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弟君と呼ばれたい。  作者: 暗黒星雲
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第34話 そして合コンが始まる

 霧口氷河(きりぐちひょうが)が率いる大学生は四名いた。四名の部下と言った風であり、霧口を〝さん付け〟で呼んでいたし敬語も使っている。その男女四名がテキパキと動き、テーブルに弁当とオードブルを並べていく。その作業を横目で見ながら霧口が俺に話しかけて来た。


「君が竹内緋色君だね。よろしく」

「よろしくお願いします」

「君、最近噂になってるよ。あの、柊彩花(ひいらぎあやか)嬢と仲良しなんだって? 彼女は色んな男からデートに誘われたり告白されたりしてるんだけど、一切相手にしてないんだ」


 詳しいじゃないか。イベント系サークルの会長だけあって、地元の美少女に関する情報は把握してるって事か。


「自分はからかわれているだけです」

「そうかな? SNSに男性の写真を上げたりとか、柊嬢の方から交際の申し出があるなんて事は今までなかった。きっと本気なんだよ。羨ましいな」


 羨望の眼差しを向けられる。

 大学生でイケメンで、サークルのトップでそれなりにモテモテみたいな男に羨ましがられるとか信じられない。霧口氷河には何か裏があるとしか思えなかった。


「ところで美海姫ちゃん。僕の主催でソロコンサートしない? 自信がないならジョイントを企画するよ? 君が出演するなら大丈夫。5000人くらいは平気で集められるさ」


 いきなり話を振られ、美海さんはムスッと不機嫌そうな顔をする。


「ウチはコンサートなんかする気ないねん。ウザイから黙っといてや」

「美海姫ちゃんは冷たいなあ。あんなに歌が上手いのに、皆の前で披露しないのはもったいないよ」

「知らんがな」


 プイっと横を向く美海さんだった。


「いやいや、そのツンデレもいい塩梅(あんばい)だよね」

「ウチはツンデレやないで。好きな人にはデレデレで嫌な奴にはツンツンや。この先、言わんでもわかるやろ」


 美海さんはジロリと霧口氷河を睨みんだ。霧口氷河はその目線を無視してさらに続ける。


「そんな美海姫ちゃんは可愛いよ。アイドルでデビューさせたい位だよ」

「お前さんに言われてもキモイだけや。緋色君、行こう」


 俺の手を引きその場から立ち去ろうとする美海さんである。


「美海姫ちゃん、何処に行くの? もうすぐ合コン始まっちゃうよ」

「心配すな。連れションや」


 美海さんに手を引かれて大広間から出ていく。後ろで霧口氷河が何か言っているが、美海さんはまるっと無視していた。


「ああ、ムカツク。緋色君も奴には要注意やで」

「俺がですか」

「そうや。緋色君は会長さんと仲良しなんやろ? さっき、電話かかってきたしな」

「そうかも? 姉と一緒に彩花様の部屋に招かれた事もありますし」

「おお。それは大問題やな。その事は言いふらさんほうがええ」

「何かありますか」

「大ありや。あの霧口氷河はえげつない奴でな。恋のライバルはどんな手を使ってでも蹴落とすんや。せやけど、その女に飽きたらポイするクズやで」

「そこまでする人なんですか?」

「せやから霧口氷河はウチに絡んでくるんや」

「美海さんも彩花様と仲良しなんですか?」

「うん、そうや。学園で唯一、ウチが心を許せる人や。二人目が緋色君」

「あの人、彩花様を狙ってる?」

「恐らくな。会長さんを落とすためのネタを作るつもりやと思う。今夜は気いつけや」

「わかりました」


 気を付けろとは彩花様からも言われていた。俺は単純に飲酒不可だと思っていたが、どうやら違うらしい。


 俺たちは大広間の脇にあるトイレに連れだって入る。美海さんと一緒に男子トイレにである。個人宅としては立派なトイレで、男子の小用の便器は三つ並んでおり、様式便座の個室も二つあった。美海さんは当然個室に入った。


 その気がなかったので出すのに少し時間がかかったが、何とか小用を終え手を洗う。そして胸ポケットに入れていたICレコーダーが録音状態にある事を確認する。


 大広間の方では出席者が集まってきたようで、何やら賑やかになってきた。個室から出て来た美海さんと一緒に大広間へと戻った。


「早速ですが、席決めのくじを引いてください」


 ジージャンにホットパンツというラフな服装の女性に声をかけられた。胸には「上野佳うえのけい」の名札を付けている。


「高校生男子はこちら、女子はこちらですよ」


 くじを引く。青の4番だ。それをひらひらのフレアスカートをはいている女性、胸の名札には「川上小夜かわかみさやと書かれている女性かにくじを見せると名札を手渡された。しっかりと俺の名前が、「竹内緋色たけうちひいろ」と書かれている。


 席順は左側に高校生組、右側に大学生組となるように作った。男女が交互に並ぶように、正面にも異性が座るようになっていた。


 入り口側の前から江向吹雪(えむかいふぶき)辰巳藤次郎(たつみとうじろう)越ケ浜佳澄(こしがはまかすみ)、そして俺、竹内緋色(たけうちひいろ)河添菜々恵(こうぞえななえ)だ。

 向い側に辰巳清十郎(たつみせいじゅうろう)宮野坂藍(みやのざかあい)香川津美海(かがわずみみ)鶴江愛奈(つるえまな)となった。鶴江愛奈の隣には大学生の金谷太(かなやふとし)が座った。


 大学生の方は霧口氷河(きりぐちひょうが)川上小夜(かわかみさや)橋本郁郎(はしもといくろう)目代愛実(めしろえみ)沖原直人おきばらなおと。一番奥側には上野佳(うえのけい)大井武琉(おおいたける)中津江美月(なかつえみづき)相島陽士(あいしまようじ)青海明奈(おうみあきな)となった。もちろん、こんな人数の名前を一度に覚えられるわけがなく、川上小夜さんがその場で作成した席次が配られただけだ。ノートPCと小型のプリンターをあらかじめ準備していた手際の良さは感心する。


「皆さま、本日は桐沢(きりさわ)市の私立龍王学園と国立桐沢大学有志による合同コンパにご参加いただきありがとうございます」


 ウルトラフリー代表の霧口氷河の挨拶だ。


「本日は高校生と大学生の親睦を深め、将来への絆としたいと思います。地域の絆、学校での絆。それらは私たちが将来へ向けて羽ばたくための大切な資産となるでしょう。では皆さま、お飲み物を手に」


 俺は目の前にあったお茶のペットボトルを掴んでキャップを空ける。大学生連中は缶ビールや缶酎ハイを手にプルトップを引いた。


「乾杯!」


 霧口氷河の掛け声で、大学生連中は一気に手元の缶飲料を飲み干した。


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