第八十話
「凄いですね笹森さん。お好み焼き焼けるなんて」
「全然凄くないですよ。誰でも焼けます」
「俺焼けないですよ」
「やったことがないからですよ。やります?」
「いえ、笹森さんが焼くとこ見たいので」
「じゃあ、一回くらいひっくり返します?」
「いえ、いいです」
笹森さんと外に出てみたが俺の家にはフライパンもなければ炊飯器もないし、茶碗すらないので、もう食べて帰ろうと言うことになり、笹森さんがお好み焼きが食べたいと言ったのでそうした。
俺は食べたいものが特にないので、食べたいものを言ってくれるのは有り難い。
店員さんが運んで来たお好み焼きのネタを笹森さんはぱぱぱっと鉄板に広げ、両手の持った銀のへらで簡単にひっくり返していく。
「竹宮さん、すぐ凄いって言ってくれますね?」
「だって本当にそう思っています」
「お好み焼きなんて誰でも焼けますよ。京都の人はお好み焼きしません?」
「します。食べたことあります」
「じゃあどうして?」
「多分、笹森さんが焼いてくれてるからだと思います」
「私が?」
「はい、笹森さんが何かするたび感動を覚えます」
「そうですか。まあ私達本当に接点ないし、お互いのこと何にも知らないので、まあ顔カプみたいなとこありますもんね」
「かおかぷ?すみません。日本語ですか?」
「すみません。日本語です。あの、作者の見た目が好きな子同士を組み合わせたカップリングみたいな意味ですね。こう原作で特に絡みもなく、因縁もなく、寧ろ会話すら成り立っていないのに、作者の嗜好だけでカップルにされるという。あれ、違いますね。私達お互いの見た目が最高に好きってだけですもんね」
「最高に好きですね」
「私もです、可笑しいですね。食べましょう」
「はい」
笹森さんは明太子チーズ餅入り、俺は豚キムチ玉を頼んだが、半分こにして両方食べた。
「家じゃあこういう変わり種やらないから、お店で食べてみたかったんです。家じゃあホットプレートだし、やっぱり鉄板で焼くのは違いますね、美味しい」
「よく食べるんですか?」
「簡単ですから。キャベツと豚肉さえあればできるし。たまに山芋すりおろしたり、焼きそば入れてちょっと豪華にしますけど。お好み焼きソース好きなので」
「そういえば、新藤さん焼いてましたね」
「お好み焼きのこう具をスプーンで混ぜてホットプレートに広げる時にボウルにへばりついたのをスプーンでかき集めてるあれですね」
「そうです」
「何か混ぜてるシーン好きなんですよ。ポテトサラダとか。後クレープ焼くシーン好きなんです。最初新藤さんパティシエにしようかなって思ってたくらい」
「そうなんですか」
「はい」
本当に笹森さんは凄い。
お好み焼きも焼けて、漫画も描けて、何もない所から俺を名人にまで仕立て上げてくれたのだから。




