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ババァ召喚  作者: にわ冬莉
第一章 汝、諦めることなかれ

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第二十七話 呪い

 狭いし、臭い。土臭い。生臭い。きつい。


 いくらでも出てきそうな文句を、しかし鈴子とゼンは必死に耐えていた。食材は喋ってはいけないのだ。


 ガタン、と荷馬車が揺れるたび痛む腰。一体どのくらいの時間、揺られただろう。大きめの揺れを最後に、道が平らになったのを感じた。着いたようだ。

 荷馬車が止まる。ガタゴトと、荷馬車の食材が運ばれる。そして鈴子の入った麻袋も、持ち上げられた。心の中でちょっとだけ、ダイエットしておけばよかったかしら、と思った鈴子である。


「大変お待たせいたしました」


 外から、声が掛かる。麻袋の荷が解かれ、やっと外に出られた。鈴子は痛む腰をさすりながら立ち上がった。


「あら、ここって」

 食材として運ばれたのだから、厨房なのである。しかし……狭い。


「ここはクルス皇太子のお住まいです。外は監視されておりますが、中の人間は皆、クルス様の忠実なる部下ですので、自由に動いていただいて問題ありません」

 アナビスがそう、説明を入れる。


 そして早々に、クルス皇太子と会うことになったのだ。




「いやね、私生臭くない?」

 自身の匂いをクンクン嗅ぎながら、鈴子。何故かゼンは果物の甘い香りがしている。いい男にぴったりの香りである。


 通されたのはクルスの自室。建物の外観はわからないが、王族が過ごすには狭いであろう間取りと、メイドの少なさに驚きを隠せない。建物は古く、あちこち痛んでいる。


「こちらへ」

 アナビスに促され、部屋に入る。ゼンがあからさまに顔をしかめるのが分かった。

「ゼンちゃん、どうかした?」

「ああ、こりゃひどいな」


 鈴子が部屋に足を踏み入れる。クルスは窓際の椅子に座ってこちらを見ていた。鈴子の姿を確認し、パッと明るい表情を見せる。


「よく来てくれました、聖女様」

 顔色はすこぶる悪く、体の線も細い。鈴子の半分くらいしかないんじゃないかというくらい、痩せていた。


「あらやだ、ちゃんとご飯食べてるっ? こんなに痩せちゃって、大丈夫なのっ?」

 知り合いの子にでも言うような口調で話しかけてしまう鈴子である。

「スズ、ちょっと待て」

 ゼンがさっと手を出し、鈴子を止める。そしてパチン、と指を鳴らした。

「これで少しは良くなった」

「なに?」


「呪いを、解いたのさ」


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