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ババァ召喚  作者: にわ冬莉
第一章 汝、諦めることなかれ

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第二十六話 アンダーカバー

「そのような危険な真似、させるわけにはいきませんぞ、鈴子殿!」

 フィンノが額に青筋を立て、怒鳴る。

「そうですぞ! 国境の様子を見る、という我が国王からの命からも外れております!」

 ガイアール軍近衛隊長リンドルもまた、反対のようだ。


 彼らの言わんとしていることはわかる。要するに、上からの指示がないのに勝手な真似は出来ない、ということだ。


 しかし、これはチャンスだと鈴子は考える。相手の懐に入ってこそ、真実に近付けるというもの。


「ゼンちゃん、彼の話に嘘偽りはある?」

 念のためゼンに訪ねると、ゼンは首を振った。

「いいや、全部真実だな」

 と言うことは、罠ではないと言うこと。

「なら、決まりね。行きましょうよ」

 花見にでも出掛けるノリで、鈴子。


「鈴子殿!」

 フィンノが止めに入る。

「だって、これってチャンスじゃないの。国王への謀反がうまくいけば、少なくとも大陸間の不穏な空気は排除出来るんじゃなくて?」

「それはそうかもしれませんが、」

 フィンノが渋る。鈴子は腰に手を当て、フィンノを見上げた。

「謀反だなんて言われると大事だけれど、今のままおかしな緊張状態が続くのも困るし、戦争になっちゃうのはもっと困るし、何とかしなきゃいけないのが現実でしょう?」

「それはそうですが」

「私とゼンちゃんだけなら、ミリールもガイアールも関与なしになるでしょう? 文句言われても私が勝手にやったことだ、って言い逃れ出来るじゃない。ね?」


 部外者だからこそ動ける。それは確かにそうかもしれない。フィンノは唸った。

「煮え切らねぇオッサンだな。スズが行くって言ってんだから、行くんだよ!」

 ゼンが口を挟む。

「……致し方ありません」

 肩を落とし、フィンノ。


「決まりね! そうと決まったら、どうやって潜り込むのっ? 兵隊に化ける? それとも夜中に忍び込む?」

 ワクワクな鈴子への返答は、しかしあまり楽しいものではなかった。


「お二人には、食材になっていただきます」


 地味な潜入方法だった。

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