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第7回 『χ』~荒れ狂う雷神《レイジング・サンダー》~ー①

「カイさん、下がっていてください。ここは危険です」

「あっ……はい」

 嵐さんに言われるがまま、俺は店の奥に入っていく。

 その後激しい物音がしたかと思うと、嵐さんと謎の男の姿は店内から消えていた。


「どうなってんだよ、これ……」

 恐る恐る割れたガラスから外を見る。

「……何これ? どういうこと?」


「ハハハ、なんだこれは! この程度の攻撃で俺を倒せると思っているのか?」

「うるさいですね……黙って戦えないんですか?」

 電撃を飛ばす謎の男と、それを風により吹き飛ばす嵐さん……完全に人外の戦いである。


「やべぇだろコレ……てか、何なの? 嵐さんもあの男も平然と特殊能力みたいなの使ってるんだけど……」

「おい『戒』、どうすんだ? あのねーちゃんをこのまま放っておくわけにもいかんだろう」

 突如始まった異能バトルについていけず呆然とする俺に『魁』が語り掛けてくる。


「そりゃそうだけどさ。俺じゃあどうにもできねーよ、お前らなんとかできないのか?」

「チッ……最初から他力本願か。ホント役立たずだな、オマエ」

 愚痴る俺を、突如『乖』が罵倒する……マジで口悪いなこいつ。


「うるせえな。いちいち人を馬鹿にしなきゃ喋ることができねえのかよお前は」

「できるさ。オマエが相手じゃなければな」

「コイツ……じゃあお前ならアイツを倒せるってのかよ?」

「バカを言え。僕にそんなことできるわけないだろう」

「はぁ? 自分もできないくせに何様のつもりだよお前」

「黙れ愚図。文句を言う前に少しは頭を使ったらどうだ」

「なに?」

「『オマエ』ができないなら、『できるヤツ』にやらせればいいだけの話だろう。何もできないなら、その方法ぐらい考えたらどうなんだ。ちなみに僕はもう考えついているぞ」

「……クソ、わかったよ」

 悔しいが確かに『乖』の言う通りだ。俺には『快』のような腕力も、『χ』のような異能があるわけでもない。

 あんな人外染みた戦いに手が出せるわけなどないのだが、戦えないなら戦えないなりにできることはある筈だ。前に『日向道(ひなたみち)』とかいうヤクザに捕まった時みたいな無力な思いはもうしたくはなかった。


「さて、どうする……?」

 と言っても実際の所手札は二つしかない。さっきも挙げた『快』の力と、『χ』の異能だ。

 さっきから見ている限り、嵐さんも相手の男も異能の使い手であることは疑いようがない。なら異能には異能で対抗するしかないだろう。


「どこかに電気の元は……?」

 辺りを見回す。『χ』の異能の元はこの体の帯電体質だ。まずは体に帯電をさせなければ使いようがない。


「……あった!」

 戦闘開始時のゴタゴタで荒れ果てた店内には、照明として使われていたランプに繋げられていた電線が切断された状態で垂れ下がっている。


「アレを使えば……」

 俺は電線のすぐ近くまで移動する。これを体に押し付けるなりすれば、身体に帯電し、『χ』の異能が発動できるはずだ。


「よし、『χ』。交代してくれ。嵐さんを助けないと」

「……嫌だ」

「は? なに言って……?」

 この期に及んで『χ』が渋り出す。一体どうしたってんだ?


「だってビリって来るの嫌だし……交代するのはいいけど、帯電は貴様がやれ」

「なんだそりゃ……」

 今までのことや『カイ議室』での言動を見て薄々感じてはいたが、『χ(コイツ)』は、中二病を拗らせた言動そのままにメンタルも同レベルのようで、異能以外は完全にからっきしだった。


「わかったよ。その代わり嵐さんのことは頼んだぞ」

「ああ、任せておけ」

 ん? なんか嵐さんの名前出したらやる気出てきた……? まあいいや、後のことはこいつに任せることにしよう。


「……とは言っても本当に大丈夫なんだよな?」

 断線した電線のむき出しになっていない部分を握りながら、俺は自分がしようとしている行為の危険性に気付く。普通なら感電死するんじゃないのか? コレ……

 だが、ここは強力なスタンガンをくらっても平気だった前回の実績を信じるしかない。


「え~い、ままよ!」

 そう言って俺が電線を体に押し付けると、同時に体にビリっと電気が流れる。

 あ、これ普通にきついわ。『χ』が嫌がるのもわかる……なんてことを思いながら、俺の意識はそこで途切れた。


「ほらほらどうした! お前の力はこの程度か?」

「黙りなさい。貴方程度の相手、本気を出す程でもありません」

「なんだと……」

 男の挑発に私は軽口で言い返す。実際この男程度なら本気を出せばたやすく撃退可能だ。しかし大技を使えば周囲への被害は免れないし、私がそうしないのには別の意図がある。


「それより答えなさい。今日貴方が現われた目的は何ですか?」

 そう、別に彼らの襲撃は今に始まったことではない。

 彼ら――『降魔衆ごうましゅう』と私は敵対関係にあり、今日のようなことは『よくあること』に過ぎない。その度にこうして撃退してきたわけであり、今更この程度の相手に怯むはずもない。だから疑問に思うのは、なぜ『このタイミング』なのかということだ。

 なぜ『彼』がいる時だったのか……捕まえて情報を吐かせた方がよいと、私は考えていた。


「フッ……答えると思うのか?」

「そうですか。大人しく答えるのなら見逃してあげようと思いましたが……そうでないのなら仕方ありませんね」

 だが男は答えない。なら実力行使に出るしかあるまい、と私が考えを切り替えた時だった。


雷光(ライトニング)!」

「があっ!」

「え……?」

 ――突然横槍が入り、私の思惑は崩れることとなった。

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