潜んでるモノ
今日もまた学校が終わった。長かったなあ、と思う。高校2年生になってもやはり学校というのはつまらなかった。今週の月曜日から新学期が始まり、何かが変わったかと言うとクラスメートが変わったくらいであとは特に何も変化はなし。まあ強いて言うなら今まで以上にやる気が出なくなった。そんな1週間も明日で終わり。とにかく何かが変わらないかな、と思っていた。まあなんも変わらんだろうな、そう考えながら家に向かう途中。
なんだろ、あれ
少し先に宙を舞うビニール袋があった。動きが独特で面白い。次の瞬間だった。
ふわっと宙に浮くような感覚がした。でも今まで感じたことがないような、妙な感覚。何処かに引き寄せられた感覚がしたと思った途端、視界がぼやけて気づいたら地面に座っていた。いや座ったわけではなく倒れ込んだ?座り込んだ?とにかく立っていられなくなった。
何が起こったのだろうか、そう思い視線を動かすと人のようなものが目に映る。どうやらそいつも座り込んでいるようだ。もしかしたらぶつかったのか?ビニール袋に気を取られ横を見ていなかった、悪いことしたな、そう思って謝ろうとした。だが、そいつの顔を見た途端、俺は声が出なかった。なぜならそれは俺の顔だったから。
入れ替わ…り?
人にぶつかって中身が入れ替わる。それはよくある話だ。フィクションで。そんなことは非現実的だし、実際に起こることはないと思っていた。だけど今の状況を見る限りそうなのだろう。理由を考えても、解決には至らないし、そもそも何も分からないのでやめた。だとしたら俺はこれからどうすれば良いのか…。
「あの…大丈夫ですか…?」
ビクっとした。自分の顔をしたやつに自分の声で話しかけられると言うのはなんともいえないものだ。案外、自分の声は低い。
『え、あ、はい。一応…大丈夫ですけど…』
とりあえず、入れ替わってますよね?とかは言わずにしておいた。なんか嫌だったからだ。自分が発する声はまあまあ高い。
「ああ、よかったです。あのこれ…所謂、あれ、ですよね。その中身っていうか意識?が入れ替わる的な…」
『そうっぽいですよね…いや、ありえないと思ってたんっすけどね…』
相手もそう思っててくれてよかった。これからどうしよう、ほんとにわからない。
「あの、言いにくいんですけど、道路上で喋るのもなんですし、どっか移動しません?」
うわ、考えてなかった。近くにそんな店あったかな、と思ったけどコンビニの座れるところでいいかという結論に至った。
『コンビニ、近くにあるんでそこでとりあえず話します?確か座れるとこあったはずなんで。』
「あ、わかりました。すいません、私、道わからないので…」
『ああーすいません。案内っていうほどでは無いけどついてきてもらえれば』
やっぱ頭回ってねーな。いやフル回転してるはずなんだけど、多分状況が異常すぎてフル回転の「フル」が小さいんだと思う。何言ってんだろ。とりあえず、コンビニに向かいつつ、話しかけてみることにした。
『ほんと、なんでこんなことになったんすかね、意味不明ですよねw』
「ぶつかったことだけが原因じゃなさそうですよね、これ。ほんとわかりませんね」
会話続かない。これがダメなんだよなぁおれ。知ってるけど。
今更だけど、やっぱり女の子かに入れ替わったっぽいかな。今更すぎるけど。制服もスカートだし、さっき相手の一人称は「私」だったし、そうっぽい。でも今はあんまり関係はなくて、これから先どうするか、と言うこと、これが最優先だろう。変なことはまた後で考えればいい。
何も会話はなく、各々考えごとをしている(多分)内にコンビニに着いた。
『じゃあ、中入りますか。』
「はい」
俺はブラックコーヒーを買いたいなあ。相手は何を…そもそも名前聞かなくちゃ。
『すいません、名前って?』
「ああ、すいません、伝えてなかったですね。あまわらって言います。甘いの甘に野原の原で甘原です。」
『ありがとうございます、あ、僕も一応…鍵口です。』
「ああ…そっか」
『どうしました?』
「いや、その、漢字言わないんだって思ったけど、まあ言わなくてもわかるからかーって思ってて」
『え』
「ああ、すいません!変なこと言っちゃって」
『あ、そう言うことじゃなくて、全く同じこと考えたからびっくりしたって言うか』
どちらかと言うと、名前を言う前に「一応」って言ってしまったことの方が気に食わなかった。気まずい。
「ああ、やっぱ思っちゃいますよねw私もそう言うの気にするタイプなんで…」
『ああーそうなんすか、共通点あってよかったですw』
いやちょっと待て。これ今入れ替わってるんだった。コミュニケーション能力低すぎて頑張って喋ってた。なんかもう違和感なく接してたけど全然大丈夫じゃ無い状況なんだった。
『じゃあそろそろ買います?』
「あっ、はい。買いますか、、あっ!ごめんなさい今、私財布持ってなくて…」
『ああーーーーー、、、、ポケットに財布突っ込んでるんで、そっからお金出しといてください。そもそもコンビニ行こうとか言ったの僕ですし』
「え、いや、ほんとすいません…お詫びって言うのかわかりませんがそのコーヒーも買ってくるんで、待っててください」
『あーおっけーでーす』
そういえば、甘原さん、だっけか。なんも持ってないな。普通、バックくらい持ってるはずじゃ、、、
『おぁ?』
思わず声が出た。
いや、いや、え?いやーいや嘘だと思いたい。
いや確実に、これは確信していいと思うほどにそこにあった。非常に言いにくいが股間のあたりに違和感…が…。まあ、違和感って言っても今までの自分には付いてたけど。いや自分で言うのも恐ろしい。いや思っただけか。
いや本気で女の子と入れ替わったんだと思ってた。顔こそ見てないけど、いや流石に女の子の制服だったし、声もまあまあ高いし、一人称も私だったし、いやいや、ねぇ?でもまあ確かにバックとか荷物を持ってない時点でおかしいとは思うべきだったかも知れない。かも知れないがやっぱり入れ替わった…ばっかりだったし、冷静じゃなかったっていうか、その、、、
やめた。自分にそうやって言い訳するのはやめた。触れちゃいけない。こう言うのに文句つけたりしちゃいけないってお母さんが言ってたわ(?)。だからこれ以上詮索するのはやめておこうかなあ。気になるけど。
「買ってきましたー」
ビクっとした。得体の知れない恐怖のようなものを感じる。
目の前に映る俺の体の中に潜むモンスターに心底震えていた。
どうもこんにちは。初めて書いたのでどうしてもわかりにくい部分があるかと思いますが、趣味で書いてたので許してください。誤字脱字もあるかも。見てくれて嬉しいです。