第3話 親友と幼馴染
そこにいたのは向かいの家に住んでいる幼馴染の三人組だ。近所では佳乃家美人三姉妹として有名だった。もちろん学園でも。
長女の椿さんは長身で超グラマーな美女。白い肌と腰まである長い髪が印象深い。高校三年生だ。
次女の夏美は俺と同じ高校一年生。日に焼けた肌は日々テニスに打ち込んでいるからだ。姉の椿さんより身長は少し低いが、プロポーションは負けていない。髪はショートカットでかなり短くしている。
三女の翠ちゃんは一つ下で中学三年生。肩くらいまである髪を三つ編みにしている。黒縁眼鏡をかけていて地味な印象だが、美形であることに変わりはない。
家のリビングは一気にハーレムへと変貌した。
「待ってたよ。玲香」
「こんな近くに引っ越すなんて思ってもみなかったよ」
「お母さん再婚したんだよね」
「うん。緋色のお父さんとね。籍を入れるのは来週だって言ってたけど、もう来ちゃった。鍵も持ってるよ」
玲香姉さんがスカートのポケットをポンポンと叩くとチャラリと音がした。家の合い鍵だろう。
「緋色。良かったな。可愛いお姉さんが出来て」
「羨ましいです。ガサツな姉を持つと苦労するのです」
「ガサツな姉って誰の事かしら」
「いえ。椿姉さまではありません。夏美姉さまの事です」
「おい翠。オレの悪口言ってんじゃねえよ」
相変わらず賑やかな三姉妹だ。俺の家は父子家庭なので色々お世話になっている。世話好きの椿さんと、俺をからかうのが得意な夏美だ。翠ちゃんはちょっと大人しくてあまりはしゃがない。
「ははーん。お前、玲香さんに一目ぼれしたのか?」
「そんなんじゃないよ」
「オレたち美人姉妹だけじゃ満足してなかったもんな。緋色」
俺をいじり倒す才能があるのだろう。夏美の口は止まらない。
「夏美さん。その位にしてあげて」
うまいタイミングで椿さんが間に入ってくれた。そして俺を見ながら話し続ける。
「玲香は緋色君のお姉さんになった。緋色君は玲香の弟。これからは弟君と呼んでいいかな?」
その時、俺は超過熱してメルトダウン状態となった。脳は融解し心臓は爆発したのだと思う。俺の全身は強張って身動きが取れなくなってしまった。
「どうしたの? 弟君」
幼馴染で超絶美女の椿さんに弟君と呼ばれている。
こんな形で夢が叶うなんて思ってもみなかった。俺はうれしくて恥ずかしくて真っ赤になって俯いていた。そして何も言えず、唯々固まってしまったのだった。