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龍神王の花嫁  作者: よもぎ
12/13

1人の旅人

カーテンの隙間から朝日が差し込む。

カーテンをシャッと開けて伸びあがった。

顔を洗い髪色をいつもの薄いブラウンに変えて、鏡の前で確認する。


(よしっ!今日もばっちり!)


お店をオープンさせるが今日は閑古鳥が鳴いている。


だがそれに嘆くこともなくコーヒーを飲みながらゆっくりと時間を過ごしていく。


ふああ…とあくびをしながら壁掛けの時計を見ればもうじき正午になろうとしていた。


(今日はもういいや)

そう思いながら店の出入り口に出てクローズの看板を出そうとしていた。


今日も今日でキャラバンを引き連れた行商人が行きかっていた。



クローズの看板をだして店の中に戻ろうとしたその時、「リティ!」と声をかけられた。サナだ。


「リティ、今日暇?ちょっと頼みがあるのだけど…今日酒場のバイトの子が休みなの。ちょっとの時間で良いから手伝ってくれない?」

サナが申し訳なさそうに頼んできた。

こんな感じでたまに酒場のお仕事の手伝いを頼まれる。バイト代も頂けるので私も助かっている。


「今日はもう店も閉店したし良いわよ」

そう言ってサナと酒場の方へ向かった。



エプロンドレスに着替え開店前に店内を掃除し、開店準備をしてるうちに開店時間となった。



「いらっしゃいませー」

カランカランとドアのベルが鳴ったので挨拶すればダンさんにピーターさん、そしてサナの婚約者となったジャンさんが入ってきた。


「お、今日はリティ助っ人の日か?」

私のエプロンドレス姿を見てダンさんが聞いてきた。


「そうなんですよ、そういうダンさん達は今日は早い来店ですね」


「俺達は今日は昼までで仕事をあがることにしたんだ」


そんな会話をしながら席を案内する。


カランカランと再び来客のサインが鳴り響いた。


「いらっしゃいま…せ…」

入り口に立っていたのは旅人の装いをした茶色い髪がサラサラと靡いた綺麗な顔立ちの美青年なのだが、私はその人を知っている。


相手も私の顔を見た時驚愕で目を見開いている。



私より先に我に返った相手はマスターに「この給仕を借りてくぞ」と言い、私の腕を引っ張っていく。



酒場を出てぐいぐい引っ張られて行きしばらく歩いたところにある裏路地に引き込まれた。


「あの!そろそろ離してください








クラウド殿下」

そう彼は髪色目の色は違うがクラウド殿下だった。


私の声でようやく後ろを振り返ったクラウド殿下。

半年前最後に会った時より少しやつれた様な気がするが綺麗な顔立ちはそのままで、体はすらりとしているが前よりも少し筋肉でがっしりと引き締まっている様な気がする。

旅人の出で立ちだが品のあるオーラまでは隠しきれていなかった。



クラウド殿下は綺麗な顔をクシャっと歪ませ泣きそうなしかしどこか安堵したような表情で私をぐいっと抱き寄せた。………ん?


「リティ……ようやく見つけた…会いたかった…」


私を抱きしめるクラウド殿下が震える声で私の耳元で囁いた。



「……何故…」


私は今起こってる出来事が夢のようで思わず出た言葉がそれだった。


クラウド殿下は私を少し離し、しかし逃さぬというようにしっかりと私の両腕を掴んだ状態で私の目を見ている。


「俺が本当に好きだったのはリティだったと気付いたからだ」



………は?ますます訳が分からなかった。



あんなに…あんなに毛嫌いしていた私を…好きですって?


何か思惑があるのかしら?あるとすれば…

「私が覚醒したからですか?覚醒した私の力を手に入れる為…?」

「違う!!いや…今までが今までだからな…そう思われても仕方がない」


私の言葉にがっくりと項垂れたクラウド殿下は目に見えて弱っていた。

…というのもほんの一瞬で再びキリッと顔を上げて私を真っ直ぐ見つめる。


「俺の話を聞いてほしい」






あれから一旦酒場に戻り、サナにいきなり消えて申し訳ないという謝罪と急用ができたからお店のお手伝いができなくなったという謝罪をすれば、何やら込み入った用事だと私が出ていってから察したらしく「大丈夫よ、こっちは落ち着いたから心配しないで」と快く送り出してくれた。ありがたい。



本当は自分の居場所である家にクラウド殿下を招きたくなかったのだが、ここ以外にゆっくり話をするところもなかった為大変不本意だが自分の家に招き入れた。


店舗の方をびっくりしたように目を見開きながらきょろきょろしているクラウド殿下が面白かったが、私は敢えて何も言わずズンズンと進みダイニングの方へ入って行った。クラウド殿下も後に続く。




「リティは今ここで暮らしているのか」


「えぇ…一応薬師としてここで暮らしております。」



クラウド殿下の分と自分の分のお茶を準備しダイニングの椅子に腰を掛けた。



「……それでお話と言うのは…?」


正面に座るクラウド殿下に話を促した。





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