リティの過去の話3
ディラバシア王国の王城に到着し、私はそのまま玉座の間に向かった。
そこには国王陛下と王妃殿下がおり、私を暖かく迎え入れてくれた。
国王陛下は幼い頃にお会いした時とほとんど変わらず若々しいお姿で王妃様もまた私位の年齢のお子様がいるとは思えない程若々しかった。
それはディラバシア王国の民族性によるものなのだが、彼らは龍神族であるのだ。
…といっても見かけは普通の人間と変わらないのだが、膨大な魔力と生命力を持ち長い時を生きられるらしい。その時大体青年期くらいの容姿のまま維持されるとディラバシアのことを学んだときに知った。
ただ龍神族は番としか子を残せない為、徐々に数が少なくなってきている。
今では王族や上流貴族しか龍神族はおらず、平民はほぼほぼ普通の人間であるらしい。
番と言うと同じ龍神族で見つかると思われがちだが他民族でも見つかることがある。その時は龍神族の力で他民族をも龍神族にする力があるのだとか…。そこら辺は詳しくは知らないが。
そんなこんなで国王陛下、王妃殿下と対談し、当初抱いていた緊張も解けた頃、兵士が「王太子殿下がお見えになりました」と国王陛下に声をかけた。
「全く…あやつは遅れおって…すまんな、リーティア嬢」
「いえ、王太子殿下もお忙しい中私の為に時間を取って頂き大変ありがたいです」
幼き頃の僅かな時間ではあったけど楽しく暖かな思い出が蘇り、私は王太子殿下にお会いすることをとても楽しみにしていた。
自国では鬱々と過ごしていたからこちらでの生活に希望を見出していたこともあったかもしれない。
国王陛下も王妃殿下も優しく接してくれたから、こちらの生活に対してより一層期待に満ちていた。
しかし世の中上手くいかないものだと王太子殿下との再会でよくわかった。
「は…?」
これが王太子殿下とお会いした時に発せられた第一声だった。
そして次に発せられた言葉で私は絶望することになる。
「私は妹君の方がこちらにくると思っていたが?何故姉の貴女が?」
「おまっクラウド!」
国王陛下は焦った様に王太子殿下を止めようとしていた。
「隣国の噂はかねがね聞いています。なんでも出来の良い妹を虐める姉の王女がいることを…、だがそんな姉の方は自国で婚約者がいたはずだが…?何故その姉の方がきた」
絶対零度の人1人殺せそうな視線で私を静かに睨みつける王太子殿下。
…なるほど…私の噂はこちらではこの様に広まっていたのね…。
彼のこの言葉で私はこちらの生活も穏やかに過ごすことは出来なそうだと悟った。
後から色々聞こえてきた話では私は自国では優秀な妹に嫉妬して虐めている姉ということになっていて、その状況でも明るく凛とした妹に王太子殿下は恋をしていたとか何とか。
初恋が実らなかったばかりか、好きな人を害する悪女がこちらへ嫁いできて王太子殿下の気分は氷点下まで下がっていた。
事実無根なこの噂にもここでも私の人権はないのかという思いも心の底から嫌になった。
幸いにも国王陛下夫妻はこの噂はデマだということを信じてくれていた為、私に対して変わらず優しく接してくれた。
だが噂というものは広がるのは早いが消すことは中々できない厄介な物で王太子殿下はもちろん、家臣達の目は冷たいものだった。
「何か誤解があるのかもしれない、君達は話し合いをすべきだ」と陛下は私にも王太子殿下にも忠告してくれた。
私はその忠告抜きにしてもこれからの関係を少しは改善できればいいと思っていた為、何度も話し合いをしようと思った。まずは私は妹を虐めていた事実はないことを知ってほしかった。
だが王太子殿下の方は頑なで、私と同じ空気も吸いたくないらしく中々話し合いに応じてくれない。
それでも全く交流をなしにすることもできず、嫌々お茶会をすることになっても私の話はハナから嘘だと、物は言いようだと決めつけ全く聞いてはくれなかった。
それどころか「何と言われようと私は貴女を愛することは無い、貴女を番にすることは無い」とこちらを睨みながら言うのだ。
彼は他の人達には分け隔てなく穏やかな笑みを浮かべることを知っている。
どれだけ私が歩み寄ろうとしても、私にだけ冷たくされ続けられ、心は疲弊し、初恋で大事に温めていた想いも徐々にすり減っていった。
王太子殿下がこの様な対応の為、私は留学先の学院ではほぼ孤立状態だった。
学院生活も楽しみにしていただけにこちらも本当につらかった。
一体何が楽しくて生きているのか分からなくなることが何度かあった。
そんな心が死にかけていたある日転機が訪れた。
こちらにきてもうすぐで2年になる頃だった。




