第四十六話
いつまでもスーパーの前で突っ立っているわけにいかないので俺が送って行きますと言うと笹森さんはお願いしますと言ってくれたので俺達は並んで歩き出した。
「竹宮さん、マフラーしなくて寒くないですか?」
「大丈夫です。タートルネックなので」
「そうですか?」
「はい」
ここで唐突に水野との会話を思い出したので、聞いてみることにする。
「あの、笹森さんって、おいくつですか?」
「はたちです」
「あの、じゃあ四年生まれですか?」
「はい」
「俺もです。あの俺は三月生まれなんですけど」
「私もです。私も三月生まれです。何日ですか?」
「三十日です」
「私は一日です。じゃあ、私の方が一か月お姉さんなんですね」
「そうですね」
俺は思わず顔を道路側へやった。
可愛い。
お姉さんとか言っちゃう笹森さん。
可愛いが過ぎる。
これはもうエンドレスリピート。
殿堂入り。
小さいのに俺より多分四十センチ近く小さいのにお姉さんて。
「あの、どうかしました?」
「いえ、噛みしめているだけです」
「何をですか?」
「この状況をです」
「でも、良かった。そんなに年変わらないだろうなって思っていたんですけど、同い年だったんですね?」
「そうですね」
同い年。
同級生。
学生時代の笹森さん。
制服か。
それは見たかった。
嫌今の笹森さんが至高だし、毎日可愛さ更新されていくけど、今より幼い笹森さんとか見て見たい。
笹森さんと同じ学校だった人間羨ましすぎる。
自分の学生時代に笹森さんがいたら、どうなっていただろう。
落ち着かないな。
凄く落ち着かない。
恐らく勉強どころじゃなかったから、国立入れなかったかもしれない。
それはダメだ。
俺はどうしても国立科学研究所に入らなければならなかったのだから。
「あの、えっと、竹宮さん甘いものお好きなんですよね?」
「はい、好きです」
「和菓子もお好きですか?」
「はい、好きです」
「粒あんとこしあんどっちが好きですか?」
「粒あんですね」
「私もです。あの、竹宮さんは独り暮らし、ですか?」
「はい」
「じゃあ、あのケーキいつも一人で食べていらしたんですか?」
「はい」
「そうだったんですか。ケーキ三つに増えたから、誰かと一緒に暮らし始めたのかなって思っていたんです」
「え?」
「あの、すみません。だから、ひょっとして、竹宮さん結婚されたのかなって思っていたんです」
「あの、独身です。ずっと、彼女すらいたことありません」
友達もと言おうかと思ったがしつこくなるのでやめた置いた。
彼女が知りたがっているのはそれじゃないのだ。




