
一陣の風が流れ出した時を知らせたとき、仁は、女の足元まで間合いを詰め、喉元に剣先を突きつけていた。
「あんたの負けだ。」
仁がそう告げるのと、刀により両断された弾丸、弾き飛ばされた小銃が地面に落ちるのは同時だった。
静寂の中を、陽炎を揺らす砂嵐が吹き荒れる。
互いの視線が交錯し、武器を失った女の敗北が決定的なものだと仁が確信した時、女の両腕が一瞬マントの中に消え、次の瞬間には新たな武器が姿を現した。
女は後方に大きく跳躍しながら、両の手のハンドランチャーを連射する。
「きたねぇぞぉぉぉっ!」
地面で爆発するグレネードを避け、仁はまたしてもスクラップの影に隠れる羽目になった。
仁の嘆きは、スクラップの山にこだまして、やがて風の音にかき消される。
女は、グレネードを総て撃ち出したランチャーを投げ捨て、スクラップの山ごと仁を葬らんとすべく、二丁のハンドカノンの照準を合わせ、躊躇することなくトリガーを引いた。
ロケット弾はその軌道を二筋の排煙に残しながら、狙いを違うことなく目標にたどり着いた。
轟音が鳴り響き、スクラップの山が塵と化した。
しかし、風が砂塵を運び去ると、またすぐに静寂が訪れた。
うーん、仕様です。(笑)