AとEのクトゥルフ編 Ⅴ
メインヒロイン登場回。
七菜さんは変態だからヒロインではない。
何回でも言いますけど、この話にはなかなかショッキングな部分が存在します。
SAN値の低い方は閲覧を控えてもらいたいです。
オーケィ?
☆七菜さんからのおねがい☆
この話の中でこれ以上にないぐらいのグロ要素が出てくるよ!
想像力の豊かな人、クトゥルフ未経験者、七菜さんの可愛い顔だけを見に来た人は覚悟を決めるか一瞬で戻ってね!
七菜さんの言葉を認識し、ワムがシナリオのデータを読み込む。
部屋が再度形成され直し、新しく家具が設置される。
驚くしかない。
ここまでとは思っていなかった。
七菜さんすごい。
尊敬はできない。
「…さてさて。行くよ、相棒」
「あ、ああ…」
部屋の中を改めて見回す。
北の壁を見ると、そこには何かしらの絵が描かれた扉があった。
よく見ると、そこには吊られている男が描かれていた。
…犠牲、ってことかな?
まあ次だ。
西の壁を見ると、絵が2つ、架けられていた。
よく見てみる。
「相棒、それ、何なの?」
「お前知ってるんじゃないの?」
「知らない体で、ね?」
「なるほど、了解したわ」
七菜さんは知らないことにして進めていくらしい。
いいね。
で、絵の方は、と。
「丸い、何か…中にも丸がある。これは…見たことあるぞ?」
「ふん、何だっけね?」
「…っと、そうだ、ボルボックス。植物プランクトンの」
「ん、そうかもね。ボルボックスっていうと…?」
「中にいる子供が親を突き破って出てくる、かな?」
「ふむ」
そうだったな。
挿し木マイセルフみたいな感じだったか。
例えが悪いな。
で、もう1つの絵が…。
「猫、兎、あと…蜥蜴?」
「…ん」
帽子を被っていたりするが、まあフィクションなんだろう。
蜥蜴も妙に強そうだけど。
さて、次は南。
南の壁にはドス黒く変色した血液のようなモノで描かれた巨大な目があった。
気味悪いな。
「ほい、ヤバいの見たからSAN値チェックしようね」
「初だな、まあ成功するだろ。ところでダイスは?」
「ほい、どぞ」
「あざま」
SAN値より高いのが出たら失敗だっけ。
ころりんこん。
51、成功。
七菜さんは?
「13、成功」
あんた25だよね?
すげぇな。
「成功だから0減少ね」
「うい、セーフか」
「うわーおっきーおめめー」
「きょろきょろりん」
何にも感じなかったってことだな。
よし。
北の壁。
「…七菜さんや」
「?」
「ベッドで裸のお嬢さんが寝てるんだが?」
「ほう?…チラッと」
「いや布団めくるな!」
「なかなか良い腿をしてらっしゃる」
「五月蝿いわ!」
何なんだこいつ。
そして何なんだこの人。
「あ、そうそう。一応間違いがあってはいけないから生殖器はついてないよ。もしもそれでもそういうことがあったら自動的に通報されることになってるよ」
「お前通報されろ」
「ちなみにこの子のAPPは39」
「は!?」
何が何だか分からないが、とりあえず七菜さんは通報されろ。
で、この子。
APPは39。
高過ぎませんかね?
プレイヤーのAPP最高18だぞ?
何回ダイス振った?
恐る恐るではあるが、揺すってみる。
起きろー…風邪引くぞ…。
すると、少女は少し呻き、目をゆっくりと開ける。
美しい目をしていたその子は、僕に話しかける。
「ふあぁああ…。おはよう、お兄さん…。お兄さん、だあれ…?」
「私は七菜さんだよ。お姉さんだぞ」
「変態…?」
「この子見る目あるぞ!」
「初対面に一言目で変態って何!?」
「仲良しだねー!」
純粋…。
七菜さんとはまるで違う…。
ちなみに呼称はお兄さんとお姉さんになった。
「お兄さん、これからよろしくね!私、アリス!」
「よろしく、アリスちゃん」
「是非よろしくアリスちゃん!」
「こいつは気にしなくていいよ」
「んへー…食いぎみなお姉さん、ヤバい…」
「ヤバい!?」
少女、アリスちゃんが仲間になりました。
可愛い子です。
そらAPP人外だしな。
…。
人外…?
そうだ、この子は人間じゃないかもしれない。
人間のフリをする邪神、人間とリンクする邪神もいるらしい。
これはクトゥルフ。
この子が人間だ、っていう保証はどこにもない。
そう思い、アリスを見る無理だこの子裸じゃねぇかいくら生殖器が無いとはいえ十分にヒトなんだよこの子!
部屋を見回すが、服は見当たらない。
どうする。
すると、アリスちゃんが呟く。
「あ、そうだ。お兄さん、お姉さん、アリス服着るね!」
「「あるならはよ着ろよ!」」
まずどこにあるの!?
そう思い、思わずアリスを見つめる。
すると、瞬きの後、アリスは服を着ていた。
え?
何?
何が起こった?
「私ね、一瞬で服着れるの!」
「マジヤバくね!?」
どうやら早着替えのような技能があるらしい。
はよ着替えろや…。
もしかして裸体生活に慣れてらっしゃるのか?
ょぅι"ょにしてはカルマが高い。
アリスは軽く装甲がある装備をしていた。
軽装備戦士かな。
足と胸部、そして腕を護っている。
割と重装備?
そして、アリスが服を着たことで、ちゃんと直視できるようになった。
いくらアレ無くても目は反らしちゃうんだよ。
無きゃいいってことじゃねぇ。
「…お兄さん、どう?」
「…すごく、可愛いです…」
「可愛いと思うぞ」
変態が混ざったが、アリスは素直に称賛と受け取ったようだ。
純粋である。
この子に七菜さんを見せてはいけない。
生きる悪影響から遠ざけねば。
「ほんとぉ!?嬉しい!」
思わずなのか、アリスは僕に飛び付いてくる。
そして、肌が触れ合う。
この温もりは、人間だ。
そんなことを思ったと同時に、アリスは頭から2つに破裂した。
アリスの血飛沫が僕を湿らす。
アリスの肉片が僕を彩る。
アリスの髪が、アリスの歯が、アリスの脳髄が、アリスの全てが僕に降りかかる。
アリスの澄んだ目がぎょろりと上を向き、そのまま光を失う。
どろりと脳髄が垂れ、床を湿らす。
その様子に命は見当たらない。
数度、痙攣してからアリスは動かなくなった。
なぜ?
どうして?
なぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ?
僕ノセイデ?
頭頂部から股関節まで、一直線に割れて破裂したアリス、だった肉。
嗚呼、痛ましいことだ。
小さな命が、また1つここで散ったのだ。
嗚呼、どうして。
なぜ、彼女は死んでしまったのか。
なぜ、唐突に割れたのか。
なぜ、中身が出てきたのか。
いや、正確には違った。
母体の体液が出ただけだった。
アリスだった肉。
最も大きなソレが、ピクリと動く。
そしてそこから、その割れ目から、数本の腕が出てくる。
ぬちゅるり、びちゃっ、にちゃっ。
血を滴らせながら、腕は這い出る。
肉を掻き分け、汚ならしい音をたてて。
そして、腕だけが出てくる。
周囲の肉片からは、小さなモノが転がる。
それは小さな魚のようで。
鶏のようで。
ヒトのようだった。
それはヒトの胎児。
無数のヒトの胎児が、床に転がる。
そして、それぞれの部位が、それぞれの胎児が膨張する。
否、成長する。
腕からは胴体が生え、頭が生え、脚が生える。
胎児は成長し、赤子に、幼児に、そして少女へと至る。
ソレらは、ヒトでありヒトであり得ないモノ。
顔は、どれも同じ。
だが、色が無かった。
ソレは声をあげる。
絶叫を、悲鳴を。
耳障りなその声は、次第に音をとる。
絶叫から、音へ。
音から、旋律へ。
そして、それに合わせて身体に色が着く。
まるで黄金のように煌めきながらも、絹のように滑らかな髪が生える。
瞳が生まれ、少しずつ蒼に染まる。
歯が生え、口の中が肉の桃色に変わる。
その肌は白く透き通り、しかしその上で健康なものであった。
その瞳は生を渇望していた。
旋律は、曲は終息していく。
そして、ソレらは口を閉じていく。
調和は消え去り、静寂が残る。
総勢、26体。
新生したアリスがそこにいた。
母体から誕生した、新しい生命。
笑顔を見せて、佇んでいる。
それは純粋すぎて。
それは狂気すぎて。
素晴らしくあり、美しくあり、だからこそ吐き気がした。
現世にあってはならない、異形ではない化け物。
開発者である七菜さんが口を開く。
「全自動生命機構、通称ALiceは、母体の肉から6d6体発生する分裂型の生命体だよ。意識はAIを使ってる。さあ、SAN値チェックだね」
群体の時間は、恐らく尽きない。
「「「「おはよう、お兄さん」」」」
「「「「「アリスだよ!」」」」」