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第76話 ギルドからの依頼品の購入

 悠真は三ツ谷精肉店を後にした。手元の注文書の控えには、肉の種類、重量、そして「保冷」という絶対条件が刻まれている。


 三ツ谷精肉店での熱い商談を終えた悠真は、心地よい緊張感を胸にトラックのハンドルを握っていた。次に向かうのは、恋人である美咲の父・和央かずおが営む「佐倉農業機械資材店」だ。


 町外れにあるその店は、かつて中古車ディーラーだった広々とした敷地を改装したもので、店先にはトラクターや耕運機が鎮座し、独特の土の匂いとオイルの香りが漂っている。


 「こんにちはー、和央さん。いらっしゃいますか?」

 悠真が声をかけると、奥の棚から美咲そっくりの垂れ目をした初老の男性、和央が顔を出した。

「おお、悠真じゃないか。美咲から聞いてたよ、パトロールの連絡係をやってるんだって? 偉いなぁ、感心だよ」

 和央は、娘の将来の伴侶になるかもしれないこの若者を、目を細めて迎えてくれた。


 悠真はまず、鞄から取り出した「カリ梅」の袋を差し出した。

「和央さん、これ。美咲から和央さんが食べたがっているって聞きまして」

 「おお! これだよこれ。仕事の合間の楽しみでねぇ。ありがとう!」

 和央は子供のように喜び、早速一粒口に放り込んだ。カリッ、という小気味よい音が店内に響く。

「うわっ、なんだこれ! 急に頭がスッキリしたと思ったら、すんげぇ酸っぱい! 口の中が爆発したみてぇだ!」

 和央の叫び声に、悠真は思わず苦笑した。


 コーヒーを入れてもらい一息ついたところで、悠真は本題を切り出した。

「さて、今日は仕事の相談なんです。ブルーシートの在庫、ありますか?」

「ブルーシートか。それなら売るほどあるよ(笑)。用途は?」

 悠真は「屋外での作業や、雨除けに使いたいんです。できるだけ丈夫なものを」と答えた。


 和央は倉庫の奥からいくつかの包みを持ってきた。

「それなら、この『#3000』という番手がお勧めだ。厚手で防水性も高い。それと……」

 和央は隣にあるシルバーのシートを指差した。

「今の時期は紫外線が強いから、『UVカット加工』が施されたシルバーのタイプがいいだろう。普通のブルーシートは日光でボロボロになるが、こっちは倍以上もつからな」

 その言葉に、悠真はハッとした。アルテミシアの三つの月が照らす太陽光がどれほど強力か、自分はまだ知らない。だが、過酷な環境であればあるほど、この「知恵」は武器になる。


 「それから……これくらいのリストを揃えたいんです」

 悠真がメモを差し出すと、和央は「随分と物騒なものが必要なんだな」と首を傾げながらも、プロの目利きで商品を選んでくれた。


 【和央さんの店での購入品】

 シルバーシート #3000:5個

 ブルーシート #2000:5個

 ポリ手袋 100枚入:3箱

 草刈り用ゴーグル:5個

 草刈り用保護メガネ:5個

 PEロープ 50m:1個

 厚手の革手袋:10個

 LEDヘッドライト:2個


 「このメモに書いておいた『防刃手袋』も気になってたんですが、和央さんどう思います?」

 悠真の問いに、和央は真剣な顔で答えた。


「防刃手袋は鋭い刃の滑りには強いが、突き刺しには弱い。用途を確認してくれよ。俺なら、こっちの厚手の革手袋を勧めるね。溶接や岩場を扱う連中が使うやつだ。こいつなら、トゲや岩の角からも手を守ってくれる」

 悠真はそのアドバイスに従い、革手袋を多めにカゴに入れた。

「助かりました、和央さん。また寄らせてもらいます」

「ああ、美咲をよろしくな! 今度また飲みに行こう」

 温かい見送りを受け、悠真のトラックの荷台は、青や銀色の「知恵の結晶」でいっぱいになった。

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