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弟君と呼ばれたい。  作者: 暗黒星雲
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第15話 嵐の予感

「まだお弁当食べてないの? 美味しくなかった?」


 玲香姉さんが弁当箱を覗き込む。俺はそんなことはないと必死に首を振った。


「でさあ。みんなで何やってんの? 緋色をからかってたの?」

「ん? まあアレだ。話の流れでな。緋色はこの中では誰の胸元が好きなのかと、問うていたのだよ」

「ほほう……この三人だと……」


 玲香姉さんはもったいぶりながら三人の胸元を舐めるように見つめ、そしてもったいぶりながら話し始めた。


「この中だと彩花のCカップね。でも緋色はね。Aカップが大好きなんだ」


 玲香姉さんの一言に周囲がどよめいた。


「何だと? Aだと?」

「私、胸の事で初めて敗北を喫しました」

「私はデブだから期待してなかったけど、多分、抗重力値ね。この値が高い胸元が好きなんだよ。緋色は」


 彩花様、椿さん、藍が相次いで話す。


「という事は?」

「弟君が好きなのは?」

「お姉さんのAカップね。間違いない」


 藍の一言で三人の視線が玲香姉さんの貧相な胸元に集中する。断っておくが、玲香姉さんはAカップだがちゃんと胸はある。こじんまりとしているが、しっかりとしたお椀型の胸だ。俺の観察眼は正確なはず。


「えへん。緋色は私の胸が大好きなんだって。昨夜も真っ赤になっちゃってさあ」

「玲香。何をしたんだ?」

「えへへ。お風呂上りにちょっとね。セクシーポーズで詰め寄ったんだ。もちろん、ノーブラでね。そしたらさあ。緋色ったら本当にドギマギしててさ」

「うん。それで?」


 昨夜の事を楽しそうに話している玲香姉さんに、かぶりついて話を聞いているのは彩花様だ。そして、藍も椿さんも興味津々って感じで玲香姉さんに注目している。とりあえず俺は、この隙に弁当を平らげてしまおうと決めた。ただひたすら、黙々と弁当を食べる。


「彩花の胸が好きか。椿姫の胸が好きか。どっちがいいんだって聞いても緋色は必死に否定するんだよ。首を振ってね」

「それで?」

「どうなったの?」

「じゃあ私の胸が好きなの? って聞いたらさ。真っ赤になって固まっちゃって返事もできなくなっちゃったんだよなあ。もうこれ、私が一番だって事だよね」


 自慢げに胸を張る玲香姉さんである。しかし、俺は必死に弁当を食っている。まあアレだ。玲香姉さんが作ってくれた弁当は結構な大盛りだったりする。


「なるほど。その可能性は十分にある話だ。しかしだ。こいつを見ろ」


 彩花様が指さしていたのは藍の爆乳だった。


「このボリューム感は椿以上だ。ぽっちゃり系最強と言って差し支えない。つまり、弟君がぽっちゃり系、いや、失礼な言い方だがデブ専である可能性はあるんじゃないのか」

「それはありませんよ、彩花様先輩。緋色が私を見る目つきって、何か郵便ポストでも見てるようなんです。もう、ものすごく素っ気ないんですよねえ。だから、私のようなぽっちゃり系は論外。私の見立てでは彩花様先輩への視線が一番熱いかなあ? あ、そうそう。椿姫先輩の妹さんの翠お嬢様への視線はちょっと別格かなと思っていました。それで緋色ってロリかなって思ってたんですけど、今、玲香お姉さま先輩の登場ではっきりしました。緋色が好きなのは、控えめなAカップ。玲香お姉さま先輩の胸、推定77センチのAカップ。この控えめな胸元が緋色のど真ん中です。間違いありません」


 自信満々で語る藍である。何故、俺の趣向をこうも正確に知っているのか疑問なのだが……。


「なるほどなるほど。椿という巨乳美少女が幼馴染として傍にいながら、弟君は椿に転ばなかった。それはつまり、弟君が貧乳趣味だったって事だな」

「そうだと思います。ね、緋色?」


 話を振るんじゃない。何て答えていいか分からないじゃないか。


 俺がほとほと困り果てていた丁度その時、椿さんのスマホが鳴った。着信の電子音だが、曲はドラゴンクエストのOPだった。


「お母さん、どうしたの?」


 電話をかけてきたのは椿さんの母、紀子叔母さんのようだ。


「ええ? 緋色のお父さんとお母さんが?」

「そうなの? 突然ね」


 そう言えば、俺の両親は今日の午後から新婚旅行に行くと言っていたな。その事を佳乃家に伝えたに違いない。


「うん、わかった。弟君の事は任せて」

「えーっと、今夜は竹内家に泊まりに行っていいかな? うん。玲香と女子会するんだ」

「うん。大丈夫。夕食とか朝食は任せて」

「え? 緋色君のお父さん? いつもお世話になっています」

「はい。お任せください。あっお母さん? ありがとね。じゃあね」


 スマホをタッチしてから椿さんがにんやりと笑った。


「ねえ弟君。今夜、お邪魔してもいいでしょ。さっき、ウチの母からもOKもらったし、緋色のお父さんにもね、お願いしますって言われちゃった」

「は……い……」


 これはラッキーなのかもしれない。玲香姉さんとの二人っきりの夜は回避できる。しかし、玲香姉さんは急にむくれてしまった。


「まあまあ。落ち着け玲香。私も行くから」

「私もお泊りに行っていいですか? 玲香姉さん先輩」


 ぷくーっと頬を膨らませた玲香姉さんだったが、渋い表情のまま頷いていた。


「し……仕方がないわね」


 彩花様は玲香姉さんを眺めながらクスクスと笑っている。


「まあアレだ。早急に例の〝学園フェミ協会〟への対応を話し合う必要がある。色々餌に食らいついて来てるから、今夜あたり楽しめそうだよ」

「え? それってツブヤイターのアレの事ですか?」

「そうだ。んんん? そういえば、お昼にその件について説明するという約束だったな。時間がないから夜に詳しく説明するよ」


 そういえばそうだった。

 例のツブヤイターの投稿。俺が彩花様を露骨にリスペクトした投稿に、彩花様自身が「変態!」とコメントして炎上しているらしいのだが、その件について彩花様が説明するからという理由で、昼休みに生徒会室へと集合したんだった。


「彩花が愛妻弁当がどうのこうのって言うからよ。でも、私は弟君のお弁当作りたいな」

「私も作りたいです」


 椿さんと藍の言葉に、怪訝な表情を隠さない玲香姉さんだった。今夜、俺の家で女子会が開催される。しかし、俺には何かが大荒れになる予感しかなかった。これは正直、恐ろしいと思う。

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