再会
それからクラウド殿下がゆっくりとこれまでのことを話し出した。
私とセレスティア王国で出会った時、私と同じように彼も私を好きになっていたこと。
セレスティア王国の優秀な妹姫を愚かな姉姫が虐めているという噂を聞いた時、野草に詳しい私の方が妹の方だと思った事。
そして幼い頃に彼の前で覚醒しプラチナブロンドの髪色になっていた私が再会した時の私の髪色が赤茶色になっていた為、幼い頃に共に遊んだ姫ではないと思った事等…私が彼の立場であっても勘違いしそうだな、というのが率直な感想だった。
だが…
「それならそれで誤解があったとしても話し合って誤解が解かれることもあったと思います。私は何度も殿下と話し合いをしようと試みました…ですがあなたは一切話し合いに応じることもなく、歩み寄っても拒絶され続けました。」
「本当にその事に関しては申し訳なく思っている」
そう言いながら私に頭を下げる殿下。
「……まぁ今更そんなこと、どうでも良いことです。私はここで平民として生きていくので私のことは放っておいてください」
半年後にこの国を出国する情報は敢えて言わない。
「そ、そんなことを言わないでくれ…俺は今でもリティを愛しているんだ!」
クラウド殿下は焦ったように私の手を握り真っ直ぐに私を見据えた。
「君が俺を庇った時、君があの時の姫君だと分かったからだけじゃない。その後僅かではあったが君と色々と接した時、より一層君のことが好きになったんだ」
綺麗な空色の目が切なげに揺れる。
「私も愛しておりましたよ…ですが今は何とも思っておりません。どうかお引き取り下さい」
冷たく突き放すように言えば泣きそうな表情で私を見つめるクラウド殿下。
「すまないが、リティを諦められない…例えリティがそれを望んでないとしても…俺はもう君以外を番にする気はないから…また来る…」
クラウド殿下はそう言って立ち上がり、最後にもう一度私の方へ振り返り切なげな表情で見てから出ていった。
今更私に何をしろというのだ。
また来ると言っていたな…私のことはもう放っておいてほしいのに。
次の日店を開店させた私は唖然とした。
「やぁリティ、おはよう」
クラウド殿下が爽やかな笑顔で店に入ってきたのだ。
「俺はリティを諦めない…が無理やり連れ帰ることはしないと約束する。しばらく俺もこの町にいるぞ」
笑顔を消し真剣な目を私に向けてきた。こう言ったクラウド殿下はてこでも動かないだろう。
「リティ、1つお願いがある」
「…なんでしょうか」
…なんだろう、すごく嫌な予感がする。
「俺にこの店の手伝いをさせてほしい」
…ええええええ
「いや、王太子殿下にそのようなことさせれません…第一その日暮らしの私に賃金も払えませんし…」
「賃金の心配は必要ない。これまでの迷惑料の代わりの労働力だと思ってくれ。そもそもそんな労働だけでは足りないくらい君を傷つけたんだ…。それに一部の野草ではあるが俺は昔君から教わった野草の見分け方も心得ているし、何より君のそばにいたいんだ…もう離れたくない」
そう言いながら私の手をぎゅっと握るクラウド殿下。
これも絶対譲らなそうだな…と最早諦めの境地で渋々頷くのだった…。
クラウド殿下の申し入れから2,3日が過ぎた。
彼は近くに宿を取っているようで、そこから毎日私の店に手伝いに来ている。
彼の言った通り野草の採取では想像以上の活躍ぶりだった。
野草の採取中はどうしても周囲の警戒を怠りがちになってしまうから採取中の護衛はありがたかった。
野草の知識は小さい頃のあの限られた時間での中での僅かな知識ではあったのだけれど、昔教えたことを今でも覚えていたことにびっくりした。




