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『第三章スタート』【悲報】過疎ってる駅前シャッター商店街のおみやげ屋が異世界に転移したので、ご当地キティを売ってみたら大儲けした件  作者: 太陽唸り過ぎ-無-
第二章

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第52話 静かなる日常の異変

 自由都市エデンベルクに、その店ありと謳われるようになったのは、開店からわずか数ヶ月後のことだった。

 宿屋兼酒場『守護の炎(ガーディアン)』。そして併設された魔道具店『概念工房(ワークス)』。

 かつてはボロボロの空き家だった建物は、ドワーフの大工たちが腕を振るった重厚な木造建築へと生まれ変わり、夜な夜な多種多様な種族の笑い声が溢れている。


 新製品として玲奈が開発した『会話の腕輪(コミュニケーター)』は、今や遠征に向かう冒険者や、言葉の通じない他国から来た商人たちの必須アイテムとなっていた。玲奈の「概念」を固定する技術は、この世界の魔法体系とは一線を画す「利便性の極致」として、商業ギルドのディンケルも驚愕するほどの経済効果を生んでいた。


 玲奈は、すっかり「灰色の魔女」としての立ち振る舞いが板についていた。

隠遁の腕輪(コンセプト・リンク)』によって声を加工し、ミミリアがデザインした洗練されたローブを纏う彼女は、神秘的な美しさで街の象徴的存在となっていた。

 「レイナ、今日は新しいぬいぐるみを見に来たわよ」

 涼やかな声と共に現れたのは、エルフの少女リリエッタと、幼い外見に長老の威厳を宿したエレンミアだった。彼女たちは、かつて玲奈の術式を「エルフの秘術に似ている」と指摘したものの、今ではこの店の常連として、日本の「カワイイ」文化にすっかり魅了されている。


 「リリエッタ、また買うの? お部屋がア〇パ〇マンだらけになるわよ」

「いいじゃない、エレンミアだって、バイ〇ンマンのクッションを抱いて寝てるくせに!」

 そんな微笑ましいやり取りの裏で、宿屋の主である奏多は、厨房で料理人として包丁を振るっていた。

「玲奈、今日も客室は満室だ。だが……少し困ったことになったぞ」

 奏多が眉を潜める。


 彼が開発した名物料理『魔獣肉の和風煮込み』。醤油や出汁の概念を具現化した調味料で煮込んだその味は、エデンベルク中のグルメを唸らせているが、その根幹となる「新鮮な魔獣肉」の供給が、突如として途絶えたのだ。

ダンジョン産の魔物の肉は既に高騰しているので奏多の宿屋や酒場では使える値段ではなくなっている。

 「ナセル領の影響じゃない。純粋に、エデンベルク周辺の森から魔物の気配が消えたんだ」

 ゼノスが報告に加わる。

「不自然なほど静かだ。まるで、何か巨大な『穴』に吸い込まれたかのように、獲物がいない」

 経営者となった奏多は、今は店を離れることができない。玲奈は決断した。

「奏多さんはお店を守って。信頼できる仲間に狩猟をお願いしましょう」


 玲奈は、店に縁のある面々に声をかけた。


 ゼノス:狼獣人族の戦士。卓越した嗅覚による斥候(スカウター)を得意とする。短剣や弓矢の射撃を器用にこなす。

 ガルド:ドワーフの鍛冶師、冒険者としては重戦士。大斧を振るう。

 フィアネス:エルフの精霊魔法使い。炎の魔法と治癒魔法を操る。

 リリエッタ:エルフの魔道弓師。長距離からの精密射撃と風の魔術による柵的を得意とする。


 「名物料理の食材確保か。面白い、たまには腕を鳴らさないとな」

 ガルドが斧を担ぎ、フィアネスが静かに頷く。

「私もあの煮込み料理は気に入っている。食材が尽きるのは忍びない」


 四人はエデンベルクの北方に広がる、普段は魔獣の巣窟であるはずの『霧降の深森』へと足を踏み入れた。

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