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龍神王の花嫁  作者: よもぎ
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リティの過去の話4

悪魔の力を受け継ぐ一族がディラバシア王国に攻め入ったのだ。


龍神族は前も言ったように膨大な魔力と生命力を持ち寿命も普通の人間と比べて桁違いな長い年月を生きられる種族なのだが、弱点がないわけではない。


唯一の弱点と言われるのが悪魔の力を受け継ぐ一族や魔物が発する瘴気だ。

これは天使の力をもつセレスティア王国の王族や厳しい修行を耐えた神官だけが持つ浄化の力でしか対応できないのだ。



ディラバシア王国は暗雲が立ち込めていた。

ディラバシア王国の神官達がなんとか頑張り被害を最小限に食い止めているが、状況は芳しくない。


龍神族や兵士達が最前線に立ち国を守ろうと戦っている。

浄化の力がなく決定打を打てないが元々膨大な力を持つ龍神族はどうにか食らいついて戦っているような状態だった。


王太子殿下であるクラウド殿下もこの中で指揮を取りながら戦っていた。

魔法の心得がある私も参戦するという意思表示をした時は流石に目を見開いて驚かれた。

「貴女は魔法が扱えるのか?」

「はい…覚醒はまだしておりませんから浄化はできませんが、魔法なら一通りのものは扱えますし、魔力も龍神族には劣ると思いますがそれなりにございます」


「彼女は妹に嫉妬するほど知識や力がなかったのではないか…?」という小さな呟きは消えていった。



こうして戦いに向かった訳だが、剣や魔法において優秀な彼でもこの戦いには苦戦していた。


その時彼の背後から悪魔族が攻撃しようとしたのが見えた。

彼がそのことに気付いた時には遅く悪魔族の攻撃を受ける寸前だった。


「クラウド殿下!!!」


「リーティア嬢!!!?」

私は間一髪彼らの間に入り込み悪魔族の攻撃をクラウド殿下を庇って食らい、その場に倒れた。



そんな私を抱きしめクラウド殿下は私の意識があるかを確認してきた。その後何かに気付き驚いたような顔をしたが、まずは私の安否確認が先だと思ったからか声をあげ続ける。


「…!!?リーティア!リーティア!!大丈夫か!?」


「…ふふっ…そういえば…昔もこんなことがありましたね…」

青ざめたクラウド殿下にそう言えば「え?」と目を見開き固まった。


「覚えておりますか…?セレスティア王国にお越しになられた時、小さな森に入って魔物に襲われたこと…あの時は怖い思いをさせてごめんなさい…でもあなたと過ごせたあの時間はとても楽しかったです…」


「ま、まさか…あの時の王女はリーティアだったのか…?」

私の言葉を聞いてより一層顔を青ざめさせたクラウド殿下。


「なんということだ…私はとんだ勘違いを…すまないリーティア…ひとまず応急処置をしてもらおう!体に響くから何も喋るな!!」

いつの間にか悪魔族の姿は消えていた。あんなに多くいたはずなのに。

私に攻撃を食らわせた悪魔族が最後私を怯えるような目で見ていたことと関係あるのか…。今やそれも憶測でしか考えられないが。

救護班の治癒魔法を受けながら、私は意識を手放した。




目覚めると私に宛がわれた王宮の一室だった。


仕事はいつもきちんとしてくれたけどどこか距離感が今まであったメイド達が目覚めた私に優しく介助してくれた。


メイドの手を借りて起き上がった時、違和感を感じた。私の胸にかかった髪の毛がプラチナブロンドに変化していたのだ。


あぁ…だからあの時の悪魔族は怯えていたのか…と言う事は恐らく私が無意識に悪魔族を浄化したからいなくなったのだろう。そしてあの時クラウド殿下が驚いたような顔をしたのはこれが原因だと言う事も分かった。


「リーティア!!目が覚めたのか!?」

恐らくメイドの1人が呼びに行ったのだろう。クラウド殿下が部屋に入ってきた。


「大丈夫か?どこか痛むか?」

気遣わし気にベッドの脇に置かれた椅子に座り、私の手を握ってくれた。

倒れる寸前に変化したからか、髪色に関して驚かれることは無かった。



「…大丈夫です、問題ありません」

私は淡々と答え、握られた手をどうにか抜こうとした…ががっしりと握られていた為抜けなかった。




この時のことは今でも鮮明に覚えている。


何故なら今まで散々私のことを毛嫌いしていたクラウド殿下が手のひらを返すように態度を変えてきたから。


いつも他の人にこやかな彼が私にだけは舌打ちが聞こえてきそうなくらい顔を歪めているし、王宮内はもちろん学院生活でも全く関知しない、こちらがいくら歩み寄ろうとも無視するし会話すら成り立たない。

婚約者としての触れ合いはもちろん贈り物もある訳がない。



そんな彼がこの日を境に私に何かと気にかける様になった。

初めは怪我が治るまでかと思ったがそうでもなかった。


怪我が治ってからも最低週1は必ずお茶会をしようとするし、学院に一緒に行った事もないのに同じ馬車で通学するようになった。学院内でも昼食を一緒に取ろうとするし、学院生らしく街に出て一緒にお出かけしようと誘ってくれたりもした。



いきなりの変わり様に周りも驚くだろうと思ったがそうでもなかった。

私がクラウド殿下を庇ったことで周りの冷ややかな態度が急変し『救国の聖女』とか呼ばれる始末。



だが私の心は既に冷え切っていた。

この国にきて2年の月日が経ち私は18歳になろうとしていた。淡い初恋の想い等とうに消え去り、ここも自国の様に生きづらい世界なのだと知ったからだ。


歩み寄ろうとしていた私はいつからか気分を害さないようにと遠慮し距離を保つようになった。それはクラウド殿下にも他の人にも。



そんな私が今更クラウド殿下に心開く訳もなく、かと言って蔑ろには出来ない為作り笑顔を浮かべる毎日だった。

そんな私を見てクラウド殿下は一瞬悲しそうな顔をするのを敢えて見ないフリもしていた。



覚醒された力は幼少期の時のようにまた元に戻るということもなくプラチナブロンドの髪の毛はそのまま維持されていた。


恐らくこの力を得たから大事にするようになったのではないか?とも思った。



…となれば万が一この力を失えばまたいないものとして扱われるのではないだろうか?


そう思った私は行動に移すことにした。





クラウド殿下とお茶を楽しむ時間が終わりを迎えた頃。

「お…もうこんな時間か、リティ、またディナーの時に迎えにいくよ。」

そう言いながらクラウド殿下は私に手を差し伸べ中庭から私の部屋までエスコートをする。


「送っていただきありがとうございます」

「その位構わないさ。またね、リティ」

私はクラウド殿下が見えなくなるまで見送り、部屋に入る……訳ではなく今来た道を戻って行った。


途中大きな階段に差し掛かり豪華な絨毯が敷かれた階段を上っていく。



上り切った先に重厚な扉があり、扉の両脇には甲冑を纏った騎士が立っていた。



先に話は付けていたので、騎士達は私をその扉を開けて通してくれた。




そこにいたのは国王陛下と王妃様だった。


「やはり…きたのか…リーティア…」

陛下は残念そうに声をあげた。


「はい、陛下や王妃様には大切にしていただき有難かったのですが、この国でも私はつらい思い出が多くなり耐えられませんでした…申し訳ございません」


「謝らないで!私達もリーティアちゃんの力になってあげられなくてごめんなさいね」

王妃様が悲痛な声をあげる。

王妃様はそうおっしゃったが、このお二人は本当に私に良くしてくれたし、私の状況を改善させようとあちこちで働きかけてくれたのは分かっていたから、私も彼らに謝って欲しくなかった。


「私はクラウド殿下との婚約を解消しこの王宮から出ていきます。

ただもう一年この国に滞在しなければ色々な手続きが完了せず他国へ行けない状態なのでもう一年この国に留まるお許しを頂ければと思います。」



私が国王陛下や王妃様に嘆願したのは婚約を解消し平民になることだった。



国王陛下の許しを得て、私は事前にまとめた必要な荷物を持ち王宮を後にした……クラウド殿下とのディナーの約束は果たされることはなかった。


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