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第一部 第二章 第惨話 生まれた~生まれた~笑顔が~生まれ~た~

 もう半日近く、この野っぱらであの男とにらみあっている。伸びっぱなしの硬そうな髪を束ねて、紺地に碇のマークを白く抜いた模様の、織りの荒そうな着古したものを一重に羽織っている。陽はもう東の山の稜線に沈もうとしている。

 片目を分けてたらした髪で隠し、明いている目の玉だけがやたらにでかく、腕と足にぼろ布を巻きつけた性根の読めそうにない男。青年未満だろう。どこか浮世が板についていない様子がある。


 今日のお昼はハンバーグだった。

 朝もやの向こうを透かして全く岸境のわからぬほど幅広のの河。たゆたゆと柔らかくゆるやかな河を下り、やがて流れの細くなった支流の砂洲にタライが乗り上げたのがようよう陽は中天にさしかかろうとする頃だった。

 セグウェイのタイヤで「ジャリ」と砂利と砂を踏み、葦を掻き分け岸に上がり土手の上に立ち見渡した風景は、どこまでも続くやせこけた、幼い日に目にしていた世界に似ている田畑。

 時間をさかのぼり、こんな姿になり、愛するものから遠く遠く離れ、眺めるこの風景が、ふいに俺の心を突き上げた。


「なぜ、あの時、生萌と一緒に殺してくれなかった」


 お腹がぐ~と泣いたので、とりあえずタライ船で流れ流されながら突いてきたナマズ、フナ、ハヤ、アユ、ハマサキ、ナガセを入れていた魚篭の中身をズダ袋に移し、口をキュッと締め土手に寝かせて、今日のお昼を食べることにした。

「今日のお昼はハンバーグだった。」と前述した以上、これから食べるのはハンバーグのはずである。はたして魚を入れた袋を土手に置き、タフネス大地に立つ!ウォーターはどうやってハンバーグを食べるというのだろう?


 「ウイーーーン!」


 俺はセグウェイのギアをトップに入れためらわず一直線に魚を入れた袋の上を通過した。そしてすかさず有効線分上にいるまま、セグウェイの左車輪軸を反転させ180度ターンした。そのまま始点に戻り再度切り返し、再度終点で切り返す。それを32回ほど行った……


 なんということでしょう。匠はこの時代にはまだ無かったミンチという加工を、自らのタイヤと袋に詰めた素材という創意で施したのです。


 ……火を起こし、成型した魚ハンバーグを手近にあったまっすぐの枝を折ってあつらえた串に刺し、じうじうとあぶる。見た目は串にさされたツクネという感じだろうか。獣肉ほどには油は出ないが、それでも魚脂がにじみ出し、たれたそれが火にかかり嗅粘膜を刺激する香りを漂わせる。


 ただ間違いだったのは串にした枝が夾竹桃だったことだった。それが歴史を変えてしまうほどのことになってしまうとは、気がつきませんでしたではすまなんだ、ということに気がついたのは、500年以上後の話……。


 そこへ、ガサ、ガサ、と葦をかきわけて顔を出したのは…………生萌だった。


「ん~、イイにおいがスルぞっ」


(次回予告)

お昼のハンバーグはどうなるのか? そして謎の男との対峙は? それより生萌がなぜここに!? 気になるのは俺のみ! 次回、どうなる?

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