【365 × ∞】の分岐ルート
____さあ、いよいよ平成も終わり、今!令和という時代が訪れようとしています!
あと5秒! 4! 3! 2! 1!_____________________
……そこで、明るいアナウンサーの声は途切れ、視界は砂嵐で覆われる。
薄汚く血で書かれた【BAD END】の文字。いつもこうだ。
この文字の羅列が何を意味しているのか裕一には分からないが、それでもこのルートがおかしいことだけは理解できる。何かほかに決定的な分岐がある筈なのだ。
「もしかして、2001年の2月18日かな?」
そう口にしたところで、コンコン、とノックをしてママが部屋に入ってくる。
「あら、裕一。またそのゲームしてたの?
___幾ら、失敗作の世界が溢れてるからって、そんな風に次元を歪めて遊ぶなんて、ママは感心できないわ。」
さも悲しそうに眉を下げママが言う。ママは世界が壊れるのを悲しんでいるのではない。破壊衝動を無闇に発散させることが精神衛生上良くないと思っているからだ。
僕が今遊んでいる世界はは所詮失敗作なのだから、どう扱ったって僕ら螳�ョ吩ココ人の自由だ。
そもそも現在発展した螳�ョ吩ク也阜の科学から見れば、地球人がどう足掻こうと地球の雀の涙ほどの資源で、平成から令和に進める未来なんて無かったのだ。
そこまで考えて僕は馬鹿馬鹿しくなり地球をポイと掴んでそのままゴミ箱に捨てた。
ああ、そうだ。もともと平成から莉、蜥�に進む未来なんてなかったのだ。
僕はなんて無駄なことをしていたんだろう!ああ怖い。僕があのまま地球を、いや日本の元号を変えさせるよう、【BAD END】から地球を救っていたら、それこそ螳�ョ吩ク也阜がめちゃくちゃになっていたかもしれない。
___ああ、これで良かった。すべては僕ら、螳�ョ吩ココ縺ョ轤コ縺ェ縺ョ縺の為なのだ。
令和なんて、来ない。来るはずがない。
僕は鼻歌を歌いつつランドセルから算数の宿題を取り出す。
ああ、なんだか今日はやけに気分がいい。
そういえば、明日、螳�ョ吩ク也阜の名前が新しくなるらしい。
新時代の幕開け、という感じでほんの少し楽しみだ。
さもご機嫌そうにペンを持つ僕の頭に、ほんの幽かに、【BAD END】の文字がチラついた。