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ババァ召喚  作者: にわ冬莉
第一章 汝、諦めることなかれ

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第二十五話 敵地への誘い

「鈴子殿、一体どういう…?」


 鈴子の後ろには、ゼンとフィンノを始め、ガイアール軍のリンドル以下六名も控えている。そして全員の頭に「?」が浮いていた。


「ああ、私が考えた推理なんだけどね、この方たちの中には預言者がいらして、私たちがここに来るってわかってたんじゃないか、って思ったの」

 そしてこの人たちは多分…、


「おっしゃる通りです、聖女様!」

 一団が、さらに深く頭≪こうべ≫を垂れた。

「だから、顔を上げてちょうだいな」



 鈴子たちはとりあえずその場に集まり、ユーリル一団の事情を聞くことになった。


「我々をここに導いた方は、正確には予言ではありません。が、時折、未来が視えるお力を備えておるのです」

 ユーリルの小隊を代表してアナビスが話を進める。

「聖女様に我が国を救っていただきたく。しかしそれは同時に謀反でもありますことを、先にお話し申し上げます」


 ザワ、とガイアール側がざわめいた。


「謀反、とな…」

 フィンノも険しい顔だ。

「皆様方はクルス皇太子のことはご存じで?」

「現国王の兄上ですな」

 フィンノが答える。

「そうです。ランス国王の兄であるクルス皇太子は、ある場所に幽閉されております。表向きは病気ということですが…、」

「実際は違うのね」

 鈴子が溜息交じりに言った。


「左様です。ランス国王は……先代の王がお亡くなりになってから変わってしまわれた。クルス様が病弱であるのは確かですが、それを利用し、王座を奪ったのです」

「そうなの。可哀想に…、」

 父親を亡くしただけではなく、弟まで失ったようなものだ。


「クルス様には予知夢を見る力がございます。幽閉される際、なぜ黙って言うことを聞くのかと訊ねたところ『今争えばいい結果を生まないからだ』と。『時が来るのを待つ』と」


 なるほど。その『時』が訪れたわけか。


「つきましては、聖女様をクルス様の元にお連れしたくここに参りました。すべてはクルス様の予知夢の通りでございます」


 本物の予言者がいたのだ。


 鈴子はくるりと振り返り、フィンノ以下その場にいる全員に笑顔で言った。

「ってことみたいなんで、行きましょうか」

 しかしそれを止めたのは他でもないアナビス本人。

「いいえ、来ていただくのは聖女様と、その精霊お二人だけです」


 鈴子とゼン、ご指名なのだった。


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