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第一部 第一章 第七話 早くも出版オファー殺到の兆しなし!

 千葉シティの空の色は壊れたブラウン管だっただか何だかそんな色っぽい感じー。

 とりあえず復讐のその前に俺はこの壊れた体を何とかしにここへ来ねばならなかった。情報と金と最新技術と、新鮮な魚が集まるこのシティへ。


「おいちゃん、これ熱燗さ、ぬるいよ。頼むよお願いだから。んーとね、あと腸詰ちょうだい」バラックのひしめく薄暗い路地の突き当たりにある民家で密造酒とつまみを出している店。薄暗く十人ほどいる客ですでに満杯の、息苦しくなるような、生きているのが苦しくなるようなそんな懊悩が演歌のようにだだ漏れ淀む中で俺は明日の手術をおとなしく待つことしかできなかった。

 したら、

「ぬるいってねアンタ、他所もんがえらそうに上等望んでんじゃねえよ。そもそもアンタマッコリを熱燗でって、んなもんメニューにねーんだからよー! あーららら、甕からっぽんなっちゃってんじゃないの。アンタ何杯目だっけこれで」ビートたけしのようなおっさんに怒鳴り返されちゃった…。

 裏で立ち働いてた奥さんかな、シマシマのナース服でぎゅうぎゅう腸詰めしたら超セクシーな感じに出来上がりそうなぷっちり美人が背中を向けて俺の注文書きを勘定してる。

 今日はどれだけ飲んでも酔いがまわってこない。この街が抱えたストレスが余所者の俺を酔わせてくれるはずもない。

 雑多な街では雑多なトラブルと雑多な人間が、つまらない夢と間違ったデカい金を狙って息を殺している。その雑多な街には他所では処理しきれないヤバい情報とヤバい奴らが流れ着く。


 とりあえずクリニックへの予約はとった。昼前に適応やアレルギーの検査、神経組織の柔親も事前処置も済ませてある。あとはただ成功を願い祈りと神酒を捧げるだけだ。妖精フェラリオと医神アスクレピオスに敬意を表し、もう一杯オヤジに頼む。ダブルで。

「じょーだんじゃないよ! アンタさっきから食ってるもん、飲んでるもんダダもれじゃねーか! 下ビタンビタンになってっから困んだよ、そんなんじゃ。明日臭ってたまんねえからよ。もー帰ってよ!」

 そう言われて視線を落とすと、だらだらと確かに未消化の腸詰と乳白色の液体が俺の腹の断面からダダもれていた。


 みぞおちの下からがイソップの発したメガ粒子鉄砲によって断ち切られ、医療フォームの手当てでかろうじて止血されていたものの、安いスナックにあるようなスツールに、ポンと置かれたような俺の上半身からただただそれらがダダもれていた。


 バキューン!ズキューン!!ドキューソ!!!


 あらためて耳を離れないあのこだまが、鼻腔の奥に差し込むあの硝煙の臭いが、この恥辱プレイが、明日の手術の成功を後押ししてくれている。気がする。


 待ってろよイソップ、待ってろよ灰色熊、待ってろよグリフィ………。


(次回予告)

手術が無事成功した「名無し」は必須アミノ酸を求め漁協へ赴く。そこで偶然水揚げされたシロナガスクジラと出会うがそれは必然の出会いだった。運命に導かれるまま鯨打ちとなるべく「名無し」は北極海へ、拳闘の荒海へ乗り出すのだった。

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