表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

もやもや3

 告白の失敗から数日が経った。

 「切り替えなきゃ」――そう自分に言い聞かせてみる。


 けれど、教室で彼女の笑い声が響くたびに、胸の奥がチクリと痛んだ。 

 その笑い声はまるで針みたいで、どんなに顔では平気そうにしていても、心の奥には刺さりっぱなしだった。

 俺はその気持ちをごまかすように、わざと窓の外ばかり眺めていた。


 風に揺れる木の葉や、遠くを歩く人を見つめるふりをしながら、「俺は別に気にしてない」って演じる。

 だけど、耳は勝手に彼女の声を拾ってしまう。笑い声が近づいてきたりすると、心臓が勝手に跳ねる。


 そんな俺の肩を、ドンッ!と叩くやつがいた。

 「おい、いつまで落ち込んでんだよ」

 振り向くと、親友のケンジがニヤニヤしながら立っていた。


 「別に……落ち込んでねぇし」

 わざとそっけなく言うけど、声が少し上ずってしまう。


 ケンジは俺の顔をじろじろ見て、わざと大げさに言った。

 「顔に書いてあるっつーの! “俺、失恋しました~”ってな!」

 その調子で大げさに手で顔の輪郭をなぞるから、思わず笑ってしまった。


 「……バカじゃね!」

 口から出たのは小さな言葉。でも、その瞬間、胸の奥の重たい痛みがほんの少し軽くなった気がした。  

 ケンジのバカみたいな笑顔が、張り詰めた心をふっと緩めてくれたのだ。


 剣道部の稽古は相変わらず厳しい。

 学校では先生にしごかれ、家に帰れば父さんや母さんから「攻めてから打て」「気迫が足りない」と容赦なくダメ出しが飛んでくる。

 剣道一家に生まれた宿命みたいなものだと、わかってはいる。


 でも正直なところ、心の奥には別の気持ちもある。


  「女の子にモテたいから強くなってる」


 そんな浅はかな理由を自覚してしまうと、どこか罪悪感が胸をかすめる。

 先生はいつも「剣道は心だ!」と言う。でも俺の“心”の大半は、どうしようもなく女の子のことでいっぱいなんだ。


 けれど、不思議なことに試合になるとすべてが変わる。

 竹刀を握った瞬間、余計な悩みや不安は霧みたいに消えて、ただ目の前の相手しか見えなくなる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ