もやもや3
告白の失敗から数日が経った。
「切り替えなきゃ」――そう自分に言い聞かせてみる。
けれど、教室で彼女の笑い声が響くたびに、胸の奥がチクリと痛んだ。
その笑い声はまるで針みたいで、どんなに顔では平気そうにしていても、心の奥には刺さりっぱなしだった。
俺はその気持ちをごまかすように、わざと窓の外ばかり眺めていた。
風に揺れる木の葉や、遠くを歩く人を見つめるふりをしながら、「俺は別に気にしてない」って演じる。
だけど、耳は勝手に彼女の声を拾ってしまう。笑い声が近づいてきたりすると、心臓が勝手に跳ねる。
そんな俺の肩を、ドンッ!と叩くやつがいた。
「おい、いつまで落ち込んでんだよ」
振り向くと、親友のケンジがニヤニヤしながら立っていた。
「別に……落ち込んでねぇし」
わざとそっけなく言うけど、声が少し上ずってしまう。
ケンジは俺の顔をじろじろ見て、わざと大げさに言った。
「顔に書いてあるっつーの! “俺、失恋しました~”ってな!」
その調子で大げさに手で顔の輪郭をなぞるから、思わず笑ってしまった。
「……バカじゃね!」
口から出たのは小さな言葉。でも、その瞬間、胸の奥の重たい痛みがほんの少し軽くなった気がした。
ケンジのバカみたいな笑顔が、張り詰めた心をふっと緩めてくれたのだ。
剣道部の稽古は相変わらず厳しい。
学校では先生にしごかれ、家に帰れば父さんや母さんから「攻めてから打て」「気迫が足りない」と容赦なくダメ出しが飛んでくる。
剣道一家に生まれた宿命みたいなものだと、わかってはいる。
でも正直なところ、心の奥には別の気持ちもある。
「女の子にモテたいから強くなってる」
そんな浅はかな理由を自覚してしまうと、どこか罪悪感が胸をかすめる。
先生はいつも「剣道は心だ!」と言う。でも俺の“心”の大半は、どうしようもなく女の子のことでいっぱいなんだ。
けれど、不思議なことに試合になるとすべてが変わる。
竹刀を握った瞬間、余計な悩みや不安は霧みたいに消えて、ただ目の前の相手しか見えなくなる。




