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後悔

作者: クロ

あれ、、、、


どこだここ。


真っ暗だ。


どうしてだろう。すごく気持ちがらく。体も軽い。


なにもかもから解放された。そんな気分だ。

でもどうしてかな。なんだか悲しい。

そもそも、ここはどこなんだろう。


確か俺は仕事が終わって自宅に戻って…その日って決めてたんだ。

なにかを…決意してた。




村本貴史29歳。印刷会社に務めている。

仕事、プライベートは良くも悪くもない。見る人によっては順風満帆と言えるかもしれない。

しかし、俺はいつも「乾いていた」。

そんな貴史の物語。



月曜日朝。

「ピピピピピ!!!」

目覚ましがずーーーっと鳴ってる気がする。

貴史「うーーーん。」

朝は弱い。学生時代もよく遅刻していたもんだ。

やっと起きて時計に目をやると朝の7時半。始業は8時半。ギリギリだ。


歯磨きも洗顔もせずダッシュで家を出る。モテないわけだ。


駅まで全力疾走。顔を撫でる風は気持ちいいわけもなく。

ふとカートを押してるおばあちゃんが横目に入った。

この暑い中重い荷物を持って歩いてるが気にしてる余裕すらなく、電車に乗った時にはそんなこと忘れている。

その程度の人間である。


8時20分。

なんとかデスクについた。


貴史「はあはあ…。」

ギリギリセーフだ。その日の予定を確認する。

今日は終電コースだ。


チャイムが鳴り朝礼後それぞれの持ち場につく。

1人で印刷機をひたすら回す。それが俺の仕事。


印刷機の音。インクの匂い。

貴史「はぁ…」

1つため息をつき、仕事のエンジンを上げてゆく。

職場での評価は悪くない。


20時。

上司と先輩は先に上がった。

このタイミングで印刷機のトラブルだ。

メーカーに連絡し修理を依頼する。

21時に到着するとのこと。

上司に報告メールを送信し、終電ギリギリまで作業する。

あとは上司がなんとかしてくれる。

そんなもんだ。

仕事ではトラブルは当たり前。人間関係も悪くない。

プライベートでは言いよってくれる女の子もいる。

悪くははないはず。




金曜日19時


主治医「いかがですか??」


貴史「うーーーん。あまり眠れてませんね。」


うつ病、発達障害。

心療内科に通って11年になる。


主治医「では、いつも通りお薬出しておきますね。」


この10分のやり取りのために毎週通院している。


処方箋を貰い薬局まで歩く道。


手を繋ぎ歩くカップル。

今から飲みに行くであろうサラリーマン達。

これがリア充というやつなのか。

ラーメン屋からニンニクのいい香りがした。




暑い暑い夏が過ぎ、秋がきた。


なんだか物悲しい。

これを風情だと楽しむ人もいる。


そろそろ終わりにしよう。

子供の頃から思ってた。

この人生というマラソンは余りにも過酷すぎる。


そんなことを酒を飲みながら考えていた。


時刻は午後8時。


スマホが音を出した。


高校時代からの友人だ。


友人「元気してるかー??!」


貴史「ははは…」


笑いと涙が同時に込み上げてきた。


よくわからない感情。

嬉しい。でも何故か涙が止まらない。


ごめんね。ごめんね。




月曜日朝。


起きて時刻は6時半。


よし…仕事に行こう。


駅までのんびり歩く。

秋桜の香りが心地いい。

たまに見かけたおばあちゃんは今日はいない…。


7時50分。

デスクにつきその日の予定を確認する。ついでに1週間の予定も。

金曜日は定時に上がれるな。


うん…その日だな。



印刷機の音。インクの匂い。

変わらない日常。

作業の処理スピードは変わらず評判がいい。


木曜日夜。


自宅でぼーっとしていた。

スマホが音を出す。

また高校時代の友人だ。

「大丈夫かーーー?なにかあったのか??」


貴史「ふっ…ははは」


この友人とは高校自体からの付き合いだから15年くらいか。

いつも傍にいてくれた。

でもごめんな、もう限界なんだ、


貴史はスマホを操作し返信した。


「久しぶりだなー!元気だよ!」


送信後すぐにスマホを放り投げる。


心配してくれる奴もいるのか…こんな俺にも。少し心が揺らいでた。


金曜日朝。

朝の6時に目が覚めた。

仕事に向かう。

電車を待ってる間駅員に怒鳴るおっさん、満員電車。

いつもはイライラするが今日はどうでも良かった。

不思議と気持ちが落ち着いている。


7時半。

デスクにつき予定を確認する。

今日は定時に上がれそうだ。

良かった…。


8時半。チャイムが鳴り朝礼後それぞれの持ち場につく。


いつも通り印刷をこなす。

多少のトラブルはあるが、定時に終わり家路につく。


目の前にあるのはロープだ。

以前から用意してた。


首をロープに通す。

やっと終われる。

やっと終われる。


色んな人に心の中で「ごめん」と言った。


首を通し、椅子を蹴り倒す。


ギシギシ…


苦しい…苦しい…苦しい…。


意識が遠のく…


死にたくないよ…。。。




真っ暗だ。なにもない。


でも気持ちがすごくらく。体も軽い、


どこなんだろう、ここは。


ふと、真っ暗だった視界が明るくなる。


…???泣いてる人がたくさんいる…。。。


お坊さんなのか??なんだこれ。


葬式みたいな感じ。いや、葬式か。


よくわかんねえ…なにも考えたくない。


ぼけーっと見てた。


ふっと写真に目が入る。


あれ…俺じゃん。


俺の葬式なのか。


ははは…勝手に死んだのにな。葬式までしてくれるのか。


会社の人、親戚、家族、友人。


知ってる顔のオールスターだった。


そうか…愛されてたのか。


死ぬ前に気づべきだった。


これが俺の最大の後悔。


最後まで読んでくれてありがとう。
















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