君のいなくなった城1(クラウド視点)
幼い頃、父に連れられてセレスティア王国に訪れたことがあった。
国の要人で会談すると言われて、子供の俺はまだそこに参加できないと幼心で分かっていたが、父を待っている間何をしてよう…そう思っていたのが周りにも伝わったらしく、セレスティア王国の姫君と一緒に遊んで父を待っていることになった。
姫はお転婆なところがあるらしく森に案内してくれ色んな野草を教えてくれたり、一緒に木の実を取ったり花の蜜を吸ったりと今思えば王族の子供らしくない遊びをしていた。
またお転婆ではあるが野草や木の実に詳しく、会話からも彼女の聡明さがにじみ出ていた。
姫との会話や森の探検は本当に楽しくて、このきらきらした時間がずっと続けば良いと思っていた。
そんな俺達の元に狂暴そうな魔物が現れた時は流石に驚いた。
俺自身剣術の指南も魔法の指南も受け始めていたが、まだ始めたばかりでとても実践で使えるものではなかった。
どうしようか…と考えていたら姫が俺の前に飛び出してきて「だめ!!!」と両手を魔獣の方にかざした。
すると彼女の髪の毛が赤茶色からプラチナブロンドに様変わりし、魔物を浄化したのだ。
これがセレスティア王国の王族の力か…!と驚いたし、少女に守ってもらったことが恥ずかしかった。
彼女の顔を見れば目も綺麗なエメラルドグリーンの色になっていて思わず見とれてしまった。
この姫は聡明で行動力があるだけでなく勇気もある立派なレディーだった。
思えばこれが俺の初恋だった。
彼女に相応しい男になりたいと願ったし俺も努力しようと決意した。
帰国する時、残念ながら彼女と会うことが出来なかった。
俺を危険な目を合わせたということで謹慎しているらしい。
俺を助けてくれたんだから許してほしいとセレスティア王国の国王に頼んだのだが彼が許すことはなかった。
最後に彼女と会うことができないのが本当につらかったし、父が何かを察した様に「その内会えるさ」と俺の肩を叩いて励ましてくれた。
そして帰国してから何年か過ぎた。
俺はあれから一度も彼女を忘れたことがなかった。
彼女に見合う男になりたいと勉学も剣術や馬術、魔法も様々頑張った。
少しずつではあるが政務を任される様になった。
その頃から近隣諸国の話も俺の耳に入ってくるようになった。
もちろん今でも好きな姫君のいる国の噂も…。
だが俺はセレスティア王国の噂を聞いた時愕然とした。
あの国には王子が1人、王女が2人いる。
王子は次期王太子に相応しくとても優秀な男だと言われていた。
そしてその末の妹にあたる王女も優秀であると言われていた。
だが問題はその2人の間にいる王女だ。
その王女は傲慢で劣等生と言われるほど成績も良くなく、兄妹に劣等感を感じているが兄にあたることが出来ない為妹を虐めているというのだ。
だがその妹は健気に凛と頑張っているという噂が流れてきた。
昔会った王女が姉の方なのか妹の方なのかは分からないが、色々物知りで聡明で魔物に立ち向かう気概もあり、その姿は凛としていた…何より幼かったにも関わらずセレスティア王国の王族の特異体質というべき覚醒が起こっている。最後に見た彼女は美しいプラチナブロンドの髪の毛を靡かせていた。
そのことをふまえれば彼女は優秀な妹の方であると普通に分かるだろう。
そして姉の方は既に婚約者がいるというではないか。
これ幸いと俺は妹の方に婚約を打診したのだ。
だがこの国にやってきたのは髪の毛が赤茶色い姉の方だった。
こう言うと覚醒した王女目的と捉えられかねないが、俺の好きな人は髪の毛がプラチナブロンドだった記憶があった為、この時点で俺の好きな人ではないと気づき絶望した。しかもよりによって俺の好きな人を苛め抜いた悪女。
女でなかったら殴り飛ばしていたかもしれない。父である陛下には俺の反応に対し苦言を呈されたが、殴らなかっただけ感謝してほしい。
それから俺は徹底的に女を無視した。
学院も一緒に行くこともなく、外の国から来たこの女をサポートする訳もなく、文字通り放置した。
街へ出かける時も友人達と一緒に行くことはあっても、女と行くこともなかったし誘うことももちろんしなかった。
一応形式ばった2人だけの茶会は参加したが俺は冷めた目で女を見るだけだった。
女の方は色々話しかけてきた。
そんな噂は嘘だと信じてほしいと訴えかけてきた時もあれば、俺が興味を持ちそうな話題を振ったりもしてきた。
その行動全てが嘘くさくて段々鬱陶しくなり返事すらしなくなった頃には、女は俺の機嫌を損なわないようにと喋らなくなっていった。
そんな俺だったが、そんな風に彼女を蔑ろにしたことを死ぬほど後悔する出来事があった。
それは悪魔族の襲撃を迎え撃っていた時だ。
一応普通の人とは違い身体能力も魔力も桁違いの龍神族だからそれなりに対処はできていた…が決定打をうつことはできないでいた。
悪魔族を浄化できるのは天使の力を持つセレスティア王国の王族か神官だけ。
長期戦も覚悟しつつ悪魔族の猛攻を受けていたのだが、俺としたことがちょっとした隙を作ってしまった。
もちろんそれを見逃す悪魔族でもなく、俺にめがけて攻撃を繰り出そうとしていた。
だがその攻撃を俺が食らうことはなかった…。
…何故なら俺がずっと蔑ろにしていた彼女が俺を庇ったから。
その時彼女の身に変化が起きたことを知った。
彼女の髪の毛は美しいプラチナブロンドに変化していたのだ。
だがそんなことよりも、まずは彼女の安否を確認する必要がある。
倒れた彼女を抱きかかえた時、俺は驚愕することになる。




