第三十七話
「すみません。私こういうの初めてで」
「俺もです」
彼女どころか友達がいたことすらありません。
本当です。
「すみません。しつこいですよね。でも顔見ちゃうと上手く話せない気がするので」
「そうですね、俺もです」
「でもメールだとこう上手く文章にできないっていうか」
「はい」
思わず頷く。
「すみません」
「謝らないでください。全然嬉しいので。声聞いているだけで嬉しいんです、笹森さんの」
「本当ですか?」
「本当です。もう永遠に聞いていたいです」
「じゃあ、又明日もかけていいですか?」
「かけてください。寧ろお願いします」
「はい、これくらいの時間でいいですか?」
「はい」
「あの、本当にしつこいようですけど、本当に私なんかでいいんでしょうか?」
「何がですか?」
「あの、その、私が、その、竹宮さんの彼女で・・・」
「え?」
「えっと、あの、私達付き合うってことでいいんですよね?」
「はい、あの、寧ろ笹森さんのほうが、いいんですか?」
「はい」
「俺、すっごくつまらない人間ですよ。趣味もないし、特技もないし、何喋っていいかわからないし」
「私もつまんないですよ。趣味も特技もありません」
「でも、笹森さんは可愛いじゃないですか」
「竹宮さん、可愛い可愛いって言ってくれますけど、そんなに可愛くないですよ」
「可愛いですよ、本当に可愛いです。世界一可愛いですから」
ベッドに座っていたが思わず立ち上がった。
いくら笹森さんといえどこれだけははっきりさせておかねばならない。
君は世界一可愛んだと。
この世界の宝だと。
「あの、本当に可愛いです。貴方を表現するのに可愛い以外の言葉が思いつかないのは俺の不徳の致すところでこれに関しては申し訳なく思っています。すみません。でも、本当に可愛いです。
貴方を見れただけで生まれてきた価値があると思っています。何て言うか価値観を根底から覆されたというか、貴方に出逢って可愛いという日本語が理解できたというか」
「あの、落ち着いてください」
「落ち着いています。正気です。本心です」
「そうですか」
「だから、そんな笹森さんが俺と付き合ってくれるとか奇跡過ぎて俺今日死ぬんじゃないかと思っています」
「死なないでください。大げさです」
「大げさじゃないです。本気です」
俺はベッドに再び腰を下ろし、ごろりと横になった。
見慣れた天井だ。
笹森さんが浮かんでいてくれたらいいのに。
そういえば、彼女になってくれたと言うことは立体映像化してもいいのだろうか。
今までは流石に赤の他人だからできなかったけど。
聞いてみようかな。
嫌流石に引かれるだろうから辞めておこう。
先走るな。
とはいっても自分でもこの怒涛の展開について行けてないのだが。




