カラオケ
「ひろーい!」
空いてる部屋に着くと松岡さんがそう言って室内をぐるりと回っていた。
休日なので空いてるか不安だったが、運良く大部屋が空いていたので三人づつで男女別れてソファーに座る。
なんだか合コン的なイメージがちらつくが変に仲良し同士で座るよりも全然アリな範囲だろう。
「よっしゃ!頼むぜ!」
鴇田はそう言って早速カラオケ……ではなくご飯を注文しはじめた。本当にこいつは……
「それじゃ私がドリンクバー取ってくるねー。皆何飲む?」
「あ、私も行くわ小雨」
そんなことを考えてると柊さんがやんわりと気を使ってそんなことを言い出した。
それに対して椎名さんも行くと言ったが……
「いや、俺が行くよ女子だけだと大変だろうし」
「そう?でも悪いような……」
「んー……じゃあ、小雨と坂井くんお願いしてもいい?」
遠慮する柊さんに対して椎名さんはそんな風に俺と柊さんに上手く割り振ってくれた。
今の一瞬の間が気になるが、せっかくの二人きりのチャンスはいかすべきだろう。
「わかった。じゃあ、行こうか柊さん」
「うん……」
皆からオーダーを聞いてフリードリンクバーを取りに向かう。
せっかく二人きりになれたしとりあえずは……
「柊さんはカラオケとか良く来るの?」
わりと無難な話題をチョイスして切り出してみた。
ここから会話を広げていければ……
「春ちゃんと雪穂ちゃんとはよく来るかな。坂井くんは?」
「俺も鴇田と沢田とたまに来るくらいかな。まあ、どちからと言えば二人とも体を動かすのが好きだからゲームセンターとかバッティングセンターあたりに良く遊びにいくけどね」
「そうなんだ。少し意外だね」
いつものニコニコ顔でそう言う柊さんだけど……多分知ってる情報だろう。GPSで居場所は把握されてるはずだし、知っててこう反応してるとわかるとなんというか微笑ましい感じがしてくるね。
「そうかな。まあ、柊さんと休日に会うのも、一緒に遊びにきたのも、もしかして今日が初めてだからそう感じるのかもね」
そうこう話しているとドリンクバーの場所に到着する。
俺は近くに置かれたお盆を用意して男連中のジュースをグラスに注いでいく。
「これでよし……そういえば、柊さんは何飲むの?」
「私は烏龍茶だよ。坂井くんも烏龍茶?」
俺の手元を見てそう聞いてくる柊さん。
これは多分知ってての同じのチョイスしたんだろうけど……
「まあね。炭酸も好きだけど、あんまり飲むと太りそうだからね」
「そうなの?坂井くん痩せてて格好いいと思うけど」
「はは、ありがとう。柊さんにそんなこと言われると少し照れちゃうな」
表面上はかなり軽めのリアクションだが内心はかなりどきどきしてる。
自分のことを好きかも(というか多分好き)な女の子からそんなことを言われたら意識しないわけがないよね。
そんな風に柊さんと軽めの話をして部屋に戻った。