リティの過去の話2
部屋で謹慎を受けてる間、私の髪色が元の赤茶色の髪の毛に戻っていた。
私はこれを鏡で見た時がっかりしていた。何故きちんと覚醒できていなかったのか…。
部屋から出る許しを得た時に、父の執務室に寄るよう言われて父に会いに行った。
父が私の髪色が元に戻ったのを見た時それも一瞬驚いたように見たのだが、すぐに興味の無さそうに執務に戻り、お前は下がれと命令を受け、執務室を後にした。
私自身、覚醒すれば少しは愛情を私にも向けてくれるのではないか…と淡い期待を抱いたのだが、すぐに戻った髪色を恨めしく思ったし、覚醒したところで私を愛してくれるのか甚だ疑問だったから自分自身の甘い考えに思わず苦笑いを浮かべていた。
それから数年経ち、私は16歳になった。
その時妹姫…ミリアムに婚約の打診が来ていた。
相手はなんとディラバシア王国の王太子殿下だった。
そう昔国王と共に我が国に訪れた王子様だ。
婚約の打診はセレスティア王国の姫君と書いていたがリーティアともミリアムとも書いておらず、しかし私には婚約者がいた為ミリアムの為の婚約と受け取った。
だがミリアムは多少は王女としての勉強をしているがまだまだな部分が多い。
はっきり言ってディラバシア王国へ行っても苦労することが絶えないだろうということは父王も本人も分かっていた。
「私…ディラバシア王国の王太子妃として公務を全うできるか不安ですわ…」
末妹に甘い父はこの小さな呟きを聞き洩らすわけがなかった。
私はある日父王の執務室に呼ばれた。
執務室には父の他に兄と私の婚約者がいた。
「お前には隣国のディラバシア王国に嫁いでもらう」
ぶっきらぼうに告げる父に目を見開いた。
「ミリアムには代わりにそこの侯爵家の次男坊と婚約を結んでもらう。」
「あの…陛下…私は女公爵としての勉強をしてきたのですが、ミリアムにはそれが務まるのですか?」
「ミリアムは女公爵にはせん。公爵家の指揮を取るのは次男坊にしてもらう。また王宮からも人を斡旋しサポートにまわってもらうことにする。それでいいな?」
父は婚約者に目を向ける。
「はい」と返事した婚約者は嬉しそうに頬を染めて返事をした。それほどまでに妹と結ばれることになって幸せなのだろう。
公爵家のサポートの件と言い、私の時とはえらい対応の違いだと思いながら話を聞いていた。
「それに大事な娘だ…他国にやるなど断腸の思いだ…」
「…なるほど…私を他国にやる分にはどうでも良いと言う事ですね」
恐らくこれが生まれて初めて父に口答えした瞬間だろう。
父だけでなく兄や婚約者も目を見開いていた。
「そ、そういう訳では…」
珍しく狼狽える国王。いつも冷静沈着で私には蔑む目しか向けないくせに。
我慢の限界だった私は俯きながら更に言葉を発する。
「私は小さな頃より兄の右腕となるべく頑張ってきました。賢王と呼ばれる父、その再来と言われる兄を目指せと毎日毎日泣きながら血の滲む思いでやってきたつもりです。
しかし頑張れど頑張れど、父にも兄にも追い付かず周りは蔑むばかり。
私のような平凡な人間が父や兄と並ぶには本当に何倍も努力しなければなりませんでした。
ようやく及第点を頂いても父にも兄にも誰からも一度たりとも褒められたことはありません。寧ろそれが当たり前だと言わんばかり…。
兄は昔から優秀だと褒められました、そんなお兄様が努力をすればもっと褒められました、妹は体が弱いなりに頑張ったと褒められました。妹は今では健康体なのに王族の教育もままなっていない…それでも褒められるのです。
…では私は?私はどこまでやれば褒められるのでしょうか?」
私の言葉に父や兄、婚約者が息を飲んだ。
「右腕となるべく女公爵となるべく毎日毎日ずっと勉強に明け暮れ、追い込まれ…そしてようやく及第点を頂いて…今度は何ですか…。妹を他国にやるのが惜しくなったからお前が行け、と。私が女公爵になる時には絶対に手配してくれないであろうサポートを万全にしてミリアムを公爵家に入れようと…。
…よく分かりました。この婚約お受けいたします」
「失礼します」と部屋を後にすれば後ろで「待ってくれ!!」と騒ぐ男達の声が聞こえたが最早どうでも良かった。
私は一応学生の身分だから婚約したからすぐ結婚、というわけではなく、隣国のディラバシア王国の学院に留学する形であちらの国に入国する。
手続きさえ済めばいつでも出立できるわけだ。
私はこの国に最早未練はなかった。家族としての愛情も尽きた。
夕食は家族で食べましょ?というミリアムの提案で今までずっと家族と食べていた夕食も、一緒に食べる気も起きなくなって部屋で食べる様になった。
父や兄、妹や元婚約者が頻繁に私の部屋を訪れていたが護衛には全員通すなと命令し、全無視した。
父達も無理に押し入ろうとはしなかった。
あの執務室での一件から2か月が過ぎようとしていた頃、私は隣国へ旅立った。
父や兄、元婚約者は何か言いたそうな顔をして見送りに来ていたが、私は気づかない振りをして馬車に乗り込んだ。
この国ではこんな扱いを受けていたがディラバシア王国では少なくとも今よりマシな扱いかもしれないと淡い期待を抱きながら馬車に揺られていた。
小さい頃に芽生えた初恋の思い出を胸に…。
だがそんな私の期待も呆気なく散ってしまうのだが。




