表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【ハイファンタジー 西洋・中世】

不死には出来ないけれど

作者: 小雨川蛙

 

 ある旅人が偶然にも願いを叶えてくれる魔人に出会った。

「俺を不死にしてほしい」

 旅人がそう願うと魔人が頭を掻きながら答えた。

「恐れながら申し上げます。人でありたいならば、不死ではなく精々一万回の蘇りにすべきかと」

「一万回? では一万一回目には死ぬのか?」

「はい」

「それでは不死ではないではないか」

 旅人がそう言うと魔人は悩まし気に頭を捻っていた。

「お前、まさか本当は人を不死に出来ないんじゃないか?」

「いいえ。そう言うわけでは……」

「なら何故、俺の願いを叶えないんだ」

「それは……」

 そんな実に無駄な時間を繰り返した後、旅人は遂に諦めて言った。

「もういい。一万の蘇りで」

 すると魔人は心底安堵した様子で頷いた。

「かしこまりました」


 それから数では表されないほどの時間が経った。

 今、世界に生きているのは旅人だけだ。

 より正確に言うならば、9999回の蘇りをした旅人だ。

「ようやく終わる」

 ため息交じりに血だらけになったナイフを胸に当てながら旅人は呟く。

 孤独に耐えかねて彼はもう数千回も自殺をしているのだ。

 もしも、あの時本当に不死となっていたら、この行為さえも出来なかったと思うとぞっとする。

「あの世とやらに魔人はいるのか」

 もし居るのであれば必ず感謝の言葉を捧げよう。

 そう心に決めて、旅人は今、ようやく最後の命を捨てた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ