1.殺し屋
とある日、1人の黒づくめの青年が路地を走る。
誰かから逃げるように走る。
そのてには1つのメモリーチップが握られていた。
「見つけた。」
低い少女の声が静かな路地に響く。
その瞬間、青年の首から上が空を舞う。
首を切られたのだ。
切られた首の断面から大量の血が吹き出す。
少し経って血が収まると、先程の少女が死体を漁り始める。
「...あった。このメモリーチップは『新月』に送ろうっと。」
今漁ったのは『桜木 霊』。
殺し屋をやっている。
たまに依頼を受けてお金を貰っているが、大体は個人の意思で殺したい奴を殺している。
霊がこんなことをしているか。
それは、さっき口にしていた『新月』というのに関係がある。
これは霊が小さい頃の話。
とある夜、ふと目を覚ましてしまい、寝室からリビングに向かった。
親に寝れる方法を聞こうと思っていたのだ。
そしてリビングの扉に手をかけた時だった。
「そうね。霊は売り飛ばしましょう。」
「えっ...?」
話を聞けば聞くほど怖くなった。
親がニュースにもなる犯罪組織『リアンテ』の一員だったからだ。
霊は急いで逃げ出した。
今家の近くで助けは呼べない。
親の話の中で、近所の人は皆犯罪組織に入ってると分かったからだ。
「はぁっ...はぁっ...。」
霊は走った。
家の近くだと捕まるかもしれないから、ずっと遠くへと。
息切れしてでも、ずっと。
一応帰れるように道は覚えた。
だが、知らない場所についていたため、戻れるかは分からない。
だが、そもそも戻れたとして、居場所はないだろう。
「...どうすれば、いいの?」
途中からは走る事が出来なかった。
重い足取りで路地を歩く。
すると、目の前に苔むした1つの建物が見えた。
「人がいたら、助けてもらおうかな...?」
警察みたいなしっかりした人はいない。
それは分かっている。
けど、今はいつも見ている警察のとこには行けない。
なにせ、家から徒歩5分の位置だ。
戻ったら親に居場所がバレてしまう。
そのため、今はアウトローの人でも頼りたいのだ。
「すみ、ません...!」
「誰だっ!?」
建物の扉を少し開け、顔だけを覗き込んでそう言う。
そこには1人の青年がいて、声を張り上げた。
その人はいかにもマフィアのような見た目をしていて、その圧に幼い少女が耐えれるはずがなく、泣いてしまった。
「う"っ...ごめん、なさい...!」
「子供...?リア!!」
「はいはーい!ハルさんどうし...って、子供!?」
呼ばれて来た1人の青年が霊に近づく。
口元辺りをを隠していて、表情はよく分からなかった。
この人は優しそうだった。
「君、どうしてここに来ちゃったの?」
「えっと...お、親が犯罪組織に入っていて、売り飛ばされそうになって...。それで、逃げて来たんです。」
そう言うと、2人は目を丸くした。
「その組織の名前、分かるか?」
「た、確か...『リアンテ』だったはず...です。」
「「マジか...!?/嘘っ...!?」」
何か知っているようで、2人は話し始めた。
そして、少し経ったあと、目線を合わせて話し始めた。
「...俺等ならその組織を潰せる。...お前はどうしたい?」
「どうしたい...か、ですか?」
「あぁ。一様相手には親がいる。親がいなくなるのは、ツラい事だろう?」
「あんな奴...親じゃないです!!」
霊はそう声を張り上げた。
子供にしては、凄く大きな声だった。
「だから...お願いします!!」
頭を下げて、そう言う。
2人はホッとした顔をしていた。
「...分かった。俺は上に行ってくる。リア、その子は任せたぞ。」
「分かったよ。じゃあ、行こうか。」
霊はその人に連れられ、1つの部屋に来た。
そこでお菓子などを貰いながら、質問をしたりした。
そして、色々な事を知った。
この組織が『新月』という名で、犯罪組織を倒す組織だという事を。
あれから数日後、『リアンテ』は倒された。
もちろん親は死刑である。
霊は親戚が貰ってくれる事になった。
その時に霊は思った。
かっこいい、と。
それから霊は頑張って『新月』のようになろうと思った。
これが殺し屋になろうとしたきっかけである。
ただ、完全に上手くいっているわけではない。
今回みたいに逃してしまって、危なく殺すなんてことはよくある。
現在進行形で頑張って成長中だ。
「あっ、時間...。」
時計の針は学校の門が閉じる時間に近づいていると知らせてくれた。
途中まで建物の屋根を通って行こうかと考えていた時だった。
「...桜木?」
「っ、結崎先生...!?」
人を殺した様子を担任の『結崎 賢斗』先生に見られてしまったのだった。
ガチで終わりである。
「...そうか、桜木もこっち側か。」
「え...?」
その時聞こえた言葉は、霊を少しの間、放心状態にした。
結崎先生は、少し真面目な顔でこう言った。
「俺は『新月』の2代目ボスだ。」
「え、えぇ...!?」
憧れていた存在が、思った以上に近くにいたらしい。
霊はその事に驚きを隠せなかった。
「桜木、そいつは俺等が何度も逃した敵だ。そいつを殺せるという実力は、凄いと思う。だから...『新月』に、入らないか...?」
「...へ?」
思った言葉と違う言葉が来たので、腑抜けた声を出す。
その自分の声を聞いた霊はすぐにハッとして、頬を叩いた。
「さ、流石にそれは無理です!!私なんかじゃ...。だから、協力関係、それくらいで、お願いします!!」
「...分かった。じゃあ、一様試験を受けてもらう。」
「はい、望むところです!!」
そう言うと、結崎先生はボードと紙束をくれた。
その紙束は通っている学校の全生徒の名簿だった。
「この学校には『新月』のメンバーが隠れている。それが誰かというのを当てるのが試験だ。」
「この中からですか!?」
全生徒は700人。
とてもじゃないが、ここから探すのは骨が折れる。
「ヒント...ヒントください!!」
「...まぁ、流石に必要か。じゃあ、メモでもしておけ。」
霊はカバンの中からシャーペンとメモ帳を取り出した。
「高等部生徒に15人。高等部教師が俺除いて4人。中等部生徒が2人だ。」
「えっ、高等部だけじゃないんですか!?」
この学校は中高一貫。
名簿を確認すると、しっかり中等部もいた。
つまり、700人どころじゃない。
骨が折れるどころでは済まなそうだ。
「...やります、やってやりますよ!!いつまでですか!?」
「今日の18時までだ。職員室に俺はいる。...期待しているからな。」
「... はい!!」
まず学校に行かないと始まらない。
とにかく急いで向かうのだった。
※キャラの軽い設定について
桜木 霊
黒髪黒目で髪は腰までの長さ。
それを1つに結っている。
私服はほとんど動きやすいジャージ。
首が弱いため、ネック系は着ないしネックレスはつけない。
それと耳も弱いので、ピアスなどはもってのほかだ。
強さは普通に異常。
彼女が敵を逃してしまう理由は、隙が多いからである。
隙が無くなれば、裏社会でもトップを争うくらいになるだろう。
ハル
茶色髪でオールバック。
サングラスをかけているため普通は分からないが、目の色は茶色である。
服は真っ黒でしっかりした正装。
よそから見たら、マフィアのそれだ。
『新月』の1代目ボスで、本名は結崎 春斗。
賢斗の父である。
リア
灰色髪で男性だけど結構長め。
背中の真ん中くらいまである。
ギリ腰までないくらい。
口元を灰色の布で隠している。
服も灰色なので、全身灰色である。
『新月』のボス補佐で、本名は稲月 桜。
結崎 賢斗
黒髪で前髪は七三分け。
後ろ髪は肩までないくらい。
親と同じでサングラスを通常かけるが、学校ではあまりかけない。
担当教科は社会で、よく授業に遅れて来る。
そして、よく話が逸れる。
そのため、しっかり教えてくれないくせに、テストはクソムズい。
けど、ノリがいいため、結構人気だ。