もやもや2
勉強は嫌いじゃない。
むしろ点数だけ見ればクラスの上位だ。でも最近ふと思う。
「なんで俺たち、因数分解なんて覚えなきゃいけないんだ?」
大人になったら本当に使うのか? 父さんも母さんも剣道の話ばかりで、仕事で因数分解なんて一度もしているところを見たことがない。
だったら、勉強する意味って一体何なんだろう。
友達に愚痴みたいに言ったことがある。
「なぁ……高校とか大学って、本当に行く意味あるのかな?」
すると、同じクラスのケンジが、鼻で笑って肩をすくめた。
「バカ、そりゃ行った方がいいに決まってんだろ。親だってそう言ってるし」
「でもさ……結局なんのため? 社会に出てから役に立つのか?」
「うーん……それは……知らん」
二人で「だよな」って笑ったけど、心のもやもやは全然消えなかった。大人たちは「勉強しろ」しか言わない。その先に何があるのか、誰もちゃんと説明してくれないのだ。
剣道をしていると、自然と目立つ。
試合で勝てば名前を呼ばれるし、女子が応援に来てくれることもある。
稽古中に視線を感じて振り返れば、体育館の隅で女の子たちがこそこそ話しながら俺を見ている。
「やば……見られてる……」
恥ずかしくて顔が熱くなるけど、竹刀を握る手には自然と力がこもる。正直、悪い気はしない。むしろちょっと得意な気分になる。
だけど、俺が本気で好きになる子に限って、振り向いてくれない。
勇気を振り絞って告白したこともある。でも返ってきたのはたった一言。
「ごめん、めんどくさいから」
その瞬間、胸に鋭い針を突き刺されたみたいに痛かった。
帰り道、夕焼けの空がやけに赤くて眩しくて、にじむ涙で景色がぼやけた。
「めんどくさい……って何だよ。俺の気持ちって、そんなもんなのかよ……」
夜、布団に潜っても、その言葉が何度も何度も頭の中で響く。
剣道で一本負けしたときより、ずっと悔しいし、情けない。
「俺、いったい何やってんだろ……」
そんな声が心の奥から漏れてきて、眠れない夜が続いた。




